【東京五輪】観客の議論の陰で…“中止”の選択肢が消えたのは「高度な戦略」か?

中止の議論が“消滅”

もしや高度な心理テクニックなのでは? 開幕まで約1か月に迫った東京五輪を巡り、大会組織委員会は「無観客か、有観客か」の決断が迫られているが、一部の五輪関係者の間では〝ある現象〟が指摘されている。それは、いつの間にやら「中止」の選択肢が消えつつあることだ。

組織委の2トップ、橋本聖子会長(56)と武藤敏郎事務総長(77)は18日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長(72)ら専門家有志から「無観客が望ましい」との提言を受けたが、橋本会長は「無観客も覚悟しておかなければ」と苦悩の表情を浮かべつつ「最後まで見たいという観客の方がいる限り、リスクの払拭を最後まで探るのも組織委員会の仕事」として有観客へのこだわりを見せた。

これには人流増加を懸念する声や「観客を入れるメリットはあるのか?」との反発が出ているが、開催に懐疑的な姿勢を示す五輪関係者は「もともと〝開催か、中止か〟の議論だったのに、有観客を主張したことで〝客を入れるか、入れないか〟の対立構図にすり替わった。これってドア・イン・ザ・フェイスっていう高度な戦略ですよ」と指摘する。

「ドア――」とは人間の心理を突いた交渉テクニックの一つ。「譲歩的要請法」とも言われ、先に過大な要求を持ち掛け、拒否した相手を譲歩させる形で本来の要求を勝ち取る戦略だ。前出の関係者は「狙ったわけではないでしょうが、結果的に中止を求めていた人も今は無観客を推している。これが作戦だったらすご過ぎます」と漏らした。

21日には組織委、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、日本政府、東京都との「5者協議」が開かれる。話題は完全に「観客上限数」にフォーカスされており、世論を手玉に取った巧みな戦略だったらお見事としか言いようがないが、果たして…。

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