広島は最下位から巻き返せるか “影の監督”河田ヘッドの指導&起用法につながったある経験

佐々岡監督(右)の隣で戦況を見守る河田ヘッドコーチ

【赤坂英一 赤ペン!!】交流戦で大きく離された最下位に終わった広島、18日から再開されるセ公式戦でどこまで巻き返せるのか。こういう時こそ、今年“影の監督”と言われて復帰した河田雄祐ヘッドコーチ(53)に期待したい。

広島は交流戦で3勝12敗3分けの勝率2割と、球団ワーストを更新。とくに、ミスがらみの手痛い失点が目立った。

象徴的だったのが今季最長の8連敗を喫した14日の西武戦で、中堅・羽月がやらかした落球だ。2―2の同点だった6回一死満塁で、代打・中村のフライをグラブに当ててポロリ。すぐさま拾って一走を二塁で封殺したが、三走が本塁生還して痛恨の勝ち越し点を献上した(記録は犠飛)。

羽月としては最初から犠飛を警戒し、捕球直後にバックホームの態勢を取ろうとしてしでかしたミス。それは河田ヘッドもわかっていただろう。だからこそ、翌日も羽月を2番・中堅でスタメンに入れたに違いない。

もともと二塁が本職の羽月を外野にコンバートしたのは、河田ヘッドのアイデアだ。羽月の打撃力と俊足を生かすため、内外野で出場できるようオープン戦から外野守備の練習を開始。4月10日の巨人戦で本格的に外野手デビューさせた。

河田ヘッドは、広島が25年ぶりに優勝した2016年のキャンプでも様々な選手に外野の練習をさせている。当時三塁で失格の烙印を押された堂林、田中広や菊池涼の台頭で出番が減った安部など、居残り特守に引っ張り出しては猛ノックを浴びせていたものだ。

「僕としては、選手たちの潜在能力を引き出してやりたいし、出場できるチャンスを増やしてやりたい。チームにとっては、外野手が足りなくなった時の危機管理にもなる。選手にはミスを恐れず、どんどん前へ突っ込んできてほしいんですよ」

そう語った河田ヘッドは、西武の外野守備走塁コーチ時代、捕手の森、二塁手の浅村(現楽天)らにも外野守備を教えていた。森は最初オドオドしているようにも見えたが、ノックしながら大声でゲキを飛ばした河田流指導の成果か、15年には23試合守って失策1という記録を残している。

河田ヘッドも現役時代には羽月のようなミスをした。1992年、旧本拠地での巨人戦で左翼の守備固めに入り、照明と重なった打球を捕れずに二塁打にしてしまった。これをきっかけに巨人に逆転負けし、大先輩・北別府学の198勝目まで帳消しになったのだ。

しかし、山本浩二監督はその翌日、7番・左翼で河田をスタメン起用。河田も2安打して首脳陣の“親心”に応えた。

そうした経験が、今回の羽月の指導と起用法につながっている。侍ジャパンに5人(会沢は辞退)も選手が選ばれたように、カープには力もセンスもある選手と熱心な指導者がいる。最下位に沈んでいるようなチームではないはずだ。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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