【ボクシング】井上尚弥、4団体統一へのカウントは残り「1」 パワー、スピード、経験がピークに達した今が充実期

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WBAスーパーIBFの2本のベルトをかけた世界バンタム級タイトルマッチが6月20日(日本時間)、アメリカ・ネバダ州のヴァージン・ホテルズ・ラスベガス特設会場で行われ、チャンピオンの井上尚弥が3R 2分45秒、挑戦者のマイケル・ダスマリナスをボディブローで悶絶させてタイトルを守った。

■モンスター参上、賭け率1.03倍に答える完勝劇

MGMグランドホテルが出した賭け率は、なんと1.03倍。1万円賭けても1万300円しか戻らない鉄板予想だった。試合はまさに賭け率通りの展開。わずかな可能性に賭けたギャンブラーを試合開始直後から諦めモードに陥れる完勝劇だった。

1Rからプレッシャーをかけるモンスターは、ラウンド中盤にチャレンジャーの右ジャブに合わせて左フックを強振。パンチは空を切ったが、パンチの勢いに気圧されたサウスポーは大きく体勢を崩した。明らかな力の差を見せられ、この時点で勝敗の興味は薄れてしまった。

試合後のインタビューで、チャンピオンは「1Rで(相手の動きは)読めた。早い回でいけると思った」と余裕のコメント。テレビ観戦者が抱いた印象を裏づけてくれた。

◆【実際の映像】この強烈な打撃音…井上尚弥の左ボディにダスマリナスは悶絶

■レバーを削ぎ取るように振り抜かれた完璧なボディブロー

井上尚弥がダスマリナスから3度のダウンを奪って3ラウンドTKO勝利(2021年6月19日) (C)Getty Images

2Rに入ると、ガードを下げて、よりリラックスしてパンチが出る構えに変更。プレッシャーを強めて、強いコンビネーションを叩き込むチャンスをうかがう。怯えた挑戦者は逃げ回ることしかできなくなった。

そして、ラウンドの終盤、ジャブ、右アッパー、左ボディブローのコンビネーションがきれいにヒット。左ボディは長身サウスポーのレバーを削ぎ取るように振り抜かれた。そのまま試合を続けたダスマリナスだが、数秒後にもんどりうって転倒。遅れてパンチの効果が出る、典型的なディレイド・リアクションだった。

なんとか2Rを凌いだチャレンジャーだが、試合終了を3分ほど延ばしただけだった。長い腕で必死にガードを固めるが、レバー攻撃に的を絞ったモンスターの強打は肘の裏から脇腹にめり込んだ。さらに2度のダウンを追加したところで、レフリーが試合終了を宣言した。

「相手が思ったより出てこないので、自分のペースで試合ができた。これくらいの試合をしないと……」と、リングサイドに顔をそろえたノニト・ドネアジョンリエル・カシメロ、ふたりのフィリッピン人ライバルを意識して、ようやく表情を緩めた。

それにしてもナンバー1コンテンダーは不甲斐なかった。「もしや?」と思わせるパンチは一発もなし。ラスベガスまで来て、何もせずに帰っていくことになった。試合前から闘争心を感じなかったのは、私だけだろうか?

■目標に掲げてきた4団体統一が、年内にも実現か

指名試合を理想的な形でクリアしたモンスター。気になるのは、今後の試合スケジュールだ。当初は8月15日(日本時間)にWBO王者のカシメロとWBA王者ギジェルモ・リゴンドーが対戦する予定だったが、井上戦の直前にそのカードがドネア vs カシメロに変更になるという情報が入った。

ドネアは5月にノルディーヌ・ウバーリを強烈にKOして、WBCチャンピオンのベルトを保持している。したがって、ドネア vs カシメロの勝者と井上との対戦が実現すれば、勝ったほうが4本のベルトを総取りするという図式が完成した。

キューバ人の老雄、リゴンドーは蚊帳の外に追いやられた形だが、ファンとしては井上尚弥の4団体統一戦を1試合早く目撃できることになった。早ければ年内のマッチメイクもありえるだろう。場所はラスベガスか? 日本か?

井上は、現在28歳。パワー、スピード、経験がピークに達した充実期を迎えている。4団体統一という目標が目の前に見えてきた今、気力・モチベーションも最高潮に達しているはずだ。ビッグマッチに臨む勇姿をぜひとも間近で見たい。そして、ちょっと気が早いかもしれないが、スーパーバンタム級チャンプの顔ぶれも気になってきた。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。