【ユニコーンS】「こんなに嬉しいことはない」 ワイドファラオ待望の初ダート

初めてのダート戦でユニコーンSを制したワイドファラオ

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2019年ユニコーンS】

ダート馬と思っていた馬が芝でデビューし、そこで惨敗するなどして矛先を変更してくれた場合──。そんなとき、僕はこう思うんです。「こんなに嬉しいことはない」と。機動戦士ガンダムの最終回でアムロ・レイが涙ながらに発した言葉をパクっているわけではないですよ。単純にそう思うんです。そのときこそが絶好の買い時。もちろん、予算も倍増。知れた金額ですけど、一応はここ一番の勝負レースになるんです。

ただし、この路線を変更するタイミングというのが実に難しくて、合わないはずの芝でそれなりの結果を出されてしまうと条件を替えるのが難しくなってしまう──。2019年のユニコーンSを勝ったワイドファラオ。彼はその典型でしたね。見た目はダート馬だったのにデビュー戦が芝。しかも、それなりに走ってしまった(苦笑)。

しびれを切らして厩舎に向かったのがキャリア3走目となる未勝利戦の前でした。担当の高田助手から「デキ落ちしているし、これを使って放牧に出すことも決まってる。さすがに勝ちたいでしょうから、休み明けからダートの1400メートルあたりを使ってくれるんちゃうかな。で、おそらく圧勝。それから先はダート路線になるでしょうね。なので、買うのは休み明け初戦しかないですよ」と聞いていたのに…。

能力が違い過ぎてしまったのか、デキ落ちしていたはずなのに芝の未勝利戦を勝ってしまった。で、ドカンといくはずだった休み明け初戦はダート1400メートルの未勝利戦でなく、まさかのGⅡニュージーランドTに。状態が格段に良くなっていることは知っていても、こちらはダート馬と認識してますからね。単勝オッズ10・8倍の4番人気は逆に危険な人気馬にしか見えてこない。ええ、チャンスを逃しましたよ。まさか芝の重賞を勝ってしまうなんて、思いもしなかった(涙)。

僕の中では大健闘だった0秒4差9着のNHKマイルCを終え、待ちに待ったダート路線へとやってきたワイドファラオ。重賞を勝ってしまったがために、他の馬よりも重い57キロを背負うことになってしまったのは余計でしたけど、この1キロ差のおかげで3番人気だったのかもしれません。

カネヒキリの担当をしていた高田助手が「これ、ダートなら大きいところに行きますよ」と言っていた馬。しかも、基本的には人気先行の角居厩舎の管理馬ですよ! 3番人気でも6倍台で買えるなら、それこそ前述したアムロ・レイの「こんなに嬉しいことはない」。そりゃあ、買いますよね。ええ、買いますよ。滅多に買わない単勝馬券を。惜しむらくはGⅠシーズン後の給料日前で持っているお金がなかった。ああ、これが3月のダート未勝利戦なら…と思わずにはいられませんした。まあ、少額でも臨時ボーナスをもらったのでヨシとはしましたが(笑)

その翌年、ワイドファラオは船橋のかしわ記念を逃げ切ってGⅠ馬に。僕は前年のチャンピオンズCや同年のフェブラリーSでも馬券を買っていたんですけど、冷静に振り返ってみると高田助手が「デキ落ちしている」と言っていた未勝利戦(勝ちましたけど)と同じ冬場のレース。で、かしわ記念は3歳時にそれなりの結果を残したシーズン(春)のレースでした。実は季節限定ホースなのかな? 今年のかしわ記念も厳しい展開にしては意外と頑張ってましたから(4着)。

ダート=冬のイメージが強いし、実際に重要な番組も冬に組まれているんですけど、ダートは大きい馬が多く、冬場は体重が絞れない…なんて嘆いている関係者もいたりします。ワイドファラオのような馬もいるわけですし、今の季節にダートのGⅠがあってもいいのにな…なんて、思ったりもするんですよ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社