瀬戸大也妻・馬淵優佳さん SNSに五輪辞退メール…それでもブレない“強メンタル”

元アスリートとして五輪への思いを語った馬淵さん

東京五輪開幕まで40日を切った。多くの競技で出場選手が内定し、本番に照準を合わせた調整が続いている。そんな中、元飛び込み日本代表で競泳男子五輪代表・瀬戸大也(27=TEAM DAIYA)の妻の馬淵優佳さん(26)がインタビューに応じた。開催反対の矛先が自身にも向けられたことを明かした上で、国際大会を経験したアスリート、代表選手の家族として望む東京五輪の姿とは――。

――五輪開幕まで40日を切った。元アスリートであり、代表選手の妻として率直な感想は

優佳さん(以下優佳)昨年3月に大会が延期になって、私自身もかなりショックだったんですね。選手たちとかなり近い立場にいたし、やっぱり家族みんなで目指してきましたし。でも、今は開催する方向で動いてくださっている。選手たちの努力の成果を発揮できる場が用意されるのはうれしいことです。

――選手の声がダイレクトに届く立場。しかし五輪開催には反対意見も

優佳 周囲のスポーツ関係者とは「選手のためにはやったほうがいいよね」という話にはなりますけど、その一方でスポーツになじみのない方もたくさんいます。そういう方々にとっては今の生活、周りの命の安全が一番なので、反対意見もあると思いますし、みんなが賛成してやるというのはまず厳しいと思いますね。

――SNSのDM(ダイレクトメッセージ)などで、選手に五輪辞退や中止を求める意見が送られたこともあった

優佳 見ていて気持ちのいいものではないですね。実は私にも届くんですよ。五輪に出るわけでもないのに「どうなんですか?」と。私の発言で中止にはならないのでスルーしているんですけど、「これでいいのかな」という思いを抱く選手もいる。選手たちは繊細というか、気持ちの部分が競技に影響することもあるので、そうやって選手たちに矛先を向けるのはやめてもらいたいですね。私は何を言われてもいいんですけど。

――メンタルが強い

優佳 父(崇英氏)が指導者だったので、小さいころから周囲の期待や親がコーチだからこその“やっかみ”みたいなものがありました。そういう過去の経験から、他人の声で人生が影響されるのは嫌だなと思ったんですね。いろんな意見は受け入れますが、自分の考えはブレませんよ(笑い)。

――日本選手団のワクチン接種が始まった

優佳 代表選手は次々に打ってますね。安心安全の大会に向けて選手たちも協力的というか、一人ひとりが責任を持って感染対策を徹底していますよね。それから接種に関してですが、別のルート(国際オリンピック委員会=IOC)で確保されたのなら、選手たちは堂々と受けていいんじゃないかなと。後ろめたさを感じずに受けてもらいたいなと思います。

――五輪で注目している選手は

優佳 陸上女子100メートル障害日本記録保持者の寺田明日香選手(31=ジャパンクリエイト)ですね。まだ代表には内定していないんですけど、子供がいて競技を続けるのは並大抵なことではないと想像します。以前、お話を聞く機会があり、自分も母として感じるものがありました。本当にかっこいいですし、頑張ってほしいです。

――テレビで五輪に関してのコメンテーターも務める。どのような発信をしたいか

優佳 五輪は出場するだけですごいこと。さらに、大舞台で力を出せる選手は強靱なメンタルを持っているに違いありません。そんな選手の強さ、そこに至るまでのプロセス、苦労なども発信できたらと思います。もちろん、選手一人ではできないので、周囲で支えている人たちにもスポットを当てたいですね。

――観客数の上限で議論が続くなど流動的な部分もあるが、どのような大会を望むか

優佳 東京でやるからには(会場で)たくさんの日本のお客さんに応援してもらうことが、他の五輪と違うところだと思うんですが、このような状況なので与えられた環境でやるしかない。そして、五輪は子供たちだけでなく私たちも何かをもらえるんですよね。特に今回は歴史に残るような大会になると思うので、そこからパワーをもらってこの状況を乗り越えられたらと願っています。

――改めてになるが、昨年は夫・瀬戸に関する報道で苦労したと想像する

優佳(瀬戸が)何か大事なものを忘れていたのかもしれませんね。昨年、五輪が行われていたら金メダルを取れる状態だったと思いますが、素直に喜べない自分がいた気がします。でも、今はやり直す努力をしているなと。

――瀬戸は3種目に内定。特に400メートル個人メドレーでは金メダルが期待される

優佳 正直、(全種目で)泳ぎ切ってもらえれば順位とかは何でもいいと思っています。本人が自分の力を出せればそれでいいんじゃないかなという気持ちで応援します。

☆まぶち・ゆか 1995年2月5日生まれ。兵庫・宝塚市出身。日本飛び込み界の第一人者である父・崇英氏に影響を受けて3歳で水泳と飛び込みの練習を始める。2009年に東アジア大会3メートル板飛び込みで銅メダルを獲得し、11年には世界選手権に初出場。立命大進学後は日本学生選手権2連覇を達成した。17年に瀬戸大也と結婚し、現役を引退。現在は2児の子育てに励みつつ、アスリートのウェブ連載「スポーツが教えてくれたこと」を開始。趣味は食べること、ガーデニング、ミュージカル鑑賞。

© 株式会社東京スポーツ新聞社