札幌国際大女子野球部が公式戦デビューへ 1人3ポジション制の少数精鋭軍団が目指す頂点

札幌国際大・女子硬式野球部【写真:石川加奈子】

選手は1期生6人と2期生6人の12人、全国大学女子野球選手権高知大会で初出場初優勝を

創部2年目を迎えた札幌国際大女子硬式野球部が公式戦デビューする。選手は1期生6人と2期生6人の12人。1人3ポジション制で少人数のハンディを補い、全国大学女子野球選手権高知大会で初出場初優勝を目指す。

待ちに待った単独チームデビューだ。27日に開幕する第1回北海道女子リーグを皮切りに、7月10~11日には全国大学女子硬式野球選手権東日本予選大会、17~18日にはスイートデコレーションカップ第9回女子硬式野球北海道大会と公式戦が続き、23~25日に大学選手権に挑む。

工藤里菜主将(2年)は「やっと単独で出られます。他の大学と比べると一番下で挑戦者。下から追い上げ、一つずつ勝って、日本一を目指したいです」と最大目標である大学選手権を念頭に置きながら声を弾ませた。

昨年は部員6人で練習に明け暮れた。キャッチボール、ノック、トスバッティングと徹底的に基礎を磨いた。スポーツ人間学部スポーツ指導学科准教授でもある阿南浩司監督(42)と、長内達朗コーチ(24)も参加して模擬紅白戦で実戦感覚を養ったこともあった。人数が少ない中でも、工夫しながら力をつけたことで阿南監督は「みんな本当に一生懸命やってくれました。6人が頑張ってくれたから今があります」と1期生に感謝する。

1年目から試合をする機会にも恵まれた。昨年9月の全国大学女子硬式野球選手権(和歌山)には、折尾愛真短大、神戸医療福祉大と合同チームを組んで出場。結果は3戦3敗だったが、大学野球のレベルを体感し「もっと練習しなきゃいけない」(工藤主将)とさらなるモチベーションアップにつながった。10月の谷口板金カップ全日本女子野球連盟北海道支部連盟設立記念大会では、クラブチームのホーネッツ・レディースと合同チームを組んで優勝も経験した。

工藤里菜主将【写真:石川加奈子】

工藤里菜主将は神戸弘陵高の主将として70人の部員をまとめ、高校日本一に輝く

今春1年生6人が加わり、単独チームでの活動が始まった。「この12人でしか味わえないストーリーにチャレンジしようと」と指揮官は選手に呼びかける。人数が限られるため「メインのポジションにプラスして2つのポジションをやってもらっています」と1人3役を求め、連戦を勝ち上がるイメージだ。「何が起こるか分からないので、頭の中では10ストーリーくらい作っています」と多数のオプションを準備している。

実際、4月に駒大苫小牧高と行った初の対外試合では、左利きで外野と一塁を守る虻川莉子(1年)を捕手としてテストした。札幌新陽高時代外野手だった虻川は「配球や右打者が立った時の三塁送球、ショートバウンド捕球など難しさはありましたが、捕ることが好きですし、キャッチャーとしてうまくなりたいです。正捕手になれるように頑張ります」と前向きに取り組んでいる。異色の左利き捕手が公式戦でも実現するかもしれない。

少数精鋭集団と言える。工藤主将は、神戸弘陵高の主将として70人の部員をまとめ、高校日本一に輝いた経歴の持ち主。今春入学したエースの亀田織音投手(1年)は、札幌新陽高卒業後に女子プロ野球リーグ入りし、昨季はルーキーながら15試合に登板した。昨年夏にプロの活動が危ぶまれるという噂を聞き、地元の大学での再出発を決めた。工藤主将と亀田は、19年の女子野球アジアカップで優勝したU-18日本代表のチームメートだ。

亀田ら19年夏の高校選手権で4強入りした札幌新陽高の卒業生が9人在籍し、工藤主将の後輩で神戸弘陵高時代に4番で主将だった小松海月内野手(1年)も加入。実力と経験を併せ持つメンバーが揃った。

4月の駒大苫小牧高との変則ダブルヘッダーでは、計12イニングで18安打を放ち、17得点を奪った。亀田、工藤主将、小松で組むクリーンアップは破壊力抜群。「まだまだこんなものじゃないです。打撃は水物ですが、もっと打ちますよ」と阿南監督は手応えを口にする。

東北以北で初めて、全国で10番目の大学女子硬式野球部として誕生し、1年がかりで辿り着いた単独デビューの舞台。スクールカラーであるネイビーと、エンジに新色のブルーを加えた真新しいユニホームで新風を巻き起こす。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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