食いしん坊主婦が猟師デビュー 獲物との頭脳戦 駆除に「やりがい」

くくりわなを手にする女性猟師の早稲田さん=諫早市内

 長崎県諫早市に女性猟師として活動を始めた主婦がいる。昨年11月に市猟友会に入った早稲田沙耶花さん(36)。今年1月には憧れのハンターデビューを果たした。自他共に認める「根っからの食いしん坊」。約5年前、自宅の庭に現れたイノシシの姿に、怖さを覚えながらも「食べたらどんな味なんだろう」と興味が湧いたことがきっかけだという。
 テレビで猟師の存在を知ってから必要な資格を取得するまで約1年。猟銃の操作法や保管、安全な受け渡し作法など「覚えることは山ほどあった」。身辺調査など警察による審査も。猟友会による事前講習会は実技を動画で撮影して復習を重ねた。入念な準備で試験に臨み、昨年2月に2種類の免状を取得。市猟友会によると、本県ではまだ数少ない女性猟師だという。
 経験を積むために先輩と一緒に散弾銃を使ったカモ撃ちや、先輩が捕獲したイノシシを仕留める作業にも率先して加わり、「かわいそうというより、それ以上苦しませないことが大切だと思う」。
 挑戦中のくくりわな猟は、土中に埋めたわなを獲物が踏むとワイヤが締まって捕獲する仕掛け。獲物の通り道など場所を見極める必要があり、経験の少ない早稲田さんはまだ成果ゼロ。わなには逃げられた痕跡が残っており、悔しさと同時に楽しさも感じている。
 「猟は獲物との頭脳戦。どうすれば捕獲できるか考えるだけでも面白く、害獣駆除で少しでも農家の手伝いになるのがやりがい」と生き生きとした表情で熱く語る。
 肉は薫製やソーセージ、ハンバーグなどに調理して、おいしく胃袋へ。専用設備で内臓などを傷つけず正しく加工すれば臭いもない。逆に輸入豚などの臭いが気になり始めたという。
 同市では7月、ジビエをテーマにした1カ月間のグルメイベントが開かれ、市猟友会は食材を提供する。
 「有害鳥獣として捕獲される動物の約9割がそのまま処分されており、とてももったいない話。食べてもおいしいので、興味ある人がもっと気軽に入れる世界になれば」。ジビエに注目が集まる最近の動向に新米猟師は期待を寄せている。

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