北大等、下水から新型コロナを検出するモデル開発。感度100倍。早期に流行を検知

 新型コロナウイルスはACE2受容体というタンパク質に結合し感染する。新型コロナウイルス感染症というと主な症状が肺炎であるから、人体の中でACE2受容体が多いのは肺かと考えられるが実はそうではなく、ACE2受容体が最も集積している臓器は大腸や小腸など消化器系である。このため新型コロナに感染した場合、排泄物から最も大量のウイルスが排出される。このため特定のエリアで感染が広がっているのかを確かめるためには下水道を調べてウイルスを検出するのが最も合理的である。日本でも下水道から新型コロナウイルスの遺伝子を検出する方法は数多く実施されている。

 6月1日、東北大学・北海道大学・AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の研究グループが、下水中の新型コロナウイルス濃度から感染者数を推定するための数理モデルを構築したと発表した。発表によれば、東北大学大学院工学研究科の佐野大輔教授は、同大学院環境科学研究科および北海道大学と共同で、下水中の新型コロナウイルス濃度から下水集水域の感染者数を推定するための数理モデルを構築。本モデルは陽性診断者数から下水中の新型コロナウイルス排出量及び排出者数を推定するもので、下水中の新型コロナウイルス濃度から感染者数を逆算することを可能にするモデルだ。

 本モデルの検証にあたっては、実際に東京都23区、八王子市及び町田市における陽性診断者数の実績データを適用し、下水中の新型コロナウイルス濃度を推定したところ、北海道大学と塩野義製薬が本年既に発表している検出法による感度と比べて100倍程度向上した手法を採用することで、第1波は2020年4月11日、第2波は同7月11日に下水調査によって検知可能であったとの推定結果を得た。本研究で構築した数理モデルを活用することで、下水中の新型コロナウイルス濃度から、症状が出ていない不顕性感染者を含む感染者総数の推定値を感染が広がる前にあらかじめ得ることが可能となる。

 なお、本研究はAMEDの「フィリピン研究拠点における感染症国際共同研究」の支援を受けて行われたもので、現地での感染症の流行状況や社会的因子との相関を分析する研究の一環として進められてきたものだ。今回開発した数理モデルについては、今後、下水疫学的手法としてフィリピン国内での技術展開を予定している。(本研究は6月10日付「Journal of Water Environment and Technology」に掲載されている)。(編集担当:久保田雄城)

東北大・北大・AMEDが下水中の新型コロナ濃度から感染者数を推定する数理モデルを構築

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