<金口木舌>一緒に時を刻むために

 日々の暮らしの中で時報は重要な役割を果たす。仕事や登校の準備をするとき、大事な約束に向かうときなど、私たちに時刻を伝え、頼れる道しるべになる

▼近所の保育園から聞こえる子どもたちの声は、わが家にとっての時報代わり。朝の合唱に始まり、遊びや昼寝の時間、帰宅前の歌に至るまで、保育園のにぎわいの変化に時の移ろいを感じ取る

▼子どもたちの元気な声に心が和むが、保育の現場は笑ってばかりいられないようだ。県内では待機児童数が大幅に改善される一方で、保育士不足が長年の課題として残る

▼厚労省の資料によると、保育の仕事に就く理由のトップは「夢だったから」。離職理由の上位には給料の安さや仕事量の多さが挙がり、理想と現実の格差に悩む様子がうかがえる。県外では保育士不足などの理由で閉園する施設もあるという

▼密集や密接が避けられない保育現場で新型コロナの集団感染も報告される。緊急事態宣言期間でも、仕事を休めない親のため保育を続ける施設がある。社会の受け皿としての機能を果たしながら、厳しさを増した現場からは悲鳴が上がる

▼子どもたちは一歩一歩、時を刻みながら成長する。正しい道しるべを示すためには、家庭と地域の協力は不可欠だ。困難な状況の今だからこそ、保育現場の声に耳を傾け、よりよい環境を築くことが何よりも大切だろう。

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