一人暮らし計画中の24歳。「FIRE」を目指すなら家は買ったほうがいい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、24歳、会社員の男性。5年後を目処に実家から出て一人暮らしを計画している相談者。FIRE(早期退職)にも興味があるとのこと。FIREを目指すなら、住まいは賃貸でいくべきか、買うべきなのでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。

社会人2年目ですが、実家が会社から遠く、5年後を目処に一人暮らしを始めようと考えています。

その際に賃貸にするか、はたまた思い切ってマンションを購入しようか悩んでいます。購入も検討できるように毎月1万円、ボーナスから年間20万円程度、頭金のための積み立てを始めようと考えております。

どれくらいの金額なら買える、どれくらいの頭金が必要か、ローンは組めるか、賃貸の方がいいかなど、アドバイスをお願いします。

また合わせて、FIREに興味があり、今度も積極的に運用を行なっていくつもりです。その点からも購入するのか賃貸がいいのかアドバイスをもらえればと思います。年収は今後5年程度で600万円程度は上がる予定です。

【相談者プロフィール】

・男性、24、会社員、独身

・同居家族について:父(警察官)、母(専業主婦)

・住居の形態:親の家で同居(埼玉県)

・毎月の世帯の手取り金額:私24万円、父50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:私100万円、父200万円

・毎月の世帯の支出の目安:私10万円、家族全体40万円(ローン含む)

【毎月の支出の目安】

・住居費:0円

・食費:1万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:0円

・保険料:1万円(個人年金保険月7,000円、県民共済2,500円)

・通信費:1万円

・車両費:2万円

・お小遣い:2万円

・その他:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:13万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:80万円

・現在の貯蓄総額:550万円

・現在の投資総額:日本株240万円、米国株100万円、投資信託150万

・現在の負債総額:車ローン240万円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回は、5年後のマンション購入のご相談です。購入したほうが良いのか、賃貸のほうが良いか、購入するのであれば、どれくらいの金額なら買える、どれくらいの頭金が必要か、ローンは組めるかとのことです。

まずは目的を整理しましょう

現在のご相談者の希望としては、

〇実家が会社から遠いため一人暮らしを始めたい
〇FIREに興味がある

この二点です。

住宅を購入か賃貸かは、ご本人のライフプランによって考え方は変わってきます。今回は、「FIRE」を目指すとしたらで考えてみましょう。

FIREとは、「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字です。「早期リタイアして、“生活するお金のために働く”から解放される」というライフプランや考え方となります。近年、欧米の20~30代の若者の間でムーブメントとなり広がりを見せています。FIREを求める人は、従来の価値観に縛られず、マイカーやマイホームなどを所有することに固執しない傾向にあります。仕事に縛られるのではなく、過剰な消費をせず、時間にゆとりをもった生活を目指すものです。

早期リタイアするためにはどれくらい貯蓄が必要?

まずは、早期リタイアするためにどれくらいの貯蓄を準備する必要があるかについてみていきましょう。

FIREを目指す方の間での共通の指標となっている目標貯蓄額が、「年間支出の25倍」です。これは、「リタイア後25年分の生活費の確保」ということではなく、「投資元本」であり、リタイア後、これを元手に運用等による収益を得ながら生活をしていくというものです。この「年間支出の25倍」の根拠となっているのがFIREコミュニティで一般的となっている「4%ルール」です。4%という数字は、アメリカのS&P株の成長率7%から、インフレ率3%を差し引いて計算されています。すなわち、年間支出の25倍の資産を準備することが出来れば、年利4%の運用益で生活費をまかなえるということです。年間支出が仮に240万円なら、6,000万円の資産を築いて年利4%で運用すれば、理論上は資産を維持したまま生活できることになります。

日本の単身世帯男性の平均値から計算すると

日本の現状のインフレ率についてはアメリカのように高くありません。この「4%ルール」を日本のインフレ目標2%に置き換えると、「5%ルール」と言えるかもしれません。そう考えると、早期リタイア時期の目標貯蓄としては「年間支出の20倍」となります。ご相談者の生活費については、現在実家暮らしであり、将来の生活費を反映していないため、総務省による2020年家計調査報告の単身世帯消費支出を参考にしてみます。

調査報告によりますと、単身世帯男性の平均支出は月額15万1,095円で、年間では約180万円となります。目安である20倍を掛けると、約3,600万円という金額となります。ただし、平均支出のデータについては、持ち家比率49.4%での結果のため、賃貸で家賃が掛かる場合と、持ち家の場合とで計算は変わってきます。

ご相談者の場合は、将来的にお住まいをどうするかの方向性を決める必要性があります。現在お住まいのご実家にゆくゆく住むことが可能なのであれば、継続的な家賃負担を気にすることなく、上記金額の準備をすれば良いでしょう。逆にご実家に住むということを考えない前提なのであれば、平均支出15万にさらにプラスして準備をする必要があります。

【パターン1】将来ご実家に住むことを考えない場合

FIREを目指すのであれば、長期的な住居費負担も考慮する必要があります。

理想は、早期リタイアのタイミングまでに住居を確保しておきたいところです。もし50歳にリタイアを考えるのであれば、それまでに住宅ローン完済が出来る物件を検討しましょう。早期にローン負担が終わっていれば、どういった物件かにもよりますが、住み続ける選択も、貸すという選択も可能となります。

もし購入せずに、ずっと賃貸で住み続ける想定で考える場合は、その費用も含めてリタイアまでに準備する金額を計算する必要があります。

【パターン2】将来ご実家に住むことを前提とした場合

こちらのパターンは、将来的にメンテナンス費用や固定資産税等を除けば、住居費がかからないことになります。その場合は賃貸の方が住宅ローンに縛られることなく、生活設計をすることが出来ますので良いと思います。どうしても購入する場合は、将来家賃収入を得やすい物件を選ぶなど考えると良いでしょう。

具体的な目標をつくろう

いずれにしても、FIREを目指すのであれば、何歳でリタイアしたいのか、その後どのような生活をしたいのかを具体的に想定する必要があります。また、今後結婚やお子さまの事も想定するのかどうかによってもライフプランが変わってきます。

これまで、ご実家暮らしの利点を活かし、しっかりと貯蓄や運用されているのは素晴らしいです。5年後の一人暮らしに合わせて、住宅を購入するか賃貸にするかだけを考えるのではなく、長期的な目線でご自身がどのような暮らしをしていきたいかについて整理した上で、住宅購入について検討することをオススメします。

© 株式会社マネーフォワード