MLB機構が投手の異物使用に関する新たな指針を正式発表

日本時間6月16日、メジャーリーグ機構は「相手チームの監督からの要請の有無にかかわらず、すべての投手を定期的にチェックすることも含む、ルールを一貫して適用するための統一基準」として、全30球団と審判員に対して新たな指針を提供したことを発表した。これに伴い、日本時間6月22日からボールに異物を塗布することを禁じるルールの施行が強化される。新たな指針では、規則に違反して異物を所持または塗布した投手は、ただちに退場となり、10試合の出場停止処分を受けることになる。

先発投手には1試合に1回以上の検査が義務付けられ、リリーフ投手は登板した最初のイニングの終了時、または降板時の早い方で検査を受けなければならない。基本的に検査はイニング間もしくは投手交代時に行われるため、審判員は試合を遅らせることなく、徹底的なチェックを行うことができる。また、出場停止処分を受けた場合、その期間中は給与が支払われることになっている。ただし、規則違反が繰り返された場合、その投手が段階的な懲戒処分の対象となるのはもちろん、ルール遵守の徹底を怠った罰としてチームやチーム関係者も懲戒処分の対象になる。

ロブ・マンフレッド・コミッショナーは公式声明のなかで「警告を繰り返しても効果がなかったため、情報収集の結果、公正性を保つためには異物使用の新たな取り締まりが必要だと判断した」と新たな指針の導入に至った経緯を説明。「異物使用の歴史があることは理解しているが、現在の異物使用は過去に比べて明らかに異なっており、以前よりもはるかにタチの悪い物質が頻繁に使用されている。ボールのグリップをよくするものではなく、何か別の目的があるものに変化している」と取り締まり強化の必要性を訴えた。

これまでも異物の塗布は禁止されていたが、ボールの滑りを抑えて制球力を向上させる手段として何十年も前から広く普及し、監督、選手、チームのあいだで暗黙の了解となっていた。ところが、投手がボールのスピン量を向上させる方法を学んだことにより、異物使用による「投高打低」への影響が顕著となり、今回のメジャーリーグ機構の介入に至った。メジャーリーグ審判員協会のビル・ミラー会長は「競技の健全性は我々にとって最も重要なことであり、我々はすべての選手とチームを平等に扱うシステムを開発するためにメジャーリーグ機構と取り組んできた」と語り、今回の決定を支持している。

なお、今季は死球数が増加傾向となっており、異物使用の取り締まりが強化されることにより、この傾向が加速する可能性がある(マウンド上のロジンバッグはルールに基づいて使用可能)。その結果、打者に多くの故障者を生み、打者の助けとはならないかもしれない。また、異物使用の禁止で投手への負担が増大し、故障する投手が増加する可能性もある。ルールの遵守はもちろん重要だが、メジャーリーグ機構は取り締まりの強化以外にも、ボールの質の向上など、取り組むべき課題がありそうだ。

© MLB Advanced Media, LP.