東大とJAXAの河川流量予測システム、30時間以上前に氾濫予測が可能なことを確認

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東京大学 生産技術研究所(東大生研)と宇宙航空研究開発機構(JAXA) 地球観測研究センターは6月18日、協力して開発・運用を行ってきた日本の河川の流量や氾濫域の推定・予測を可能とするシステム「Today's Earth - Japan(TE-Japan)」において、2019年に多数の洪水被害を起こした台風19号の事例を用いて、予測実験結果を検証した結果、実際の堤防決壊地点142か所中130か所において、決壊の約30時間以上前から警戒情報を出すことができていたことを確認したと発表した。

同成果は、東京大学 生産技術研究所 グローバル水文予測センターの芳村圭 教授、同 馬文超 特任研究員、東京大学 生産技術研究所の山崎大 准教授、同 日比野研志 助教、マサチューセッツ大学 博士課程の石塚悠太氏、JAXA 地球観測研究センターの山本晃輔 研究開発員(東大生研 協力研究員)、同 可知美佐子 研究領域主幹、同 沖理子 研究領域上席らによるもの。詳細は「Scientific Reports」に掲載された。

TE-Japanは、空間解像度が約1kmの格子で、時間解像度1時間で衛星観測と、陸面過程モデルとして国立環境研究所、東京大学、森林総合研究所、資源環境技術総合研究所などが協力して開発した「Minimal Advanced Treatments of Surface Interaction and Run Off(MATSIRO。マツシロ)」ならびに東大生研の山崎准教授が開発してきた河川流下モデル「CaMa-Flood(ケイマ・フラッド)」という2つのモデルシミュレーションを活用し、リアルタイムで陸上の水循環に関わる物理量(土壌中の水分量や河川流量など)についての推測・予測を行うシステムで、2020年3月末に予測を含むリアルタイム運用化が完了したという。

今回の研究では、2019年10月12日に日本に上陸した台風19号が引き起こした災害に対し、TEシステムを用いたシミュレーションを実施。その結果、実際に堤防が決壊した地点142か所の中、130か所に対し、予測開始時刻から、シミュレーション上で200年に1度のレベルを超える推移になる際に出る「アラート」が出される時刻までのリードタイムは平均値で約32.75時間で、アラートが出る時間も実際の氾濫時間と比べると8.53時間早く出ることが確認(捕捉率91.55%)されたという。

ただし、アラートは全部で542地点で出されたため、実際に堤防が決壊した地点との整合数は130のため、空振率は76.0%となるという。また、21の一級河川で洪水の発生を予測したが、4つの一級河川には実際には堤防決壊が無かったことを確認。これは予測の観点から過大評価と見なされるが、現実的な話としては、観測や実際の報告が不足しているため、これら4つの主要な河川周辺 では安全であったというわけではないという。

気象業務法では、洪水の予報を業務として行おうとする場合は、気象庁長官の許可が必要となるが、防災との関連性の観点などから、許可を得ることは難しいとされている。そのため、今回のような研究成果に基づいた洪水予測情報を一般に提供することはできない状況となっている。そのためTE-Japanを活用した予測情報については、共同研究という形で希望する自治体(2021年6月時点で31の都道府県・市区町村が参加)などに提供していくとのことで、6月23日にもそうした共同研究機関向けに限定して、洪水の「甚大さ」と「緊急度」の両方を考慮し、新たに定義した5段階の警戒レベルで可視化された情報を見ることができるWebページを共有する予定だという。

なお、研究チームでは今後、より高い精度による洪水リスク判定を可能にすることを目指し、システムの高度化などを継続して行っていく予定としている。