浅香唯「C-Girl」アイドル四天王が歌う明るく元気なアッパーチューン アイドル四天王のひとり浅香唯、時代の転換期にトップに君臨したアイドルたちの軌跡

浅香唯サードシングル「ヤッパシ…H!」過激な内容を元気よく歌う

関西には『おはよう朝日です』という朝の情報テレビ番組があるのだが、80年代には歌のコーナーがあり、デビューしたてのアイドルがプロモーションの一環としてよく出演していた。

私が浅香唯を初めて認識したのは、その『おはよう朝日です』でサードシングル「ヤッパシ…H!」を歌っている姿だ。友だちから彼氏との大胆ナイトな話を聞いて、刺激を受けた女のコが不埒な少女に憧れるという、なかなかに過激な内容の歌を朝っぱらから歌っていて、強烈なインパクトがあった。何より当時の浅香唯はまだまだあどけなく、コミカルな振付で元気よく歌う姿と歌詞の内容のギャップにウケてしまった。

しかも狭いスタジオで司会者やエレクトーン弾きのお姉さん、番組キャラクターのおき太くん(うさぎの着ぐるみ)に見守られながら歌う… というちょっと恥ずかしさも感じられるシチュエーション。エレクトーンの前に置かれたサイン会の告知は手書き。頑張ってるんだけど、「この娘、たぶん売れないんだろうなぁ…」と、失礼ながら思っていた。

ドラマ「スケバン刑事Ⅲ」で人気急上昇! 主題歌はオリコンTOP10入り

ところが、私の心配をよそに、その後浅香唯はTVドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』の主役となり、みるみるうちに人気が急上昇していったのはみなさんご存知のとおり。「テレビの力というのはとてつもなく大きいんだなぁ」と感じたものだ。

スケバン刑事効果はスゴいもので、主題歌になった「STAR」「瞳にSTORM」はオリコンシングルチャートでTOP10入りするヒット、続く「虹のDreamer」は1位を獲得した。しかし曲のトーンはドラマのイメージからかどれもマイナー調で、そこに「ヤッパシ…H!」を歌っていた頃のハツラツとした姿を見ることはできなかった。

その後にリリースされた「Believe Again」は前向きなメッセージを含んだ歌詞に明るめの曲調で、スケバン刑事のスリリングなイメージから脱却した印象を受けた。でも、そろそろ明るく弾けるような曲があってもいいのではないか? そう思っていた唯ファンはきっと多かったはずだ。

森雪之丞×NOBODY×井上鑑、ノリの良いポップチューン「C-Girl」

そして世に放たれたのが浅香唯最大のヒット曲となる、「カネボウ’88 夏のプロモーション」のイメージソング「C-Girl」である。

作詞はあの「ヤッパシ…H!」を書いた森雪之丞。あどけない少女に過激な歌詞をあてがった雪之丞氏だが、「C-Girl」では真夏のシーサイドにおける恋人同士の光景… という、いたって健康的な内容を描いている。歌詞の中の「接吻(くちづけ)じらして」「燃えて!」「感じて!」というワードから、「C-Girl」の「C」は “男女のABC” の「C」? なんて推測する方もおられたようだが、そこまで過激なシチュエーションは感じられない。

作曲はNOBODY。アッパーなサウンドでありながらも、伸びやかな作りのメロディーになっていて、心地よく聴くことができる。

編曲はシティポップ界になくてはならない井上鑑。キーボードをメインにしたクールでアーバンなアレンジが多い井上氏だが、この曲は軽快なサックスとギターのフレーズから始まるイントロ。夏らしさを感じさせながらも品のあるアレンジで、浅香唯の明るいキャラを見事に引き出している。

ご本人も出演したCMソングだったこの曲はノリの良いポップチューンで、それまでのセンチメンタルなナンバーから解き放たれたように歌う姿はとても輝いていた。そこに「ヤッパシ…H!」をちょっと恥ずかしそうに歌っていた頃の彼女はいない。自信に満ちた表情はイキイキとしていた。

そんな明るく弾ける浅香唯をみんな待っていたのだろう。「C-Girl」はオリコンシングルチャートで1位を獲得。『ザ・ベストテン』でも1位、年間ベストテンでは10位に入るという大ヒットとなった。

浅香唯は「スケバン刑事」「C-Girl」「セシル」だけじゃない!

さて、改めて「C-Girl」の「C」とはなんだったのか? やっぱりABCのC? いや、CMの化粧品の商品名が「Cファンデーション」だったから。それがキーワードとして使われたのだろう。歌詞の中に出てくる「Candid」は後付けなのかもしれない。Candidの意味は「率直な、正直な、あけすけな、包み隠しのない」。ふむ。曲の主人公にも、浅香唯ご本人にも合っている気がする。あくまでも推測ではあるが。

この曲の次に、名曲「セシル」をリリースするわけだが、そこの考察については松林健さんのコラムこの曲の次に、名曲「セシル」をリリースするわけだが、そこの考察については松林健さんのコラム『浅香唯「セシル」C-Girl とのギャップに萌える昭和末期の名曲』をお読みいただきたい。をお読みいただきたい。

ちなみに私が一番好きな浅香唯の曲は「フレンド」。カセットテープAXIAのCMイメージソングだったので、ご存知の方もいらっしゃるのではないだろうか。浅香唯といえば「スケバン刑事」「C-Girl」「セシル」だけではない、ということを改めて知ってもらいたい。もちろんコミカルに「ヤッパシ…H!」を歌っていた頃の浅香唯も。

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※2021年4月20日に掲載された記事をアップデート

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