夢はNPB傘下の女子プロ野球リーグ創設 「それが私の最後の使命、やらなきゃいけない」

全日本女子野球連盟副会長と全国高校女子硬式野球連盟代表理事を務める濱本光治氏【写真:伊藤秀一】

全日本女子野球連盟副会長・濱本光治氏、女子野球は「ものすごい進化です」

第25回全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝が8月22日、初めて甲子園で行われる。5校でスタートした第1回大会から四半世紀でたどり着いた夢の舞台。その実現には「女子硬式野球の父」と呼ばれた人物の“遺言”があった。全日本女子野球連盟副会長と全国高校女子硬式野球連盟代表理事を務める濱本光治氏がFull-Countのインタビューに応じ、女子野球の歴史と未来について語った。3回連載の最終回。【石川加奈子】

2004年に亡くなるまで私財をなげうって女子野球の発展に力を注いだ四津浩平氏が語っていた「いつかは決勝戦を甲子園で」という夢を実現させた濱本氏だが、まだ成すべきことが残っている。それは夢であるNPB傘下の女子プロ野球リーグ創設だ。

「甲子園で決勝戦を行うことによって、小中学生の目標もできますし、底辺拡大になるだろうと思っています。それにプラスして、NPBの傘下に健全な女子プロ野球ができた時に、初めてちゃんとしたものが構築されるようにイメージしています。それが最後の私の使命」と力を込めた。

NPBの西武と阪神がチーム名を冠した女子クラブチームをスタートさせているが、濱本氏が描く理想像はクラブチームではなく、あくまでプロ野球。それも2010年に誕生して現在休止中の女子プロ野球リーグとは一線を画し、NPB傘下での活動を望んでいる。「女子だけではなくて、野球界も活性化するようなことも考えています」と明かす。

女子野球の進歩は目覚ましい。1997年に5校が参加して第1回全国高校女子硬式野球選手権が開かれてから四半世紀が経ち、現在の加盟校は43校に増えた。女子野球人口の増加だけではなく、技術的にも大幅に進歩。花咲徳栄の監督に就任した2001年から女子野球の指導に関わる濱本氏は「ものすごい進化です」と目を見張る。

「一番感じるのはキャッチャーの二塁送球。昔は、二塁に届く子が少なかったですが、今は捕ってから二塁到達まで2.1秒、2.2秒でいくキャッチャーがゴロゴロいます。男子並みですよね。あとはショートの三遊間の深いところからの送球。ほとんど内野安打になっていましたが、今は本当に肩が強くなりました」と送球能力の飛躍的な向上に驚く。

見据えるのはNPB傘下の女子プロ野球【写真:伊藤秀一】

「どこかの会場でドラフト会議開催なんていいじゃないですか!」

投手の球速も上がっている。「昔は100キロ前後。今は120キロちょっと出す子は結構います。それでも変化球を織り交ぜたり、コーナーワークや配球を考えたりしないと真っすぐだけでは打たれますね。変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップが多いかな。国内で投手最速は126キロですが、将来的には130キロを投げる選手が出てくるでしょう」とさらなる進化を予測する。

球速が上がったことで、飛距離も伸びた。以前の女子野球では当たり前だったライトゴロが守備位置の変化により、減少している。戦術的にも、簡単に盗塁ができなくなった分、ヒットエンドランが増えるなど変化が起きている。「送る、送れないによってゲームの流れが変わるので、バントも上手になっています。大雑把な野球だと勝てない一方、飛距離などを見るとスケールの大きな野球になっています」と現状を分析する。

飛距離に関しては、大学生や社会人なら両翼90メートルの球場で柵越えも珍しくないという。今後は外野にラッキーゾーンを作って本塁打が出やすくすることも検討している。「両翼85メートル、中堅110メートルぐらいにすると面白いかなと思います。バットのことも考えています。国際ルールで使われているバットは飛びますが、日本ではまだ採用されていないんです。ボールは変えず、国際ルールに合わせて、飛ぶバットに変えると面白いかもしれません」と様々なことを検証しながら、より魅力的な女子野球の形を模索していく。

その先に見据えるのが、NPB傘下の女子プロ野球だ。簡単ではないからこそ「やらなきゃいけないですね」と自分に言い聞かせるように語った濱本氏。「これまた夢ですけど、女子プロ野球がどこかの会場でドラフト会議を開催なんて、いいじゃないですか!」と豪快に笑った。四津氏の遺志を継いた濱本氏の挑戦は続く。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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