「手上げ横断」復活

 声援に応えるとき。降参するとき。乱暴を働くとき。「手を上げる」のはおおむねそんな場合だが、「こちらに注意を向けて」と促すときも、そうすることがある。どなたもきっとご存じだろう。「手を上げて、横断歩道を渡りましょう」▲信号機のない所を横断するときは手を上げて、渡ろうとしていることをドライバーに伝えましょう。今も国民全体の合言葉と思っていたが、43年もの間、警察庁が交通マナーを定めた「教則」からこの「手上げ横断」は外されていて、先ごろ復活したという▲とっくに消されていたことに少々驚く。削除のわけははっきりしないが、手を上げれば車は止まるものだと、子どもが思い込む危険があったのでは-などとみられる。教則は代わりに、車が近づけば「通り過ぎるまで待つ」とされてきた▲いま「手上げ」が復活したのは、道の横断中の事故が絶えないからだという。運転者は「歩行者優先」を念頭に、とりわけ信号機のない横断歩道での徐行、一時停止を肝に銘じる。横断する人は手を上げて、サインを送る。小さな心掛けを持ち寄りたい▲細かいことだが「手を上げる」ではなく「手を挙げる」と書けば、進んで意見を言うときの行動を指す。横断時の「手上げ」とは、歩行者がわが身を守る気持ちを示す「挙手」でもある。(徹)

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