コロナ禍の佐世保競輪 ネット売り上げ好調 依存症対策に不安の声も

メインスタンドなどの大規模改修が計画されている佐世保競輪場=佐世保市(小型無人機ドローンで撮影)

 新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」を背景に競艇や競馬など公営ギャンブルの売り上げが伸びている。特にインターネットでの販売が好調。佐世保競輪(長崎県佐世保市干尽町)は2020年度の車券売り上げが過去3番目に多い約220億2千万円に上った。一時は1億円超の赤字が続き経営危機に陥ったが、夜間のレースを導入した効果などで回復基調に乗った。現状や課題を探った。

 5月6日午後11時半ごろ。佐世保競輪のミッドナイトレースで決勝に進んだ自転車7台がスタートラインに並んだ。号砲とともに一斉に飛び出し、白熱した駆け引きを展開した。3日間のレースでは、延べ約15万7千人ものファンがインターネットや電話で車券を購入した。
 新型コロナの影響で、同競輪は昨年3、4月に無観客開催を余儀なくされ、20年度は入場者の減少による売り上げの低下が懸念された。しかし、ふたを開けると、ネットの販売率が前年度と比べ15ポイント近く上昇し54%に。売り上げは前年度比46%増の約220億2千万円、利益見込みは同64%増の約10億5千万円に伸びた。
 同競輪は1950年に開設され、76年度に入場者数が約30万6千人、98年度に売り上げが約320億円のピークに達した。
 その後はファンの高齢化やギャンブルの多様化などで客足が遠のいた。市財政への繰り入れは2004年度の2千万円を最後に一時中断。利益は09年度に約3500万円の赤字に転じ、10、11年度も1億円以上のマイナスとなった。

佐世保競輪の車券売り上げ、利益、入場者数の推移

 市は13年に有識者による経営検討委員会を設置。15年度に夜間開催の「ナイター・ミッドナイト競輪」などを導入すると業績は持ち直し、市財政への繰り入れも再開した。
 20年度の市一般会計への繰り入れは2億5千万円まで増え、本年度も2億円を計上した。朝長則男市長は「非常に有り難い。ネットを中心に(ファンが)全国に広がった結果だ」と経営の改善を実感する。
 一方、同市議会は五輪種目の「ケイリン」をスポーツとして地域に根付かせようと動きだした。昨年12月に「させぼ競輪推進議員連盟」を超党派で結成。地方議会では初という。市議の約9割に当たる計28人が加入した。大村哲史会長は「地元の選手と子どもたちが交流する機会をつくり、五輪選手を育てたい。競輪が盛り上がれば市政も発展する」と意気込む。
 ただ、佐世保市は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致も推進。競輪も含め、ギャンブル依存症対策が不十分と不安視する声もある。元市議で、「カジノ誘致問題を考える市民の会」の早稲田矩子代表は「市が依存症対策に真剣に取り組んできたとは思えない。行財政がギャンブル頼みであっていいのか」と指摘する。


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