過去の夏季五輪期間中に開催国の株価はどのように推移していたのか

今年の東京五輪開催には依然として様々な議論がありますが、開会式が予定される7月23日まで1か月余りです。閉会式となる8月8日までのおよそ2週間が、今のところ五輪開催期間とされています。

そこで今回、これまでの夏季五輪期間で開催国の株価がどのような推移となったか確認してみました。

<写真:つのだよしお/アフロ>


過去9回の開催国、オリンピック五輪期間中の株価は?

結果から紹介しましょう。

表は夏季五輪期間の開催国の株価騰落率です。2016年のリオデジャネイロ五輪までの9回の騰落率を見てみましたが、そのうち下落したのは2000年のシドニーと2008年の北京の2回だけでした。勝率を計算すると9回中の7回の上昇なので、おおよそ78%です。五輪期間の開催国の株価は、基本的に堅調なことが分かります。

ちなみに2000年と言えば、その前年に向けたITバブルが崩壊した年です。今では身近な存在のインターネットですが、当時、普及が進むなか関連企業への将来性への期待が高まり株価が急騰しました。2000年はその反動の年でした。

2008年の北京五輪の年は、リーマンショックが起きた年です。米国の投資銀行リーマンブラザーズが破綻したのは9月でしたが、その数か月前から株価は軟調に推移していました。
このように相場が崩れた局面が含まれたことで、過去9回の騰落率の平均は0.4%僅かになりましたが、それでも上昇していることは、勝率(78%)の高さと合わせて評価できます。

開催国の株価が堅調だった理由

ではなぜ、これまでの夏季五輪期間では、開催国の株価が堅調に推移してきたのでしょうか。これには2つの面が挙げられます。

第1が“経済効果の面”です。通常の夏季五輪では海外から旅行者の受け入れがあります。直接的な観戦だけでなく、国内の様々な観光需要も盛り上がります。こうした消費拡大が景気や株価にプラスとなってきたと考えられます。

第2が“行動経済学の面”です。行動経済学を平たく言うと、人間の行動はその時の気分に左右されるため、株式を買ったりする投資も気分の影響を受けてしまうということです。

以前、この連載で「ワールドカップと株価の“ベタな関係”は実在するのか」を取り上げました。詳しくは、その記事を読んでもらいたいのですが、「サッカーのワールドカップで日本代表が勝利すると日本株が上がる」ということを紹介しています。

実は、サッカーに限らず大きな国際試合で勝利した国の株価は高いという関係が見られるという研究があります。これは行動経済学という学問が裏づけています。日本代表が勝利すると投資家の気分も明るくなりやすく、株式市場で悲観的な見方が後退するため株高につながりやすいのです。五輪は“地の利”から開催国が歴史的に好成績を収める傾向があります。これが開催国の堅調な株価の背景にあると見ています。

ところで、過去の夏季五輪期間中に開催国の株価が堅調であったことは確認できましたが、開催前、とくに開催までの1か月間の株価はどうだったのでしょうか。騰落率を平均してみると、1.9%のマイナスという厳しい結果となりました。過去の五輪でも直前になると開催が成功できるか不安が高まるケースも少なくなく、それが直前の株価が弱含む背景の1つと見ています。

今後も東京五輪に関しては様々な議論が続くと予想されます。開催された場合も、第1の経済効果の面への期待は難しいでしょう。とはいえ、日本代表の活躍と共に第2の行動経済学の面からの期待はできるかもしれません。

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