「医療助成」創設希望9割 妊産婦ら1万人超調査 コロナ禍の孤独と苦労 長崎県保険医協会

約1万3千人の回答にはコロナ禍における悲痛な声も寄せられた=県庁

 「孤独で精神的におかしくなりそう。この状況で出産して自分の精神状態が子どもに悪影響を及ぼさないか不安で仕方ない」。長崎県保険医協会(本田孝也会長)は4~6月、県内全市町の妊産婦らを対象に医療費に関するアンケートを実施。約1万3千人の回答からは経済的理由で妊婦健診をためらう姿や、新型コロナウイルス禍における「孤独」に苦悩する様子などが浮き彫りとなった。
 「妊娠期間を通して医療費や健診代にかかる自己負担」について、約60%が「非常に高い」(9.1%)「高い」(49.1%)を選択。妊娠中や出産後の医療費の自己負担分を自治体が助成する「妊産婦医療費助成制度」の創設に関し、本県でも「ぜひつくってほしい」(58%)「あるとよいと思う」(36%)が合わせて94%に上った。
 県保険医協会によると、同制度は岩手、栃木、茨城、富山が県単位で導入している。全国的にはまだ認知度が低く普及していないという。アンケートでは85%が制度を知らなかった。
 自由記述もあり、コロナ禍の苦労などが寄せられた。出産前の「母親教室」などが軒並み中止となり「ママ友もおらず、とにかく孤独な出産と育児」(20代)。感染防止のため「夫が同席受診できず、父親になる自覚が湧きにくい」(20代)との意見もあった。
 産後うつ、児童虐待を「誰にでも起こり得る」と指摘した30代は「自分がそうなっても周囲に異常者扱いされるのが怖くて、誰にも相談できず事態が悪い方に向かうと思う」と記した。
 出産後、1年以内に精神的な不安定さを感じたことがあるかを問う設問では、36.4%が「ある」と回答。だが「お金に余裕がない」「ハードルが高い」といった理由で、そのうち90%以上が精神科や心療内科を受診していない実態も明らかになった。
 17日、県庁で会見した本田会長は「少しでも安心して産めるような状況になれば少子化の対応策になり、何より困っている妊婦、お母さんの手助けになる」と制度の意義を強調。同日、妊産婦の自己負担分の全額助成や、「孤独」に対する支援策を講じるよう求める要望書を県に提出した。
 アンケートは県内の保育園や医療機関などで用紙を配布し、インターネットでも回答を受け付けた。4月14日に開始し、今月16日現在、県内全市町から計約1万3千人分が集まった。今回報告された数字は、1万600人分を集計した速報値。

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