土地規制法、未明に成立 基地周辺の調査や行為を制限

 【東京】自衛隊や米軍基地周辺、国境離島など政府が安全保障上重要だとする土地の利用を規制する法律は、16日未明に開かれた参院本会議で可決、成立した。参院内閣委員会は15日夜、採決を行い、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決。立憲民主党、共産党は参院議院運営委員長の解任決議案を提出するなど抗戦し、未明までずれこんだ。

 内閣委では運用にあたり思想、信教、集会、結社、勤労者の団結などを不当に制限することがないよう留意を求める付帯決議を、自民や立民などの賛成多数で付した。法的拘束力はない。

 15日夜に行われた内閣委の質疑で小此木八郎領土問題担当相は、外国資本による土地取得を巡る国民の不安の声を踏まえ「まずは(防衛施設から)1キロの中に何があるのかを調べたい」と述べ、法案成立に理解を求めた。

 立民の杉尾秀哉氏は、法案策定に携わった吉原祥子氏(東京財団政策研究所研究員・研究部門主任)が14日の参考人質疑で「条文案を読むだけでは、さまざまな臆測が広がる恐れがあることは痛感した」と述べたことに触れ、法案採決に進むことを批判した。

 国民民主の矢田稚子氏は規制区域の指定前に地域住民にも事前説明をするよう求めたが、小此木氏は「地方公共団体と意見交換をする」と述べるにとどめた。住民説明会の開催には否定的な姿勢を示した。

 法案採決に先立ち、採決を強行しようとした森屋宏内閣委員長(自民)の委員会運営に反発して野党が14日に提出した委員長解任決議案の採決が15日午後の本会議であり、与党などの反対多数で否決した。

 法律は安全保障上重要な施設の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、所有者などの調査や施設機能を妨害する行為への中止勧告・命令を可能にする。司令部機能を持つ自衛隊基地周辺などは「特別注視区域」とし、一定面積以上の売買に利用目的の事前届け出を義務付ける。

 命令に従わない場合や、事前の届け出を怠ったり虚偽の内容を届け出たりした場合は、懲役や罰金を科すことができる。 
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