もうマスクなしで歩けるニューヨーク、いま旅行に行って大丈夫?実情を在住者が現地ルポ!

ニューヨークでは、一般人のワクチン接種率が日々上昇しています。ワクチン接種率の上昇に伴い、感染拡大防止の規制が順次緩和され、経済再開が進んでいます。マスクなしで音楽を楽しむニューヨークの様子が日本に流れたことにより、「ニューヨークはコロナが終息したのでは?」との問い合わせがきました。ニューヨークの現状について、米ニューヨーク市在住の筆者がお伝えします。

NYC セントラルパーク 2021年5月 (C)Hideyuki Tatebayashi

ニューヨークでは皆マスクを外しているって本当?

Q. ニューヨークでは、マスクをしなくても自由に出歩けるような状況なのでしょうか?

2021年5月より、「ワクチン接種者のマスクの着用」の取り扱い変更

2021年6月13日のデータでは、NYCを含むニューヨーク州全体で18歳以上のワクチン完全接種率は60.1%、949万3,544名(1回目のみ済ませた人も含めると67.3%、1065万343名)。18歳以上の約7割が少なくとも1回はワクチン接種を済ませています。現在では、旅行で訪れる外国人にも無料でワクチンを提供中。

CDC(米国疾病予防管理センター)のガイダンス変更に伴い、クオモ・ニューヨーク州知事は、ニューヨーク州においてワクチン接種者に対する「マスクの着用」及び「ソーシャル・ディスタンス」の取り扱いを2021年5月19日より変更しました。

ワクチン接種者のマスクの着用について

●屋外(屋外イベント、スポーツ、レストラン等を含む)では、ワクチン接種完了者はマスク着用及び6フィート(約1.8メートル)の距離の確保が不要。

●公共交通機関や小学校、介護施設等においては、ワクチン接種完了者も引き続きマスク着用が必要。

【ワクチン接種者とは】

2回接種型ワクチン(ファイザー、モデルナ)の2回目を接種後、2週間が経過している者

1回接種型ワクチン(ジョンソン&ジョンソン)を接種後、2週間が経過している者

【マスク着用が求められる場所は】

地下鉄やバスなどの公共交通機関

小売業店内

飲食業店内

オフィス内

ジムやフィットネスセンター屋内

アミューズメントや家族向け娯楽施設屋内

ヘアサロンや理髪店内

コインランドリー内など

詳細は下記をご覧ください。

ニューヨーク州におけるマスク等の規制の改定について 在ニューヨーク日本国総領事館

Governor Cuomo Announces New York State to Adopt New CDC Guidance on Mask Use and Social Distancing for Fully Vaccinated Individuals NY GOV

2021年5月 NYC セントラルパーク マスクなしで散策する人たち (C)Hideyuki Tatebayashi

2021年5月 NYC セントラルパーク マスクなしではしゃぐ子ども (C)Hideyuki Tatebayashi

ストリートや屋外では、マスクをしていない人が増えてきました。特に観光客が多いセントラルパーク、ソーホー、イーストビレッジなどはマスクなしの人が目立ちます。

現在のニューヨークへ旅行には行けるの?

NYC タイムズスクエア (C) NY GOV

Q. 飲食店の営業時間の規制解除、マスク着用義務の緩和、経済再開が進むニューヨークへ、現在、観光旅行は可能なのでしょうか?

ニューヨークは海外旅行客の入国規制はしていない

ニューヨークでは現在「ワクチンツアー」で訪れる海外旅行客、あるいは米国内の他州からワクチン接種済みの旅行者が増加しています。

日本の外務省のウェブサイトでは、「アメリカへの入国について」下記のように記されています。

米国

米国への入国(空路)に際しては、米国行きフライト出発前3日以内に取得した新型コロナウイルス陰性証明書が必要である(2021年1月26日から)。

また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、旅行による感染拡大を抑制するための対策として、他者との距離確保、頻繁な手洗い、マスク着用、自己観察といった日常的な対策に加え、以下を行うことを推奨する。

海外旅行中に「ハイリスク活動」を行った場合は、日常的な対策に加え、旅行後に以下を行うこと。

・旅行の3~5日後に検査を受ける。

・検査結果が陰性であっても旅行後7日間は自宅待機する。

・検査結果が陽性であれば他者を感染から守るため自身を隔離する。

・旅行後に検査を受けない場合は、10日間は自宅待機する。

・受検の有無にかかわらず、旅行後14日間は重症化リスクが高い者との接近は控える。

(注)下記の州のほかにも、州・地方政府(郡、市など)レベルで感染拡大を抑制するための各種行動制限措置がとられている場合があるため、渡航先の州・地方政府の措置に注意が必要。

新型コロナウイルスに係る日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置 及び入国に際しての条件・行動制限措置

令和3年6月11日(午前6時更新) 外務省

2020年12月〜2021年1月 日本から渡米した日本人は

実際に日本からニューヨークに入国した日本人男性に、入国時の状況を聞いてみました。

2020年12月に学生ビザで入国した男性

日本から「新型コロナウイルス陰性証明書」(費用2万円程度)を持参したが、利用エアライン及び入国審査でも提出や有無を求められなかった。入国してからの待機の監視もなく、コロナ禍以前と変わりなく入国できた。

2021年1月1日に観光ビザで入国した男性

「新型コロナウイルス陰性証明書」については不問。入国審査ではコロナ関連のことは聞かれなかった。ニューヨークで2週間の自主隔離(監視やチェックなし)。

2021年1月26日以降、現在の旅行者は「新型コロナウイルス陰性証明書」が必須です。

ニューヨークでは、もうコロナが終息したの?

NYC セントラルパーク モール 2021年5月 (C) Hideyuki Tatebayashi

Q. 日本と比べると、かなり先を行っているように見えるニューヨークですが、もうコロナは終息したのでしょうか?

2021年7月に完全再開予定、9月には観光都市復活のニューヨーク

感染拡大防止の規制が解除されるのは、18歳以上のニューヨーカーのワクチン接種率が70%(1回目のみ済ませた人も含める)に到達したタイミング。2021年6月13日現在で67.3%なので、7月4日の独立記念日までには目標を達成できそうです。100%のワクチン接種完了ではありませんが、リスクの低さで許容範囲の判断を下したと思われます。

2021年7月から完全再開、9月には観光都市としての本格的な復活で、ミュージカルやオペラ、バレエ、クラシックやジャズなどの公演や、屋内コンサートが100%定員で再開予定。富裕層のスポンサー、固定ファン、旅行客はもちろん、アーティストも舞台に戻れる日を待ち焦がれています。

ニューヨークの今後の予定

●2021年6月からニューヨークシティフィルハーモニックは野外コンサートにて再開中

●2021年9月の新学期(2021年9月6日(月)のレイバーデー明け)から公立学校の対面授業開始(リモートクラスの選択なし)

●2021年9月14日からブロードウェイ・ミュージカル公演の再開

●2021年9月21日からニューヨークシティバレエ公演の再開

●2021年9月からメトロポリタン・オペラ再開予定

●2021年10月からアメリカン・バレエ・シアター公演再開予定

■参照

Governor Cuomo Announces Most Remaining COVID-19 Restrictions to be Lifted When 70% of Adult New Yorkers Have Received First Dose of COVID-19 Vaccine - NY GOV JUNE 7, 2021

ニューヨークのワクチン接種が早い理由

NYC グランドセントラル駅 ワクチン会場 (C) NY GOV

ニューヨークでは必ずしも医師である必要はなく、注射を打てるスキル(経験)があれば注射可能。連邦政府が公的医療機関スタッフや元医師(免許失効後5年以内)、医療系学生、薬剤師、獣医師らがワクチンの注射を行えるよう特別認可。24時間体制のワクチン施設では、米陸軍兵もワクチン接種を行っています。

■参照

アメリカのワクチン接種はなぜ急速に進んだのか︖ - 日本総研

ニューヨークでは2021年6月現在 待つことなくワクチン接種が可能

18歳以上の約7割近くが、少なくとも1回はワクチン接種を済ませたニューヨークでは、接種会場はガラガラで待ち時間なく接種可能。接種会場は、博物館や動物園、地下鉄駅構内、ヤンキースやメッツの公式野球場、有名観光地でのワクチンバスなど多岐に及びます。ちなみにワクチン接種も、感染検査もニューヨークでは「無料」です。

ニューヨークの治安はどうなっているの?

Q. 日本で我慢している人たちからすると、楽園のように見えるニューヨークの治安はどうなっているのでしょうか?

今なお続くアジア人への憎悪犯罪

NYC在住者が正直に申し上げますと、地下鉄での犯罪(アジア人への憎悪犯罪や傷害事件など)、ストリートでの犯罪(アジア人への憎悪犯罪や銃撃による殺傷事件、誘拐など)が続き、しつこいホームレスも多く、治安が良いとは言えません。

終息を目指し経済再開が進んでもなお、「コロナは中国人(アジア人)のせい」と思い込む人間による憎悪犯罪が後を絶ちません。2020年3月〜2021年3月の間に、6,603件のアジア人への憎悪犯罪が報告されています。犯罪者はアジア系の顔であれば、中国、韓国、フィリピン、日本など見分けがつかず襲いかかるのです。彼らにとっては、アジア系すべてが中国人に見え、実際のところなどどうでも良いのでしょう。アジア人にとって、恐ろしいのはコロナ感染よりも誤った思い込みの人間なのです。

アジア人への憎悪犯罪は、アジア人の警官にまでおよんでいます。カリフォルニア州で人手不足により1人で勤務(通常は2人組)していたアジア系女性警官がホームレスの男に反撃され、ニューヨーク・ワシントンスクエアではアジア系男性警察官が人種差別的な暴言を浴びせられています。

筆者も外出をする時は、背後に常に気を配る(背後から襲われている場合が多い)、不審な人には近づかない・目を合わさない、地下鉄車両は乗客の様子を確認して乗るなど、緊張が続いています。

https://youtu.be/7ExaEYJc9CE

米NY アジア系女性が突然殴られる一部始終、ヘイトクライムか TBS NEWS

https://youtu.be/1pR3NmUNohk

激化するアジア系へのヘイトクライム【報道特集】 TBS NEWS

※姉妹メディア「ノーヴィス」での憎悪犯罪の記事も是非ご覧ください。

>>>【世界のニューノーマル最前線・NY】日本人も知るべきアジア人への憎悪犯罪の激増

束縛が嫌いなニューヨーカーでさえ、コロナ禍では行政に従った

アメリカはワクチン大国だからうらやましい・ずるいという声も聞きましたが、私たちニューヨーカーは2020年の3月〜4月に地獄を見ました。仕事を失い、将来の不安に怯えながら、自宅待機しました。ストリートには人影が消え、皆がひたすら耐えたのです。

感染による死が身近になり、ニューヨーカーは震え上がった

2020年3月25日 医療崩壊が起きたElmhurst Hospitalに長い列を作り、検査を求める人たち (C) Sara Aoyama

ニューヨークは世界各国から集まる観光都市ゆえ、旅行者から感染が広まり、世界一の感染都市になりました。恐ろしいほどの勢いで感染者が急増し、ストリートにはサイレンが鳴り響き、常に救急車が複数台止まっていました。筆者の地元の病院では検査を求める人の長い列ができ、診察を受けることもなく多くの人が亡くなりました。死亡者が多すぎて収容できず、病院には冷凍トレーラーが横付けされる地獄のような状況だったのです。

2020年3月1日:NY市内で感染者1名が確認

2020年3月31日:感染者43,139名(死者932名)

2020年4月30日:感染者167,478名(死者12,514名)

「不要不急の外出不要」をTV、オンライン、あらゆる広告で繰り返し求められた

2020年4月 「ステイホーム」が求められ、乗客がいないNYC地下鉄車両 (C) Hideyuki Tatebayashi

連日ニューヨーク州知事や市長が会見し、「不要不急の外出をするな」「ステイホーム」「手洗いとうがいの励行」を繰り返しました。身近に感じる死の恐怖に震え上がり、富裕層はマンハッタンを脱出、そのほかのニューヨーカーは行政指導に従いました。地下鉄やバスは空になり、街はゴーストタウンになりました。

飲食店は行政に従い、テイクアウトとデリバリーのみで営業しました。かなり厳しい状況で持ちこたえることができず、閉店した店も多かったのです。それでも、コロナ収束のためと行政指導に従いました。

マスク嫌いのニューヨーカーが、人種を問わずマスクをつけた

2020年9月のニューヨーク・ファッションウィーク モデルたちもマスク着用を徹底 (C) Hideyuki Tatebayashi

「マスク着用」も耳にタコができて、洗脳されるほど繰り返し求められ、マスク嫌いのニューヨーカーが人種を超えて、100%着用したのです。束縛が嫌い、自己主張が強いニューヨーカーがおとなしく従ったのは、筆者も驚きました。それほど、コロナ感染に恐怖を感じていたのです。コロナで他者と触れ合えない時期にもかかわらず、これほどニューヨークの団結を強く感じたことはありませんでした。

皆の我慢の努力の甲斐あって、シャットダウンを繰り返した他国と異なり、ニューヨークの非常事態宣言は「1回のみ」で済みました。

報道されるニューヨークと、一般庶民はまだ一致していない

NYC セントラルパーク ベセスダの噴水 2021年5月 (C) Hideyuki Tatebayashi

2021年6月10日にソーホーを通りかかった時、ショッピング客がストリートを闊歩し、観光バスの2階席には観光客が鈴なりでした。その様子に「ニューヨークが戻ってきた?」とびっくりしたのは筆者です。繰り返し求められた「ステイホーム」の呪縛が残っており、外出はピンポイントで目的のみ果たしていたので、街中をぶらぶらすることなどコロナ禍以降ありませんでした。その間に街はすっかり変わっていたのです。

日本でニュースとして放映されるのは、タイムズスクエアやセントラルパークにいる人たちの様子です。海外や他州からの旅行客、若い人、白人の富裕層が多く、彼らは基本的にマスクが嫌いであり、一般市民の意識とは温度差があります。

筆者を含む一般市民は、まだ経済再開のニューヨークで楽しむ精神的な余裕はありません。失われていた仕事を取り戻し、生活を立て直すことに精一杯。ニューヨーク州で一番ワクチン接種率が高いニューヨーク市クイーンズ区で、筆者が住むエリアのストリートを歩く住民の90%はいまだにマスクを着用。一般市民は、身近に迫ったコロナの恐怖を、簡単に忘れることができないからです。

Reimagine NY (C) NY GOV

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