ベルガー、ハースF1の同士討ち寸前のバトルに「自分たちの時代ではあんなことは当たり前だった」

 F1第6戦アゼルバイジャンGPのレース終盤、ハースのニキータ・マゼピンは背後に迫るミック・シューマッハーをブロックするような動きを見せ、時速300キロを超えるスピードであわや接触かという事態を招いた。ミックはすぐさま無線で「一体あれは何だっていうんだ? 本当に僕たちを殺したいのかな?」と叫び、レース後にはミックの叔父にあたるラルフ・シューマッハーも自身のSNSでマゼピンを批判する内容の投稿をした。

 マゼピンが見せた危険なドライビングは議論を呼んでいるが、今回当事者であるマゼピンとハースのチーム代表ギュンター・シュタイナー、そして元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーがこの問題に対する見解を述べた。

 母国ロシアのメディアであるsport.ruのインタビューを受けたマゼピンは、このときの自分とミックの動きについてこう説明する。

「ふつうオーバーテイクをしようとするドライバーはイン側のラインを選択する。だから、ミックがアウト側にとどまろうとしたのは予想外だった。ミラーにミックが映っているのに気づくとすぐにラインを戻したよ」

 彼の説明に従えば、今回の一件はこういうことになる。マゼピンは左コーナーに向けてミックがイン側のラインを選ぶと予想し、いったん右にハンドルを切った。しかし、ミラーでシューマッハーがアウト側のラインを走り続けていることに気づき、すぐにハンドルを左に戻した。その結果マシンは一瞬だけアウト側に動くことになり、すでにマゼピンのすぐ後ろまで接近していたシューマッハーからは彼が自分を壁に押しやるように見えてしまったのだ。

※その時の様子はF1公式サイトの動画4:10でも公開されている。

 今回の件がマゼピンの不注意によるものだったことには変わりはないが、マゼピン自身もそれを認めた上で「誰かを怖い目に合わせようとするつもりはなかった」と強調する。そしてこれには彼のボスであるハースのギュンター・シュタイナー代表も同意見のようだ。

 ドイツの放送局RTLに出演したシュタイナーは「あれはマゼピンの判断ミスだった。それだけのことだ」と結論づけ、改めてチーム内ではこの問題が終結していることを示した。

 シュタイナーによると、ミックも現在は冷静になり、マゼピンによる弁解を受け入れているとのこと。チーム代表として事を荒立てたくないのか、シュタイナーはあの出来事を「非常に危険というわけではないと思う」と述べ、ペナルティの可能性も否定した。

 一方、この一件に関して少し違った視点からコメントを寄せたのは、元F1ドライバーで現在はDTMの代表を務めるゲルハルト・ベルガーだ。ドイツのシュポルト1に出演した彼は、マゼピンの危険な動きが意図的なものであったかどうかには触れずに、「自分たちの時代ではあんなことは当たり前だった」と述べる。

「前を走るドライバーはいつも幅寄せしてきたよ。もちろんカメラがなかったから許されていたことだけどね」

 そう語るベルガーは今回の件で事後的にペナルティが出るとは考えていない。

「もしあれがルール違反であれば、レーススチュワードが反応し、すでにペナルティが課せられていただろう。それがなかったということは、ルール範囲内に収まったということだ」

© 株式会社三栄