「ただならぬ感染症」認識を 第5波 人流増す夏警戒 感染対策の徹底を 【インタビュー】長崎みなとメディカルセンター・門田淳一院長

ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で取材に応じる門田院長

 4~5月に新型コロナウイルスの第4波に襲われた長崎医療圏で、多くの感染者を受け入れた長崎みなとメディカルセンター(長崎市)の門田淳一院長に、感染急拡大時の状況と第5波への備えについてオンラインでインタビューした。

 -4月下旬から長崎医療圏で感染者が急増し、5月4日には57人の感染が公表された。これほどの急拡大は想定していたか。

 大阪などの状況を見て、地方でも従来株から英国由来の変異株に置き換わり感染が急拡大すると、ある程度は予測していた。ただ想定より約1カ月前倒しで波がやって来た。感染力も従来株の約1.5倍で、4月23日ごろは当院の確保病床42床(軽症と中等症、別に集中治療室=ICU1床)の占有率が25%未満だったが、5日後には50%を超えた。
 コロナ病床の準備には一般病床の縮小とそれに伴う入院患者の転院・退院、看護師の配置換えが必要。それには1、2週間かかり、今回は感染の急拡大に少し間に合わなかった。入院後すぐに重症化するケースも多く、人工呼吸器で管理した患者が最大4人いた。その分、看護師が必要になり、すべてのコロナ病床で受け入れる準備が整ったのは大型連休明けだった。

 -一般診療への影響は。
 約150床を縮小し、その分、救急やがん患者の手術などを受け入れられなくなった。救急も緊急手術も当院でしか対応できない疾患を中心に受け入れたので、他の医療機関にかなりの負荷がかかった。

 -医療スタッフの疲労は。
 昨年12月の第3波から半年間ずっとコロナに対応している状況なので、相当疲れている。防護具を着脱しながらの診療で、最近は暑くて汗も相当かいている。精神的にも疲弊し、当院の臨床心理士や心療内科医がカウンセリングをするなどフォローしている。

 -第5波への備えは。
 東京五輪、夏休み、お盆など人の移動が活発になるころに第5波が来る可能性がある。英国由来の変異株より感染力が約1.5倍強いとされるインド由来の変異株に置き換わると言われ、第4波以上に急速に感染者が発生する恐れがある。
 第4波では、最初に患者を受け入れる当院など四つの公的病院から、感染後10日経過したら(バックアップ病院に)転院させるシステムを稼働させたが、第5波では10日経過する前に公的病院の病床が満杯になる可能性がある。転院させる時間の余裕がなく、最初に受け入れる病院を増やすしかない。重症は長崎大学病院や当院が重点的に、軽症や中等症を他の病院でどんどん診るしかないかもしれない。また宿泊療養施設で一定治療ができるシステムも必要になるだろう。

 -市民に求めることは。
 米国発のデータによると、入院中の死亡リスクはインフルエンザの5倍とされている。大阪でもICUの多くがコロナ患者で埋まった。時々、著名人が「コロナは風邪」と言っているが、ただならない感染症という認識を持ってほしい。
 今後、ワクチン接種が6、7割進んで集団免疫ができても、接種していない人が感染して重症化するケースはある。治療薬ができるまでは今の感染対策を緩めると、亡くならずに済む命が失われることになる。それが自分になる可能性があると肝に銘じ、一人一人がワクチンを接種し感染対策を徹底することが極めて重要だ。

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