動画を撮っている場合なんです! うっかり関われない中国の人助け事情

証拠映像を撮っておかないと自分が危ない?(写真はイメージ)

中国で、高齢男性を救助した動画を撮影した青年に賛否両論だ。

中国メディアによると今月、遼寧省の路上で高齢男性が転倒し、助けを求めた。周囲にいた人々は倒れた男性を無視。高齢男性はあちこちから出血していたが、誰も声を掛けず、助けようとする人もいなかった。しばらくたって、青年が男性に近寄り、まずは男性の悲惨な様子を動画撮影したのだ。そして、「私はあなたに危害を加えていません。誤解しないでください」と言いながら、ようやく男性を救助した。

この動画がアップされ、中国国内では、「動画を撮っている場合ではないだろ」という意見がある一方、「青年の行為は自分を守るために当然だった」というコメントもあり、大きな議論となっている。

ユーチューブチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」で情報発信している中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。

「実は中国では、事故に遭った人を救助した後、その家族が救助者に対し損害賠償を求め裁判を起こしたり、金銭を要求する事件が多発しており、青年はこうした“当たり屋”的な事件に巻き込まれることを警戒していたのです。中国社会の今を反映している事件です」

中国では実際、交通事故に遭った人を助けた後、その家族から「救助の方法が悪く、後遺症が残り、治療費が高額となった」などの理由で、損害賠償を求められるという事件がたびたび発生しているという。20代男性が高齢者を救助したところ、その家族から約70万円もの損害賠償請求訴訟を起こされたケースもあるという。

周氏は「今回の青年は動画を撮影し、自分に過失がないことを証拠映像として記録してから、救助を行ったのです。経済的には大きく成長した中国ですが、善意が損害賠償にまで発展してしまう人々のモラルは、いまだ発展途上と言わざるを得ません」と指摘している。

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