【新型コロナ】英有力医学誌、最新号で異例の批判「世界は東京五輪について議論すべき」

 英医学誌「LANCET(ランセット)」が2021年6月12日付の最新号に、コロナ禍での東京五輪開催について論説を掲載し、日本での感染再拡大の要因となる可能性があるにも関わらず、具体的な議論をしないIOCやWHOなどを批判。開催リスクについて今すぐ議論を始めるべきだと強い調子で訴えている。

「沈黙は責任逃れだ」

 同誌は主に査読後の医学論文を掲載する、世界的にも権威のある医学誌。論説が掲載されたのは2021年6月12日付で、内容はオンラインでも確認できる。論説では、掲載時点であと6週間と迫った東京五輪について、日本国内でのワクチン接種率が極めて低く、開催都市の東京都医師会が菅義偉首相に対し開催中止を求めていることなど、国内状況を紹介。大会に参加する関係者数が絞られたといっても「アスリート以外はワクチン接種が必須ではなく、開催後、来日した関係者が帰国後に感染を広げる可能性がある」「日本国内の感染状況にも悪影響を与える可能性がある」と指摘した。

 さらに論説では、このように現実に感染リスクがあるにも関わらず、議論がIOCと日本政府だけにとどまっていると批判。WHO(世界保健機関)は積極的に議論をせず、EU加盟国全体の公衆衛生を担当するECDC(欧州疾病予防管理センター)、アメリカのCDC(米疾病管理予防センター)ともに、同誌による開催についてのスタンスの問い合わせに「議論していない」と答えたか、回答すらしていないと明かした。

 論説は各組織のこのような態度に「沈黙は責任逃れだ」と厳しい口調で批判を浴びせ、開催リスクについて、今すぐ世界の関係者が幅広く議論するべきと強く訴えている。

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