認知率は過半数を突破! SDGsは「知る」時代から「取り組む」時代へ

 世間は、新型コロナ関連のニュースと、7月に開催予定の東京五輪の話題で持ちきりだが、すでに西日本では5月に梅雨入りしていることをご存じだろうか。気象庁の観測によると、西日本から東海、北陸、北日本にかけての広い範囲で5月は雨量が多く、とくに熊本県南部から鹿児島県薩摩地方にかけては平年の3倍前後の雨が降り、近畿では平年より21日も早く、1951年の統計開始以来、最も早い梅雨入りとなった。ところが、6月に入ってからは最高気温が30℃前後の晴天の日が増え、関東甲信越地方では例年よりも遅い梅雨入りになりそうだ。梅雨入りだけを比較して、異常気象と断ずるのは強引かもしれないが、それでも地球環境の悪化を考えずにはいられない。

 こうした肌で感じる身近な気候の変化やコロナ禍の影響もあってか、日本でも環境問題への関心が日に日に高まっており、 世界共通の持続可能な開発目標「SDGs」の取り組みも活発化している。

 大手広告代理店・電通グループ<4324>が5月21日に発表した「SDGsに関する生活者調査」では、対象となった10?70代の男女1400名の「SDGs」という言葉の認知率は、前回結果の29.1%から54.2%と、ほぼ倍増している。とくに10代では7割を超えており、全世代で最も認知されているのが興味深い。ところが、その一方で、自分の勤める企業のSDGsの取り組みを認識している人は44.8%にとどまり、やや心許ない結果も浮き彫りとなっている。若い世代でSDGsの認知率が高いのは、一つはメディアからの発信が増えたことが挙げられるだろう。また、就活生にとってSDGsは、自分の目指す企業を推し量る一つの指標にもなっているようだ。

 そんな中、SDGsに即した活動に取り組む企業も急増している。企業の環境問題への取り組みとしてはこれまで、CSR活動という形で行われてきた。しかし、CSRが「社会を良くするための慈善活動」であるとすれば、SDGsは「ビジネスなどを用いて社会をよくしよう」という、より積極的なものとなる。  

 お菓子メーカーの森永製菓<2201>では、2019年度から自然体験を主眼に置いた「チャレンジ!サイコー冒険隊」を実施。大自然の中でキャンプ生活を行うことで、「生きる力」を育むことが目的だ。更にオリジナルプログラムでSDGsを学び、キャンプ生活で自らが取り組みたいSDGsのゴールをグループで設定。仲間と助け合いながら目標の達成を目指すことで、より具体的な活動を展開している。

 学校と直接タッグを組む企業も存在する。国内ハウスメーカー・アキュラホームは、京都の立命館小学校と手を組み、森林保全活動やプラごみ削減について考えるSDGs環境授業を実施している。因みにアキュラホームは、プラごみ削減の取り組みから、カンナ削りで巻き上げる「木のストロー」を生み出した企業としても有名だ。「林業とSDGsから社会問題の解決」という、木造注文住宅を施工する企業ならではテーマで、活発な議論が行われた。その結果、3月には児童たちが学びを通じて考えた課題解決プランの発表会も開催され、アキュラホーム社長の宮沢俊哉氏、「木のストロー」の開発者である同社・西口彩乃氏、発案者である竹田有里氏、更に林野庁課長・長野麻子氏が駆けつける、一大イベントにまで発展した。

 

 授業では、「木のストロー」に至った発想を主軸に、児童たちが考える「木」を活かしたアイデアが数多く発表された。「木のまくら」や「木のプール」などユニークな物から、「木のマスク」や「木の粉で粘土」など、子供ならではの柔軟な発想で、多種多様な提案や議論が行われたという。いずれの提案もSDGsの問題解決に繋げている目的意識の高さが素晴らしいと、専門家が舌を巻く内容だったそうだ。

 また、SDGsは環境問題への取り組みだけではない。例えば、パナソニック<6752>では、よりグローバルな人材育成の観点から「パナソニックキッズスクール」を開校している。21世紀を担う子供たちが自発的に学べる環境作りや、SDGsを含めたコンテンツやプログラムを提供している。こういった取り組みも、持続可能な社会の実現のためには欠かせないものだ。

 冒頭で示した「SDGsに関する生活者調査」は、2018年から年1回実施されている。因みに第1回の認知率は14.8%。2021年では過半数を超えた。次はいかに行動するかがカギとなってくるだろう。これからは、世界や国に任すだけではなく、個人で何ができるかを考える時代。その考え始めるキッカケとして、企業が取り組むSDGs活動に注目していきたい。(編集担当:今井慎太郎)

日本でも環境問題への関心が日に日に高まっており、 世界共通の持続可能な開発目標「SDGs」の取り組みも活発化している。

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