BTCC第2戦はBMWとインフィニティ、王者経験者のFR勢が席巻。ヒュンダイ移籍のイングラムも初優勝

 6月12~13日にスネッタートンで開催されたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の第2戦は、久々開催の予選“トップ10シュートアウト”を制したチーム・ダイナミクスのゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、まさかの車検失格処分での幕開けに。代わってポールポジション発進となった名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の4冠王者、コリン・ターキントン(BMW330i M-Sport)がレース1で幸先良く“ライト・トゥ・フラッグ”での勝利を手にした。

 続くレース2もBMWと同じくFR車両が輝きを放ち、11番手スタートだったレーザー・ツールズ・レーシングのディフェンディングチャンピオン、アシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC)が華々しいオーバーテイクショーを演じて逆転勝利。そして最終ヒートでは、今季から新生ギンスターズ・エクセラー8・ウィズ・トレードプライズカーズ・ドットコムに移籍した、元トヨタのトム・イングラム(ヒュンダイi30 Nファストバック)が、チームとヒュンダイにBTCC初優勝をプレゼントしている。

 2021年シーズンも無観客レースで始まったBTCCは、この第2戦からいよいよファンの現地観戦が許可され、人数上限が設けられながらも、約4000人のファンが詰めかけてNGTC規定ツーリングカーの走りとアクションを見守った。

 ドライコンディションで始まったスネッタートンでの公式練習は、FP1でイングラムのヒュンダイが、FP2では今季からBTCC“復帰”のシェドンが最速を記録し、ここをホームコースとするエクセラー8陣営は、予選に向け“打倒シビック”を目標に掲げて、昨季以来の“トップ10シュートアウト”方式導入により、通常より短縮された25分の計時予選に挑んだ。

 するとシェドンやイングラムとも10番手以内に入り、延長10分間のシュートアウトに進んだものの、ここで立ちはだかったのが「スネッタートンはBMW3シリーズとの相性抜群」と語ったターキントン。

 25分間で最速を記録したBMWも交え三つ巴の勝負となった最後の10分間は、序盤からそのBMWが先行。ラストアタックへと入ったターキントンは、再びセクター1で最速更新の“パープル”を記録する。

 しかしそれを上回るスピードを披露したのがホンダ・シビック・タイプRで、ターキントンの背後からフライングラップに入ったシェドンは、タイミングモニター上のセクター2、セクター3を“パープル”とし、BMW330i M-Sportをわずか0.163秒差で逆転。これでシェドンがBTCC復帰後初のポールポジションを奪った……かに思われた。

スポット参戦のジェス・ホーキンス(右)は、ジェイソン・プラトらを上回る予選15番手。レギュラー参戦のジェイド・エドワーズは、レース3の15位でBTCC初ポイントを獲得した
シリーズ復帰2戦目で、早くもポールポジション獲得かに思われたゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR)だったが……
レース1を“実質”ポールからスタートしたコリン・ターキントン(BMW330i M-Sport)が、そのままポール・トゥ・ウインを決めた

■レース1ではBMW勢が1コーナーを制し、そのまま1-2を決める

 しかしチーム・ダイナミクスのマシンは予選後の再車検で「リヤウイングの角度に規定上の問題が発見された」との理由から、スチュワードはセッションからの除外とタイム抹消を決定。これによりターキントンが暫定ポールを獲得し、2台の後塵を拝して「少しがっかりした」と語っていたイングラムが、フロントロウ2番手スタートを得る結果となった。

 明けた日曜のレース1は、最後尾から発進するシェドンがどこまで巻き返せるかに注目が集まるなか、先頭集団は例年より気温の低いノーフォーク州の天候に合わせて、ほとんどのマシンがグッドイヤーのソフト側をチョイスしてのスタートに。

 FRのBMWはスタンディングから抜群の蹴り出しを見せ1コーナーを制すると、追いすがるヒュンダイを封じ込めオーバーテイクの機会をことごとく潰す老獪なディフェンスを見せる。

 そのまま12周のレースはポジション変動なく推移し、ターキントンが3秒のマージンを築いて今季初優勝。2位にイングラム、そして3番グリッド発進だったスピードワークス・モータースポーツ(SWM)のロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラBTCC)が最後の表彰台を獲得。

 一方のシェドンは、最終ラップでトム・チルトン(カー・ゴッズ with シシリー・モータースポーツ)のBMWを仕留めて15位となり、からくもポイント獲得に成功している。

 続くレース2も同様のコンディションでソフトタイヤ勢が優勢となり、先頭集団が主導権を握ると予想されたなか、トップ10圏外から1台のマシンが驚異的なペースで前方のパックをかき分けていく展開に。

 その主役を演じたのが現王者のサットンで、予選では15番手に沈み、レース1もトップ10を逃して11番手からスタートを切ると、オープニングラップで4つもポジションを上げ、すぐに8番手へと進出する。

 続くラップでアダム・モーガン(BMW330i M-Sport/カー・ゴッズ with シシリー・モータースポーツ)を、その翌周にステファン・ジェリー(BMW330i M-Sport/WSR)とブッチャーのカローラをパスすると、6周目には3番手イングラムのヒュンダイにテール・トゥ・ノーズと迫っていく。

開幕戦は低調に終わったTOYOTA GAZOO Racing UKのロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラBTCC)は、予選3番手から表彰台と復活の兆し
スバル、そしてインフィニティでタイトルを獲得したアシュリー・サットンは、レース2で現役王者らしい貫禄のオーバーテイクショーを披露する
「目標はレース2での勝利だったが、前夜にそれを言われても半信半疑だっただろう」とサットン

■レース3ではイングラムが移籍後初優勝

 するとバックストレート手前の右コーナー、ウィルソンで仕掛けたサットンがついにポディウム圏内に進出。そのままの勢いで、続くラップには同じコーナーでオリー・ジャクソン(フォード・フォーカスST/MBモータースポーツ・アクセラレーテッド・バイ・ブルー・スクエア)をかわし、ついに首位ターキントン追撃体制を整える。

 そして9周目。前半区間の左ヘアピン、アゴスティーニでBMWのインサイドに飛び込んだサットンは、スライドを抑えながらオーバーテイクに成功。その後もソフトタイヤのマネジメントに徹し、ターキントンとの“王者の攻防”を制し「望外の」トップチェッカーをくぐった。

「本当に最高だ! クルマは信じられないほど完璧な状態になった。予選が悪くレース1はセット面で進歩できなかったが、このレース2に向けては、ファンのために何か良いショーを披露したいと決めていたんだ」と喜びを語ったサットン。

「ウイニングランでスタンドのファンに手を振るのも最高の気分だった。この勝利の喜びを彼らと共有できるなんて、本当に素晴らしい光景だったよ」

 そして週末最終のレース3は、リバースグリッド“抽選”の結果、前戦で7位フィニッシュだったステファン・ジェリーのBMWがリバースポールを獲得。その背後から、僚友のトム・オリファント(BMW330i M-Sport/WSR)とイングラムのヒュンダイが追う展開となる。

 すると2周目にはWSR同士でわずかに接触するバトルもあり、5周目にはイングラムが首位浮上に成功。そのまま12周を走破して移籍後初優勝を飾るとともに、チームとヒュンダイはこれがBTCCでの記念すべき最初の勝利ということに。

 その背後にはソフトタイヤで上位に復帰したシェドンのシビックをかわし、サットンが連続表彰台となる2位に喰い込んでいる。

 この結果により、選手権ランキングでもイングラムを2点差でかわしたサットンが首位に浮上。そのサットンから5点差でターキントンが追う展開へと変わっている。そんな2021年BTCCイギリス・ツーリングカー選手権、続く第3戦は2週間後。6月26~27日にブランズハッチのショートレイアウト、インディ・サーキットで争われる。

長年トヨタ陣営で活躍したトム・イングラムは、移籍2戦目でヒュンダイi30 N Fastbackに初勝利をもたらす
「2戦目にして、2位、4位、そして優勝なんて、ガレージの全員にとって特別な瞬間だ」とイングラム
失意の予選失格からカムバックしたシェドンは、レース3で意地の3位表彰台を獲得し、ランキングでもトップ10に浮上した

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