好きな瞬間は「左打者の背中」 “マイ・ベスト”を追う球場の「カメラ女子」とは?

球場の「カメラ女子」に、レンズの向こう側にある楽しみ方を聞いた【写真提供:NFB】

「NFB」の好評連載、野球女子生態図鑑第4弾

野球が好きな女子――。ひとくちに言っても、「好き」のベクトルは多岐に渡る。応援する選手やチーム、見たい視点はそれぞれ異なる。しかし、異なる属性のメンバーがいるからこそ、一つ一つの特徴を掘り下げてみたら……?「野球観戦をもっと楽しく」を合言葉に活動する野球好き女子のコミュニティ・NFBとFull-Countのコラボ企画『野球女子の生態図鑑』。第4弾では球場の「カメラ女子」に、レンズの向こう側にある楽しみ方を聞いた。

カメラ女子とは、応援する選手や球団マスコット、あるいは球場で起きる現象などをレンズ越しに覗いてシャッターを切り、形に残す野球女子たち。カメラは高額でありながら繊細で、重量もかなりのもの。しかし、今回、NFBのカメラ女子・Sakuraが「携帯のカメラ機能では満足できず、大砲レンズを購入するほどにハマった」と話すほどの魅力を語ってくれた。

カメラ女子たちが、レンズを向けるシーンは百人百様だ。誰もがホームランや三振を奪うシーンに集中しているわけではない。Sakuraにカメラを構える瞬間を聞いてみると、「左打者の背中が見えるとき」とニッチな答えが返ってきた。

「左打者が好きな傾向があって、中でも選手の背中が好きなんです。だから背中の見える一塁側内野席に座って、選手が打席に入ってバットを構える瞬間にカメラを構えます。記者の方や球団の方が撮られる写真もいいなと思って見るんですけど、やっぱり顔が映っているものがほとんどだから」(Sakura)

他にも、選手のルーティン、ネクストバッターズサークル内での様子、試合中の思わぬハプニングなどにも積極的にカメラを向けると話す。メジャーな見どころではなく、「自分にとっての見どころ」に忠実にカメラを向けるのが、カメラ女子の醍醐味だ。結果的に、テレビや新聞で切り取られにくいシーンが手元に残ったりする。

自分だけのマイベストショットを追求できる。この喜びにSakuraが気づいたのは、彼女自身のバックグラウンドにあった。「ルールに即した形」で「自由に写真を楽しむ」、この2つが必ずしも両立するわけじゃないことを知っていたことが大きかった。

「もともと、ライブやミュージカルが好きでよく行っていたんですけど、自分で写真を撮れないから提供されたものを楽しむことしかできなかった。でもプロ野球は個人で楽しむ分として、自分で撮りたい写真が撮れる。カメラにはまった一番の理由はそこですね」。

ロッテ時代から鈴木大地選手のファンであるSakura。「今は、『鈴木大地20xx年』というふうに名前を付けて、パソコンにフォルダ分けしています(笑)」と明かした。

「自分だけの見どころ」は、レンズを覗いてシャッターを切る繰り返しの中で、新たに発見することもあるという。

前の打席と次の打席で違いを見つけることができる

Sakuraは今年、ロッテ・安田尚憲内野手のファンにもなったと言うが、そのきっかけもカメラにあった。打席に立つ安田選手にカメラを向けた、あるとき、「一打席一打席『結果を出そう』という意識が伝わってきたんです。それからも、ヒットが出たら次も打とうという雰囲気が伝わってきて、気づいたら安田選手にレンズを向けるのが面白いと思うようになりました」。

また、野球の見方にも変化が訪れた。カメラを持ってから応援する選手の打席一つ一つへの集中力が上がり、「前の打席と次の打席とで、打撃がどういうふうに変わったか自分の中でかみ砕くことができるようになった」と言う。カメラを構えるようになって、野球を見る解像度も上がった。

宮城県出身。地元の強豪・仙台育英時代からロッテ・西巻賢二内野手を応援し、西巻選手が楽天に入団した2018年に、初めてファームで野球観戦をした。

「そのとき携帯のカメラで西巻選手の写真を撮ったんですけど、全然キレイに撮れませんでした。そこで友達からコンデジを2万円で譲ってもらったんですけど、それでもまだ、もっと良く映したいという欲求があって。同じ年に1軍の楽天戦に行った帰り、ネットショッピングで一眼カメラを買いました」

Nikonのデジタル一眼レフカメラ「D5000」と合わせ、望遠レンズも購入。レンズを選ぶ際は、すでにカメラ女子として観戦する野球女子たちの情報をネットで集め、TAMRON(タムロン)レンズを選んだ。機材は揃えたが、そこで満足せず、自分が取りたい色味などをシャッターを切るうちに突き詰め、ボディは「D5000」から「D3500」に乗り換えた。今は手放したそうだが、一時は大砲レンズも購入して使用した。

決して安くはない買い物だが、「たくさん撮っている中でも特別に好きな写真が何枚かあって、それを携帯画面の背景にしたりして眺めています」と終始笑顔だった。

カメラを持ったきっかけが野球というだけで、レンズを向ける対象は限られてない。

Sakuraは、「景色やポートレートの写真も撮るようになり、野球とカメラのおかげで日常の楽しみの幅が広がった」と言う。カメラ一台から広がる新しい世界を、きっとSakuraだけでなく、球場のカメラ女子たちは知っている。

◇NFB(日本やきう女子機構)
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