DX推進の人材不足。保守・運用はアウトソース。企業グループ全体で人材育成・再配置が必要。~野村総研

 日本のDXは世界から大きく遅れをとっている。新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中で、このDXの遅れが強く意識され、現在、産業界をあげてDX推進が行われている。しかし、その中で明らかとなった課題はDX業務それ自体やDX推進プロジェクトをマネジメントする人材の大幅な不足だ。

 6月11日、野村総合研究所が、国内企業の情報・デジタル子会社147社を対象として、3月に実施した、「情報・デジタル子会社における今後の方向性と課題に関する調査」の集計レポートを公表している。これによれば、職種ごとの人材の過不足感について尋ねた結果では、「データサイエンティスト」が「大幅に不足」していると回答した企業の割合は32%と、最も不足感が強くなっている。次いで「AIエンジニア」の19%、「ITアーキテクト」17%と続いている。

 「大幅に不足」に「不足」を加えた割合では、「データサイエンティスト」が78.7%、「AIエンジニア」76.5%、「ITアーキテクト」70.2%となっているが、また「プロジェクトマネージャー」も74.4%と、「大幅に不足」は10.6%と相対的に少ないものの、多くの企業でプロジェクトのリーダーとなり得る人材の不足感を強く感じているようだ。こうした人材不足に対してレポートでは「既存システムの保守・運用業務のアウトソースや自社内の業務効率化により人材を捻出し、能力開発を行った上で、上記のような不足する職種へ配置転換することもひとつの有効策」であると指摘している。

 「自社の抱える問題意識」についてたずねた結果では、「ITを活用した企画力不足」が63.8%で突出して多く、「新技術への感度が低い」が42.6%、「育成環境が不十分」38.3%も順となっている。これへの対応としてレポートでは、「企画力不足への対応として、親・グループ会社の抜本的な業務の見直しを経験することや、業務の上流工程シフトが有効」、「技術感度を高めるためには、自社に影響を与え得る社会や生活者の動向、デジタル技術進化の展望、他社の先進的な取り組み、先進的な技術やサービスを提供しようとしているスタートアップ企業の動向等を察知する調査・探求機能を強化することが有効」、「それとともに、親・グループ会社での、クラウド化を中心としたシステム構造の変革など、レガシーシステム5からの脱却を経験することが有効」と提言している。

 企業グループ全体の中でIT・デジタル子会社の位置づけを明確化し、グループ会社のDX推進の中核になれる組織能力を備えることが重要なようだ。(編集担当:久保田雄城)

野村総研が「情報・デジタル子会社における今後の方向性と課題に関する調査」

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