交流戦驚異の得点圏打率.750 西武に嬉しい悲鳴、“新4番”は外崎復帰でどこ守る?

決勝適時打を放った西武・呉念庭【写真:荒川祐史】

驚異の得点圏打率.512、交流戦は.750を誇る勝負強さ

■西武 4ー3 中日(13日・メットライフ)

これこそ“ケガの功名”か……。西武は13日、本拠地・メットライフドームで行われた中日戦の8回に、「4番・二塁」でスタメン出場していた呉念庭(ウー・ネンティン)内野手が右前へ決勝適時打。故障者続出でチャンスを得た28歳が、一気に4番の座を固める勢いだ。

3-3の同点で迎えた8回2死一、二塁。呉にとっては、この日初めて走者を得点圏に置いての打席だった。中日2番手の左腕・福に対し、カウント1-1から外角のスライダーを振りぬく。バットのやや先に当たったが、打球は一、二塁間を破り、二塁走者の岸が頭から決勝のホームへ滑り込んだ。呉の今季得点圏打率は.512(41打数21安打)、交流戦では.750(12打数8安打)と驚異的な数字を残している。

辻発彦監督は「1番期待できるバッターに回ってきた。確率(得点圏打率)は2分の1だから、打ってくれると信じていた。コースといい、打球の強さといい……いい当たりだったら(岸が)帰って来られなかった。チームを救ってくれました」と興奮を隠しきれなかった。

呉は台湾出身で、岡山・共生高、鹿児島・第一工大を経て、2015年ドラフト7位で入団し6年目。前日(12日)の同カードで初めて1軍で4番に座り、1回にいきなり先制の一塁強襲適時打を放っていた。連日の活躍だが、お立ち台では「あくまで4番目の打者として臨んでいます。何よりチームの勝利に貢献できてうれしいです」と謙虚に語った。

観客も?「これから広島へ行くので、早く帰らないといけなくて、すみません!」

そのヒーローインタビューの最後に、「次の試合に向けてファンへメッセージを」と振られると、「これから広島へ行くので、早く帰らないといけなくて、すみません!」と頭を下げ、周囲をキョトンとさせた。チームはこの日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で順延となっていた広島戦2試合が14日と15日に組まれたため、試合後に敵地へ移動することになっていた。「次の試合に向けて」と言っても、そういう趣旨の質問ではない。こんな“天然キャラ”もご愛敬だ。

今季は開幕1軍を逃したが、開幕から6日目の3月31日に昇格。山川、外崎ら主力が相次ぎケガで戦列を離れたことから、まず一塁で先発出場のチャンスを得た。一塁レギュラーの山川が復帰すると、主にセカンドを守ることに。試合途中から三塁や一塁へ回ることもある。今季は一塁手として34試合、二塁手で29試合、三塁で5試合に出場(14日現在)。もともと内野ならどこでも守れるユーティリティプレーヤーで、過去には遊撃手やDHで出場した経験も持っている。

問題は、死球を受けて左腓骨骨折を負い2軍で調整中の外崎が復帰したら、絶対的な勝負強さを発揮している呉をどのポジションで使うのか。外崎は本来正二塁手で、昨季はゴールデングラブ賞を獲得している。辻監督は「(外崎は)今月中くらいには行けるんじゃないか、というところまで来ている」と見通しを語っている。

一塁・山川、二塁・外崎、三塁・中村、遊撃・源田と並ぶ顔ぶれは一見、付け入る隙がない。だが、チーム野手最年長コンビの中村と栗山巧外野手を、フルに守備に就かせるのは酷。呉や、内外野を幅広く守れるスパンジェンバーグを含め、どう起用していくかは指揮官の腕の見せ所と言える。

呉は今季トータルでリーグ7位の打率.295をマークし、6本塁打34打点(13日現在)。いずれにせよ、現状の打棒が続く限り、スタメンで使わない手はない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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