上場企業のリストラ加速。コロナ禍の赤字リストラと技術革新の黒字リストラで二極化

今年に入り、大企業のリストラ(早期・希望退職者の募集)が昨年の2倍にまで加速しているという。当初は、コロナ禍での業績不振が大企業までにも波及し、コロナの影響を強く受けた業種を中心に大規模なリストラの実施が目立った。しかし、このところコロナのみを背景にしたリストラの加速とは言えないような様相も出てきている。

 日本経済は2018年秋より景気後退局面入りしており、その景気の谷底のタイミングで新型コロナ流行による経済の大打撃を受けたという形だ。コロナ禍の中で多くの企業がテレワークをはじめウイズコロナに適応するための技術改革を図ったが、現在ではコロナがきっかけとなって、これまで遅々として進まなかった企業の技術革新への動きが急速に加速され、その中で人的資源の再構成であるリストラが加速しているようにも見える。

 6月9日、東京商工リサーチが「早期・希望退職・募集、業種が二極化」というレポートを発表した。ここでの二極化とは、コロナの悪影響により赤字化した企業でのリストラが中心の業種と黒字経営の中で経営構造改革のためのリストラを実施する業種のことだ。

 レポートによれば、上場企業の「早期・希望退職募集人数」は6月3日に1万人を超えた。昨年1万人を超えたのは9月であったから3カ月早いスピードで、6月3日の実施企業数は50社、昨年より17社多い。業種別にみると、やはりコロナ直撃企業で急増しており、しかし前年と比べると、募集企業の業種は様変わりしており、21年に募集が判明した企業の業種をみると、最多がアパレル・繊維製品の8社、次いで電気機器の7社、観光、運輸、外食の各4社と続く。これらの業種は、コロナ以前は業況が堅調であったにも関わらず、たった1年で人員削減を迫られる事態となった。20年春以降、新型コロナの影響で「赤字リストラ」が拡大、20年の赤字企業は全体の54.8%と半数を超えた。

 一方、製造業を中心に黒字企業での実施が相次いでおり、自動車関連(3社中3社)、電気機器(7社中5社)など61.9%と6割超が黒字リストラだ。製造業では長年の課題であった「社員の年齢構成是正」や「製造拠点の見直し」、「業務のIT・オートメーション化」などの構造改革を背景とした募集が進んでいるようだ。

 レポートでは「コロナの影響を直に受ける赤字企業と、事業構造の中規模な見直しを行う製造業を中心に押し上げ、2021年通期の募集企業数は昨年の93社を上回る100社超、募集人員はリーマン・ショック後2番目の水準となった昨年並みとなる可能性が高い」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)

東京商工リサーチが「上場企業の早期・希望退職募集」の調査。募集人数が6月3日、1万人を超えた。コロナ禍の赤字リストラが拡大

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