3キャリアKDDI・NTT docomo・ソフトバンク各社の展示でドローン利活用環境の近未来が見えた [Japan Drone 2021]

ひさびさに携帯電話3キャリアが揃い踏みした「Japan Drone 2021」。来年のLevel 4の飛行解禁を控えその役割はさらに重要なものになっている。ブースもそれぞれの強みを生かした展示となっており、今回は3社あわせて紹介する。

KDDIスマートドローンプラットフォーム×PRODRONEの機体開発を含めたソリューション提供

「叶えるために飛ぶ」ということで、お客様のご利用シーンや目的をドローンを使って実現していくということがKDDIのキャッチフレーズ。それを叶える1つ目が「

スマートドローンプラットフォーム

」。

常に多くの人が来場していたKDDIブース

「スマートドローンプラットフォーム」はスマートフォンと同じモバイル通信に対応したスマートドローンが、遠隔監視操作により、人に代わり荷物を運んだり、建設、農業、インフラ、災害の状況をリアルタイムに把握したりするためのプラットフォーム。運行管理システムや管制システムがセットになっている。ブラウザアプリベースで、タブレットでも動作し、管制センターでも現場作業者でも利用することができる。

機能的な実証実験はすでに終了しており、現在はお客様の使いやすさの部分で何が必要かというところや、JALやJAXAからデータを連携させているがどのように連携させていくかの確認をしている状況。ほぼサービス化の準備は整いつつあり、あとは運用にどう活かすかというところを調整・検討しているとのことだ。

KDDIブースの中にPRODRONEブース。強い連携でソリューションを提供している

そして、もうひとつの特徴は「スマートドローンプラットフォーム」を活用したソリューションの提供。物流・監視・点検・測量・農業などさまざまな分野に対応しており、特にPRODRONEとの強くタッグによるカスタム機開発も合わせたソリューション提供は注目だ。

▶︎KDDI

NTT docomoオープンなパートナーシップとdocomo Skyによるトータルソリューション提供

クラウドプラットフォーム「docomo sky」というのがドコモのイチオシのドローンクラウドソリューションプラットフォーム。ドローンの飛行準備から撮影、データのアップロードはもちろん、フライト後のデータ解析やレポート作成まで、Web上で一元管理できる。そして注目は2021年5月から取り扱いを開始した自立型ドローン「Skydio 2」「Skydio X2」の提供、docomo Skyとの連携だろう。

Skydioシリーズ最大の特徴はAIドローンであること。6つの魚眼カメラとLiDARで周囲の空間状況を解析・可視化しながら飛行経路を最適化し、障害物があればそれを避けて飛んでいくことで的確かつ高効率な点検や警備ができる。

最新の「Skydio X2」は北米の国防基準に適合した機体性能をもった赤外線カメラ+光学カメラのデュアル仕様になっており、赤外線カメラを活用した点検にも対応する。また、操縦は基本的にマニュアルではなくオートパイロットなのでパイロット技量の平準化にも強い。ブースでは自動離着陸できて充電までできるドックといっしょに展示されていた。

格納・充電ドックに着陸した状態のSkydio 2。隣には最新のSkyidio X2も
Skydio X2はかなり無骨なデザイン。カメラは光学+赤外線のデュアル仕様

もうひとつの見どころは「セルラードローン」。上空で携帯電話の電波を安全に利用してドローンの運航を支援するもので、docomoがドローンをやっている大きな理由のひとつだ。今一番使われているのはLevel 3の物流実証実験。携帯電波エリアマップの上空版を提供しており(Webサイトはないが企業から要望があれば指定されたエリアを個別に提供)。エリアマップをもとに安全な飛行経路(電波が確実に補足できるエリア)を決定することができる。

セルラーセットも提供しており、SIM搭載端末も数タイプから選択できる(Wifi接続と有線接続タイプがあり、フライトコントローラーと接続)。Level 3物流の運用条件である飛行中リアルタイムの映像中継もLTE回線を利用して可能となっている。

テレメトリや機体制御などにももちろん利用でき、docomoの電波が入るところであれば日本全国海の上でも使えるので離島間物流で利用していただくことが多くなっている。ちなみに、先日岡山県でEHang(イーハン)の

空飛ぶクルマ「EHang 216」が、日本での無人・自律型の初の試験飛行

をした際にもdocomoのセルラーセットが活用された。

携帯電波の上空利用にはさまざまな課題もあったが制度改正もあり実用レベルまできた

そして、docomoが唯一機体も自社開発しているのが「浮遊球体ドローンディスプレイ」だ。4月13日には聖火の到着を祝う「NTT Presents東京2020オリンピック聖火リレーセレブレーション(大阪・万博記念公園)」でも活用された球体型ディスプレイ。

NTT docomoがドローン産業に参入した当初から開発を続けており、直径90cmの球体ディスプレイの中心のドローンが揚力を発生させることで空中をディスプレイが浮遊するという幻想的な演出が可能となる。もともとは研究開発部門が新しいサイネージの形として構想スタートしたものだそうだ。2021年6月30日には、横浜市の赤レンガ倉庫で「

東京2020オリンピック 聖火リレーセレブレーション 横浜会場

」が開催され、直径150cmの特別版が披露される予定。Youtube Live中継で誰でも閲覧可能なのでぜひチェックしてみてほしい。

▶︎NTT docomo

ソフトバンク「Sora Solution」で点検業務の効率化をワンストップ提供

Sora Solution

」は誰でも簡単にドローンを活用できるというコンセプト。ドローンを運用する上で必要な機材、管理をするアプリケーションをまとめて提供している。特に力を入れているのが画像解析機能。「差分検知」機能で前回と今回の画像の差分を検出することにより、運用担当者が一枚一枚点検撮影画像を確認するのではなく、変化があったところのみを確認すればよいので作業の効率化が図れる。

ほかにも画像解析機能ではオルソ画像を作成して距離面積体積を簡単に算出できる機能や、サビを検知してそこから劣化度合いを判定したり、クラックを検知してクラックの幅や長さの累計を簡単に確認できる機能を提供している。

また、ブースではGPSに依存して飛行すると発生する誤差(最大で数メートルの誤差が出てしまう)を数cm範囲内に収めることができる「

ichimiru

」というネットワークRTK(リアルタイムキネマティック、誤差を補正するための情報を提供する仕組み)も紹介していた。

通常RTKでは基準局を立てる必要があるが、「ichimiru」では携帯基地局にその基準局がある状態であるため改めて基準局立てる必要がなく、冗長性や安定性を担保しつつ精度を出すことが可能だ。SoftBankの電波が入るところであれば位置情報の補正ができる。

ほかにも送信機メーカーとして世界的に評価が高いFutabaとの共同開発機体も展示されていた。中国機体のリスクが言われている中で国産機ラインナップに向けてリリースに向けて開発中とのこと。性能的には耐風性能15m/sや「Ichimiru」との連携により安定性や飛行の精度が高い機体となっている。今後はLTEにも対応できるような検証も続けていき、ソリューションも開発していくという。

ソフトバンクの展示はすでにサービスとして提供されているものが多くあったのが印象的だった。ちなみに「Sora Solution」は基本(差分検知とオルソ画像作成)は5万円/月~で使い放題(200GBまで)。オプションでサビ検知とクラック検知を提供しており、比較的安価なので中小企業での導入も進みそうだ。

▶︎SoftBank

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