都合よく利用?政治家の役割? 五輪観客めぐる首相と専門家の対応に県民が一言

 「専門家の意見を尊重すべきだ」「総合的な判断をするのが政治家の役割」-。来月開幕の東京五輪・パラリンピック大会に観客を入れる意向を菅義偉首相が表明した翌日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が「無観客が最も感染リスクが低く望ましい」と提言した。ちぐはぐな印象も受ける動きをどうみるか。南日本新聞「こちら373」が18日、意見を募ると多様な声が返ってきた。

 鹿児島市郡元2丁目の男性(71)は「専門家の意見を都合のいいように使っている」と政府の対応を批判、「医学的根拠に基づく提言を無視するのは問題」と訴えた。鹿屋市の玉利純子さん(72)は「感染状況を考えれば、専門家の意見を尊重すべきだ」と記した。

 一方、鹿児島市中央町の自営業松田英久さん(57)は「提言は専門家としての一つの意見。それを含め、さまざまな意見を踏まえて総合的に決めるのが、政治家であり、行政府の長である首相の責任と役割。その判断は尊重されるべきだ」と強調した。

 首相の丁寧な説明や建設的な議論を求める声も。専門家の意見や世論を無視するような政府の姿勢が不満だという60代の自営業中村孝志さん=日置市伊集院=は「観客を入れるなら、その理由を分かりやすく説明する必要がある。政治不信が募る一方」と憤った。

 「国民から見ると政府も分科会も同列のはず。ちぐはぐな印象を持った」という姶良市西餅田の主婦壱岐敦子さん(66)は「何を信用すればよいのか、何が真実なのか全く見えない」と戸惑う。

 同市平松の教諭・祖母仁田政明さん(61)は「国民の命と五輪開催をてんびんにかけるような不毛な議論が続いており、着地点が見つからない」と現状を憂え、「ただ批判するだけで終わってほしくない。国民は建設的な議論を求めている」と訴えた。

© 株式会社南日本新聞社