“G7でぼっち”菅首相フォローのため妄想ストーリー流布! 甘利明は「外国の首脳を一喝」、FNNは「カメラがない場面で会話」

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首相官邸Twitterのプロパガンダ

17日に開いた記者会見でも、相変わらず説明能力のないポンコツぶりを露呈させた菅義偉首相。パンデミック下で五輪を強行するというのに、本サイトの記事で指摘したように、「安全安心」の根拠は一切説明できず、「子どもたちに夢や感動を伝える機会になる」とか「会場に直行、直帰をすることも大事だ」とか、なんの中身もない空虚な言葉しか並べられないのだから、呆れ果てるしかない。

ピーター・バラカン氏が、会見のあった17日に〈このところテレビがストレス。7時のニュースを一応見ようと思うと、また首相記者会見。参政権のない人間で申し訳ないけれど、一納税者として言わせてもらいます。質問にまともに答えず、用意された原稿繰り返し読み、意味のないことばかり言う首相は要りません〉とツイートしていたが、まったくその通りだろう。

五輪強行については、開催強行の根拠がないためハナから真摯に説明する気がないのだろうが、しかし、それを差し引いてもこの説明能力のなさはひどすぎる。実際、総理大臣として資質が決定的に欠けているとしか思えないこのポンコツぶりは、ほとんどの国民にバレてしまった感さえある。

ところが、菅首相やその周辺は、あいかわらず情報操作で、ポンコツぶりをごまかせると思っているらしい。

先週、イギリス・コーンウェルで開かれたG7サミットをめぐる報道では、NHKが13日放送の『ニュース7』で、途上国へのワクチン提供をめぐり、「菅首相が議論を主導した」とフェイクを垂れ流したが、今週に入って、甘利明・元経済再生相がこんなツイートしたのだ。

〈総理は外交が苦手?そのイメージを吹き飛ばす鮮烈なデビューがG7でした。公正な国際秩序に向けG7が持つべき覚悟に消極的な1部首脳に対し、相手の目を見据えて一喝する迫力に先方もタジタジ、自由で開かれたインド太平洋の維持や台湾海峡の平和と安定等G7に初めて書かれた歴史は極めて重要です。〉(6月16日)

●サミットに行ってもないのに「菅首相が外国の首脳に対し目を見据え一喝」「迫力に先方もタジタジ」

これ、いったいどこの異世界の話なのか。G7では、ゲスト国の首脳との写真撮影後やエリザベス女王との写真撮影後、輪に入れずポツネンとしている菅首相の“ぼっち写真”が拡散され、むしろ菅首相の外交能力、コミュニケーション能力のなさが世界中に晒された。

それを、「外国の首脳に対し目を見据え一喝」「迫力に先方もタジタジ」って……。

言っておくが、「一喝」というのは、大きな声で一言叱りつけるという意味。甘利氏のツイートどおり、もし菅首相がどこかの国の首脳に対しそんなことをしていたら、それこそ相手国から抗議を受け、外交問題に発展しかねないだろう。だが、今回のG7でそんなトラブルは起きていないし、海外メディアでもそんなやりとりがあったことを一切報道していない。

だいたい、甘利氏はサミットに同行しているわけでもないのに、いったい何を見てきたような作り話をしているのか、という話だろう。

甘利氏はこのところ、安倍晋三前首相、麻生太郎財務相とともに「3A」と称されるなど、ポスト菅政局のキーマンとして注目される一方、〈安倍内閣は3A+S〉〈第二次安倍政権の際にも菅さんから声をかけられ、先ず2人で麻生さんを口説いたのが始まり〉とツイートするなど、やたら菅首相とのパイプをアピールしている。

今回も、菅首相をヨイショすることで、政権への影響力を高めようとしたのだろうが、そんな暇があったら、ずっと頰被りしている自身の「口利き疑惑」の真相を説明して責任を取れ、という話ではないか。

しかし、こうした「菅首相がサミットで大活躍」という嘘情報は盟友の政治家が政治的思惑で口にしているだけではない。

たとえば、甘利氏がツイートしたのと同じ16日に「FNNプライムオンライン」が「「対中国と五輪」菅首相の成果の影に2人の首脳とお勉強 G7サミットの舞台裏と今後の課題」という記事を配信しているのだが、この記事も甘利氏のツイートに負けず劣らず、ひどいのだ。

●FNNは「菅首相は英語を勉強してカメラがない場面では積極的に会話」と必死でフォロー

そもそもG7を「菅首相の成果」とする前提自体、頭がくらくらしてくるが、記事では、G7サミットの首脳宣言に「中国への懸念」と「東京五輪大会の支持」の2つが盛り込まれたことは、すべて菅首相の戦略と直接交渉によるもの、という話になっている。

たとえば、アメリカのバイデン大統領とは会議の合間合間に断続的に計10分程度協議しただけで、正式な首脳会談はもたれなかったが、FNNでは、〈菅首相とバイデン大統領は、“自分がこの首脳と直接話をするので、あなたはこちらをお願いします。その結果はこうでした”というやりとりを繰り返し“根回しとすりあわせ”を行っていた〉とのこと。そして、共同声明の文案に反発したドイツのメルケル首相を菅首相が説得し、〈「そこまで言われるとは思わなかったわ」と折れて、宣言がまとまった〉などと、甘利氏の妄想ツイートとそっくりなことを書いている。

繰り返すが、こんなエピソードは海外メディアが報じているのも見当たらないし、日本のほかのメディアも書いていない。なぜ、FNNだけ詳細なやりとり、メルケルのセリフまで知っているのか。

しかも、笑ったのが、こうした交渉がうまくいった理由のひとつとしてFNNが〈菅首相は密かにあることを勉強していた〉と書いていたことだ。いったい何を勉強?と思って読み進めたら、こうあった。

〈それは英語だ〉

菅首相がにわか勉強でマスターした英語で各国首脳と直接交渉したとでも言うのだろうか。事実なら意図が間違って伝わる可能性もあるし、逆にやばいだろうと思っていたら、そのあとに〈関係者によると英語を使う際は、誤ったメッセージが伝わらないよう、通訳を付けずに話すことは控えたという〉という一文。菅首相が英語で喋るときは通訳をつけるって、意味がわからない。

だが、FNNはそんなことはおかまいなし。ぼっち写真をカバーするためか、こんなことまで書き連ねていた。

〈配信される映像では親しげに会話する欧米の首脳に対し、移動の際に一人の姿も見られたが、カメラがない場面では積極的に会話をしていたという。派手さやパフォーマンスを好まない菅首相ならでは〉

とにかく、記事の頭から終わりまで、ありえないような菅首相の礼賛エピソード一色。G7で広まった菅首相のぼっちぶり、コミュニケーション能力欠如をごまかすために、必死でヤラセの宣伝をしているとしか思えない。

●官邸が流す「菅首相がG7で大活躍」のフィクション もはや北朝鮮並み

しかし、こうした報道はもちろん、FNNが勝手にやったものではない。甘利氏のツイッターも、このFNNも明らかに、そのネタ元になっているのは官邸だ。

前述したNHKの13日放送の『ニュース7』もそうだった。G7閉幕直後、現地の長内一郎記者が中継で、「主要なテーマとなった新型コロナ対策では、セッションの冒頭、菅総理大臣が『ワクチン普及は多国間主義を基本とし、途上国に公平かつ迅速に届ける必要がある』と訴え、議論を主導したかたちとなりました」と解説したのだが、実際は低所得国へのワクチン提供は、イギリスのジョンソン首相とアメリカのバイデン大統領がG7に先立って表明していたもの。むしろ、日本政府は寝耳に水で、当初は「不満」を漏らし、「困惑」さえしていた。

にもかかわらず、NHK がこんなフェイク解説をタレ流したのは、首相官邸の意向を受けてのものだろう。実際、外務省HPや首相官邸のTwitter公式アカウントでは、こんなプロパガンダが書かれていた。

〈途上国への公平で迅速なワクチンの普及については、リードスピーカーとして議論を主導しました。〉
〈菅総理は、一部のセッションでリード・スピーカーを務めるなど、特に新型コロナ対策・国際保健、世界経済・自由貿易、気候変動、地域情勢といった重要課題について、積極的にG7の議論に貢献し、首脳間の率直な議論をリードしました。〉

ようするに、「菅首相が外国首脳を菅首相が大声で叱りつけた」という甘利氏のツイートも「カメラのない場面では外国首脳と積極的に会話していた」というフジテレビの苦しすぎるフォローも、この延長線上で出てきた、官邸による「創作」と考えて間違いないだろう。

安倍政権時代から外交をめぐる情報操作はひどかったが、ここまでくると、もはや北朝鮮で繰り広げられている「ドン様の神話捏造」並み。菅首相はこんな出来の悪い書き割りの捏造をやって、国民が本気で信じると思っているのだろうか。
(田部祥太)