年収650万・貯蓄5000万・持ち家あり独身なら45歳で早期退職して旅行を楽しめる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回は、45歳で退職したいという独身女性からのご相談です。現在は親の家で同居中の相談者。年収は約650万、貯蓄総額は5,000万円。仕事のストレスが大きいので、早期退職して旅行などを楽しみながらゆとりある暮らしをしたいと言います。希望は叶うでしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。

45歳で早期退職したいのですが、可能でしょうか。年収は約650万円、貯蓄は約5,000万円、貯蓄の半分は投資信託です。退職金は1,100万円程度の見込みです。

昨年、両親(73歳)が約2,700万円で戸建を購入し、同居しています。毎月5万円を生活費として入れています。この家は、私が相続する予定です。

父親は軽い認知症を持っていますが、母は元気です。両親の貯蓄は約1億円程度あり、老後はそのお金で賄う予定です。弟は結婚して、家を出ており、両親の面倒は自分が見ることになりそうです。両親からは生前贈与を提案されており、私と弟はそれぞれ数年かけて500万円程度贈与を受ける予定です。両親が亡くなったあとは、弟と半分ずつにするよう遺言を受けています。

現在、独身で結婚の予定はありません。仕事のストレスは大きく、子どももいないため、早期退職して、旅行などゆとりのある暮らしをしたいです。現在生活費は親が管理していますが、持ち家があり家賃がかからないこともあり、月12万円程度で暮らしていくことが可能と考えています。

生活費が厳しいようでしたら、クラウドソーシングなどで簡単な仕事はこなしたいと考えています。個別株にも興味があり、退職後は勉強して資産も増やしていけたらと考えています。また、3年程度退職を伸ばすと退職金が400万円程度増える見込みなので、もう少し長く働くことも視野に入れています。

これまで仕事に打ち込んできましたが、それなりに厳しく、早期退職して、旅行など楽しみたいです。

どうぞよろしくおねがいします。

※相談内容は一部編集しています。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、団体職員、独身

・同居家族について:両親は年金受給。貯金は約1億円ほどあり、それらで賄える見込み。介護や病気による世話の必要はある。

・住居の形態:親の持ち家(戸建・岡山県)

・毎月の世帯の手取り金額:30万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円

【毎月の支出の内訳】

・毎月の世帯の支出の目安:13万円

・住居費:0円

・食費:0円

・水道光熱費:0円

・教育費:0円

・保険料:0円

・通信費:5,000円

・車両費:2万円

・お小遣い:5万円

・その他:5万円(生活費)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:20万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯蓄総額:2,900万円

・現在の投資総額:2,100万円

・現在の負債総額:0円


高山:ご相談ありがとうございます。早期リタイアを目指していらっしゃるとのこと。これまでお仕事に打ち込んできて、ゆっくりしたいというお気持ちもわかります。まずはいただいた情報から早期退職できるかどうかを見てみましょう。

45歳で退職し、年金受給できる65歳までの必要資金は?

ご相談者さんのご希望は、6年後の45歳で早期退職したいとのこと。では、ご希望通り、45歳でリタイアして暮らせるかどうか、ざっくりとした試算にはなりますが、見ていきましょう。

現在、年金が支給されるのは65歳からなので、45歳で仕事を辞めた場合、20年間無年金になります。その間の生活費として、12万円(退職後の想定生活費)×12カ月×20年間=2,880万円が必要になります。

一方、現在の貯蓄や資産の状況を見てみると、貯蓄総額2,900万円・投資総額2,100万円で合計5,000万円となります。

今後6年で増やせる貯蓄・資産は?

加えて、今後6年間で増やしていける貯蓄、資産も見てみると、
・毎月20万円貯蓄→うち10万円を投資信託、10万円を貯蓄
・ボーナスより年間100万円貯蓄
・退職金(予定)1,100万円
単純に計算すると、仮に投資信託で積み立てる分の毎月10万円を3%の利回りで6年間運用したとすると、約800万円になります。残りの10万円は貯蓄するので、10万円×12ヶ月×6年間=720万円。ボーナスは、100万円×6年間=600万円。

退職金も含めると合計で3,220万円となります。仮に現在の投資信託の2,100万円を3%で6年間運用できたとすると、2,500万円になります。ですから、貯蓄分2100万円と合わせると5,400万円となります。加えて、ご相談者さんのお話しだとご両親からの生前贈与で500万円程度がもらえる予定とのこと。

ひとまず、6年後の資産合計9,120万円−想定生活費2,880万円=6,240万円が残る予定です。ただし、これは衣・食・住の基本生活費用での試算です。ご相談者さんが希望しているように旅行に行ったり、趣味などを楽しんだりしたいという場合には、さらに費用がかかります。仮に旅行や趣味代、その他、税金や社会保険料などを考慮して年間50万円程度かかるとすると、1,000万円程度上乗せになります。

年金が満額もらえれば生活費は賄えるけれど…

では、次に65歳以降の生活費も見てみましょう。ご相談者さんの年金の金額の詳細が分かりませんので、仮に私の方で想定して試算してみます。

仮に大学を卒業してから45歳まで現在の会社で働き、退職後も60歳まで国民年金を支払い続けたとします(未納期間なし)。そうすると、ご相談者さんの給与水準などからざっくりと試算すると、年金の金額は年間160万円程度となり、月額で約13万円程度になります。

ですから、65歳以降の毎月の生活費も13万円程度見積もるのであれば、年金で暮らせることになります。

ただし、高齢になると、病気になったり、介護が必要になったりするケースが多く、医療費や介護費用として1人あたり500万円程度必要といわれています。また、シングルで重度の介護状態になってしまった場合には、自分では何もできないため、老人ホームに入るという選択をする必要がでてくるかもしれません。エリアやホームにより費用には違いがありますが、一般的に民間老人ホームに入るとなると、入居時の一時金の費用として500万円〜1,000万円、月額の費用は毎月20万円〜30万円程度かかります。

仮に80歳から90歳まで民間の老人ホームに入ると仮定して、入居一時金500万円、毎月20万円程度かかるとします。そうすると総費用は、2,900万円、上記の医療、介護費用と合わせて3,400万円必要になります。

特別支出も忘れてはいけない

他には、特別支出も気にしておく必要があります。特別支出の例としては、「家具・家電の買い替え」「固定資産税」「住民税」「自動車税」「家のリフォーム代」などがあります。特別支出は、老後の生活に限らず考えておく必要があります。特別支出に要するお金をあいまいにせずに、いつの時点でいくら必要なのかしっかりと「見える化」しておくことが大切です。また、老後も旅行を楽しみたい、趣味も楽しみたいとなると、その分の費用も考慮しておく必要があります。

ご相談者さんの場合、65歳の時点で、5,000万円以上の資産がある試算になっているので、特別支出を考慮しても、なんとか資産は持ちそうです。

老後に向けてインカム収入作りを!

とはいえ、仮に想定以上に長生きしたり、運用が思うようにうまくいかなかったり、アクシデントが起きたりしたら資金に余裕がなくなってしまうかもしれません。また、いくら資産があったとしても、資産を取り崩していく生活は、心細くなるものです。

ご相談者さんは個別株などにもご興味があり、資産運用の勉強にも前向きなようですから、ぜひ、退職後も引き続き資産運用も続けていきましょう。

また、退職後は、年金にプラスしてインカム収入があると安心です。インカム収入とは、株式からの配当金や投資信託の分配金、家賃収入など、保有している資産から定期的に入ってくる安定収入のこと。

例えば、株式で配当金を得てインカム収入を作るという場合、高配当株の利回りの目安は4%程度になります。仮に1000万円で利回り4%の株を保有すれば、受け取れる配当金は年間40万円になります。ただし、株式や投資信託は、元本価格が上下するリスクがあるため、どれくらいの資産を投資するかなど、資金計画もきちんと行なった上で投資するようにしましょう。

さらに、現在は激務で早く仕事を辞めたいという気持ちが強いと思いますが、一度退職してみると、また働いてみたいと思うかもしれません。週2回〜3回働くなど、少しでも収入を得ることができれば、経済的にも余裕が生まれます。今回のアドバイスを参考にぜひ、ご自身でもさまざまなパターンで考えてみてください。

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