カネミ油症「現在進行形」 被害者置き去りの構図も 記者ら指摘

オンライン形式で記者らがカネミ油症について意見交換したイベント

 カネミ油症被害者関東連絡会とカネミ油症被害者支援センター(東京)は12日、イベント「メディアが語る~53年前のカネミ油症事件に関わる現場を取材して」を、東京を主会場にオンライン形式で開催。油症問題の現状や課題を考えた。
 同問題を長年取材するルポライターの明石昇二郎さんが進行。長崎、神戸、朝日、西日本の各新聞と九州朝日放送の記者計6人がパネリストを務め、約60人が参加した。
 長崎新聞社の三代直矢記者は、1968年の事件発覚から50年もたって被害に遭ったと気付いた人の取材を紹介し、「油症事件は現在進行形だ」と説明。各地に潜在的被害者がいる可能性に触れ「全国的な報道が、問題は終わっていないと社会に伝える手段になる」と述べた。同社の山田貴己報道本部長は、国や原因物質ポリ塩化ビフェニールを製造販売したカネカなどが責任を取ろうとせず、被害者は置き去りにされてきた構図を指摘した。
 このほか、油症の責任を問う集団訴訟の87年終結から約10年間、ほとんど報じられなかった点を挙げ、「未解決なのに報道しなかったことは反省。被害者が何十年も見捨てられてきた不条理性を伝えていきたい」とする意見もあった。

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