コロナ感染状況の落ち着きで内閣支持率は下げ止まり、オリ・パラに対する世論も改善の兆し=選挙ドットコム・JX通信社合同調査(米重克洋)

選挙ドットコムとJX通信社は、6月12日・13日の両日、定例の合同調査を行った。このうち、電話調査では、菅義偉内閣の支持率は前月比+1.0pt増の28.9%となった。不支持は45.7%(前月比マイナス2.3pt)とわずかに下落した。主に10代から50代までの若い世代が回答するネット調査では、支持率は19.0%(プラス5.6pt)、不支持率は50.6%(マイナス0.6pt)だった。

内閣支持率は下げ止まる一方、不支持率は高水準が続く

電話調査では、菅内閣の支持率は直近3ヶ月間下落が続いていた。新型コロナウイルスの感染拡大局面であったことが影響したとみられるが、今回は足元の感染状況が落ち着いたことで下げ止まったとみられる。一方、不支持率はわずかに下落しているものの引き続き高水準であり、自民党支持層に占める菅内閣の支持も6割強に留まっている。支持率が下げ止まる一方、不支持率も高止まりする傾向はネット調査でも同様に見られたほか、前週に行われたNHKの世論調査など、他社調査の結果でも共通している。

政党支持率:無党派層が増加、野党各党が与党に不満な層の受け皿になれていない現状

政党支持率は、電話調査では自民党25.4%(前月比マイナス0.8pt)、立憲民主党13.9%(マイナス0.4pt)、共産党5.9%(マイナス1.4pt)、公明党4.8%(プラス0.7pt)、日本維新の会2.9%(マイナス0.7pt)などとなっている。支持する政党はないとした、いわゆる無党派層は44.7%(プラス4.0pt)だった。

過去の定例調査のトレンドの中では、前月に続き自民党の支持率がやや低めとなっているものの、他党を圧倒する水準を維持している。一方で、増えたのは無党派層であり、野党各党が与党に不満な層の受け皿になれていない現状が改めて浮き彫りになっている。

東京オリンピック・パラリンピックについては「延期」「中止」を求める声が多い一方「予定通り開催」も増加

内閣支持率に影響している新型コロナウイルス感染状況の変化は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐる世論にも微妙に影響している。東京オリンピック・パラリンピックの開催についての考えを聞いたところ、電話調査では「予定通り開催するべきだ」と回答した人は25.3%(前月比プラス9.6pt)と大幅に増えた。一方、「再度、延期して開催するべきだ」とした人は18.9%(マイナス3.7pt)、「中止するべきだ」と回答した人は37.8%(マイナス7.3pt)とそれぞれ下落している。年齢層別に見ると、高齢になるほど「中止」の比重も高くなる傾向にある。

このように、オリンピック・パラリンピックをめぐっては引き続き延期ないし中止を求める声が多いものの、予定通り開催すべきという意見が増えたことが目立つ。菅内閣は、五輪の中止はそもそも政策的な選択肢ではないという姿勢だが、立憲民主党や共産党などの野党は開催中止を直近の東京都議選の争点とする構えを見せている。足元の感染状況の改善が、こうした選挙をめぐる動きにも微妙に影響しそうだ。

ワクチンへの他国融通については電話調査ではポジティブ、ネット調査ではネガティブな意見に

今回の調査では、ワクチンの他国への融通についての考えも聞いた。政府が新型コロナワクチンの余剰分を台湾へ無償提供したことを受けて、他国にワクチンを融通することへの考えを聞いたところ「大いに賛成」とした人が電話調査では42.5%、「どちらかといえば賛成」が34.0%と合わせて8割近くに達した。「どちらかといえば反対」は5.9%、「強く反対」は1.6%と、合計しても1割に満たなかった。一方、ネット調査では「大いに賛成」が24.7%、「どちらかといえば賛成」が28.1%で約半数強が賛成するにとどまり「どちらともいえない」が29.7%、「どちらかといえば反対」が8.6%、「強く反対」が8.9%と、中間ないしネガティブな意見が電話調査よりもやや多かった。

次期衆院選の比例投票先 無党派層の投票先が自民・立憲で均衡に近づくも政党支持率には大きな差が

9月にも解散総選挙の可能性が取りざたされるなか、衆院選での比例区の投票先についても聞いた。この結果、電話調査では自民党とした人が29.1%(前月比マイナス0.8pt)、立憲民主党が21.1%(プラス1.0pt)、共産党が9.4%(プラス0.3pt)、日本維新の会が6.9%(マイナス1.2pt)、公明党が6.3%(マイナス1.2pt)などとなった。

内訳を見ると、支持する政党はないとしたいわゆる無党派層の投票先で、従来よりも自民党と立憲民主党への投票意向がそれぞれ1割台半ばと均衡に近づいている。無党派層で野党第一党が与党を上回ると、次期衆院選での野党の躍進のひとつのサインとなるものの、現状では自民・立憲両党の「基礎体力」となる政党支持率には引き続き大きな差がある。

菅首相にとって初の本格的国政選挙となる次期衆院選、政権運営への影響は

一方の菅首相にとっては、次期衆院選が初めての本格的な国政選挙となるだけに、ここで「信認」を受ければその後の政権運営に大きな弾みとなる。新型コロナの感染状況と、感染拡大を抑え込むためのワクチン接種、更にオリンピック・パラリンピックの開催など、直近の社会情勢が選挙結果を大きく左右しそうだ。

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