メクル第554号<旬感 V・ファーレン> DF 江川湧清選手(背番号24) 長崎背負うアカデミー出身

「もっとリーダーシップをとらないといけない」と語る江川選手

 5月29日のJ2第16節、レノファ山口戦の後半42分。パスを受け、前を向くと「玉田選手の動きが見えました。ただ、距離(きょり)がある。ドリブルで距離を詰(つ)めよう」と持ち上がり、左足から放った縦(たて)パスが見事に玉田選手の得点をアシスト。「イメージ通り。タイミングも良かった。いい感じに力が抜(ぬ)けたパスが出せた」。チームも3-0で快勝(かいしょう)。DFとしても無失点に貢献(こうけん)しました。試合終了後(しゅうりょうご)には、ピッチで仲間に笑顔を見せていました。
 開幕(かいまく)から12試合連続失点で敗れた試合も多く、チームは波に乗れませんでした。監督(かんとく)が交代し、松田監督が5月9日のギラヴァンツ北九州戦から指揮(しき)を執(と)りました。しっかりミーティングをして、グラウンドでは戦術(せんじゅつ)の落とし込(こ)み。練習もハードになり疲労度(ひろうど)も増(ま)していますが、その後は5勝1分(勝利はすべて無失点)と結果もついてくるようになりました。
 自信を取り戻(もど)しつつあるチームで今季は、センターバックでの出場が増(ふ)えています。「本来のポジションでプレーできているし、対人の強さや危険察知力(きけんさっちりょく)、左足の精度(せいど)は通用している」。出場時間も昨年の721分を超(こ)え、842分(第18節終了時点)になりました。
 プロ1年目の2019年、開幕直前に右膝(みぎひざ)前十字靱帯再断裂(じんたいさいだんれつ)の全治10カ月の大けが。「高校時代も同じけがをして約1年間、何もできなかった。焦(あせ)りしかなかった。ただ、必ずグラウンドに立ってみせる」。そんな思いでリハビリに取り組みました。
 V長崎の選手としてデビューしたのは、昨年9月23日のアウェー町田ゼルビア戦の後半40分。「呼(よ)ばれたときは緊張(きんちょう)した。ただ、ピッチに入るとリラックスして、うまく試合に入れた」。“本職(ほんしょく)”のセンターバックではなく、サイドバックで出場。時間は5分だけでしたが、「長く感じた時間かな」。つらいリハビリを乗(の)り越(こ)えてピッチに立ち、プロとして踏(ふ)み出(だ)しました。
 腐(くさ)らずやり続けて、やっとつかんだチャンス。あきらめず、動き続けた原点には「凡事徹底(ぼんじてってい)」という言葉が刻(きざ)み込(こ)まれています。中学時代のサッカーの恩師(おんし)が教えてくれた言葉で、「当たり前のことを徹底的にやれば、目標に近づける」ということを信じてやってきました。
 さらに成長するための課題として、「こまめにコミュニケーションをとって、もっとリーダーシップをとらないといけない」と自己分析(じこぶんせき)。下部組織(そしき)からやってきて、存在感(そんざいかん)が増してきたDF。「自分の活躍(かつやく)次第では、アカデミーの注目度も左右する」。長崎の将来(しょうらい)のJリーガー、育成年代の思いを背負(せお)いグラウンドでたくましく躍動(やくどう)します。

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