【MLB】バント処理ダイブに果敢な盗塁企図 3勝目の大谷翔平から滲み出た“二刀流をやる意味”

「2番・投手」で先発出場したエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

バント処理でダイビングキャッチも平然「アウトにするんだ、ってことだけ」

■エンゼルス 7ー5 タイガース(日本時間18日・アナハイム)

エンゼルスの大谷翔平投手は17日(日本時間18日)、本拠地・タイガース戦で「2番・投手」で出場し、今季3勝目を挙げた。投打同時出場は7度目。最速98.6マイル(約158.7キロ)の直球、スライダーを武器に6回5奪三振5安打1失点と好投した。防御率2.70。打撃では四球、一ゴロ、四球。1打数無安打2四球で打率.270となった。チームは7-5で競り勝ち、連敗を3でストップ。本拠地の観客制限が解除された一戦で3万709人のファンを魅了した。

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「チームを勝たせなきゃ二刀流をやる意味がない」。大谷へ恩師・栗山英樹監督が口を酸っぱくして言ってきた言葉だ。その言葉を体現するかのような躍動で3勝目を掴んだ。

“らしさ全開”だった。まずは4回。先頭・カンデラリオがセーフティバントでガラ空きだった三塁前へ転がした。193センチ右腕はマウンドから猛チャージ。迷わずにボールに飛び込んだ。結果は惜しくもバント安打。ダイナミックだったが、その一方で故障の危険性も高まるプレーだった。それでも、試合後は当然といった表情で短く振り返った。

「アウトにするんだ、っていうことだけですかね」

2点リードの5回2死では四球で出塁。続くウォードの打席。1ボール1ストライクから2球目、2ボール2ストライクからの5、6球目と計3度二盗を狙った。もちろん、まだ降板は決まっていない。しかも試合開始時は湿度が高く気温24度。「暑かったので、いつもより多めに汗をかいていた」。体力の消耗しやすい一戦だったが、そんな中でも果敢な走塁を見せた。登板しているのに、なぜ走ったのか――。こちらも平然と答えた。

5回2死一塁では一塁走者として3度盗塁企画「走った方が効率良く点が取れる」

「走ったからと言って、投球に影響するとかはあまりない。(盗塁企画は)状況によって。投手、捕手の配球もそうですし、点差の状況によって走る時は走った方が効率良く点が取れる。あそこはそういう場面だったかなと思っています。(6回の投球に影響は)なかったかなと思っています」

100マイル(約161キロ)を超える剛速球とスプリットで奪三振ショー。打ってはリーグ2位の19本塁打をかっ飛ばす。ド派手なプレーを見せるが、16日(同17日)の敵地・アスレチックス戦では2戦連発となる19号ソロを打った後に意表を突くバント安打。プレースタイルには、いつも父・徹さんから野球ノートを通じて叩き込まれた全力疾走と全力プレーがある。時に周囲をヒヤッとさせるが、故障のリスクは本人も計算しているはず。どんな状況であろうと勝ちにつながるプレーを追い求めているように映る。

試合後のオンライン会見。大谷が何より満足げに振り返ったのがチームの3連敗ストップだった。

「すごい大きかったです。それ(3連敗)まですごいいい勝ち方で来ていたので。逆にオークランドで思ったようにならなかっただけのことなのかなと思っています。前の勝ち方ができるように全員で取り組めたらいいのかなと思う。1勝は大きいなって思っています」

この日からエンゼル・スタジアムは観客数の制限が解除され、3万709人が集結。大盛り上がりだった。「やっぱり気持ち良かったですね。入らないよりも入ってもらった方が選手としてもやる気も出ると思いますし、打席でもマウンドでもより集中できると思うので。やっぱり入ってもらって嬉しいなと思います」。勝ち星だけでなく、地元ファンのハートもがっちり掴んだに違いない。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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