マツダは2025年までが正念場! マツダの100%電動化宣言を成功させる鍵は2022年以降の大型モデルにアリ。

2021年6月17日にマツダは2022年以降に投入する新型CX-5などの大型モデルの概要を発表した。その中には今後投入するモデルを100%電動化し、まずはマイルルドハイブリッド、そしてプラグインハイブリッドを投入。そしてEVモデルをも市販化するという内容であった。ホンダやボルボが掲げた電動化宣言に比べるとかなり現実的な目標であったが、一体今後のマツダはどのようなビジョンを見据えているのか? 今回はマツダのこれからを分析するとともに、今後の行く末を見ていく。

マツダ CX-5

電動化モデルを2030年までに13車種投入予定も、ライバルに比べると少々弱い面も

マツダも遂にこういう物言いに踏み込んで来たか。いや、こういうことを言わないと世間も株主も納得しない時代になったとつくづく思わされた。2021年6月17日(木)の「マツダ中期技術・商品方針オンライン説明会」でのことだ。

マツダ6やCX-5といった大型モデルを2022年以降に投入予定で、全て電動化モデルとなるのだ

リリースでは小難しく、「マツダ サステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」に基づき、2030年に向けた新たな技術・商品方針を発表」とタイトル付けられてるので分かりにくいが、要は将来の電動化の目標値であり、商品ラインナップ戦略の発表だ。

さっくり言うと「SKYACTIV マルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」の商品として、ハイブリッドモデル5車種、プラグインハイブリッドモデル5車種、EVモデル3車種の計13車種を、2022年から2025年にかけてを日本、欧州、米国、中国、アセアンを中心に順次導入すると発表。

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ホンダやボルボに比べたらマツダの「2030年までにEV比率25%」宣言は少々弱い!?

さらにその結果「2030年時点での生産での電動化比率は100%、EV比率は25%」と言い切ったのがデカい。

ただし、それでもマツダらしく「25%を“想定”しています」という物言いに留まったし、ジャガーが2025年からフルEV化して「2030年までに100%にする」目標や、ホンダが「4輪車を2040年までに100%EVかFCVにする」目標に対して甘く見える。

ホンダは量産化したEVモデルは未だホンダeのみであるが、今後はさらに電動化にシフトしていく構えだ

この手の目標値は言ったモン勝ちみたいなところがあるので、サッカー少年が「将来俺はJリーガーになる」と言うのと「俺はワールドカップに出て優勝する」と言い切るのだったら後者の方が凄い気がするし、それは企業の場合なおさらそう。

その点、日本企業はつくづくビッグマウスが苦手で、中でもマツダが輪をかけてデカいクチを叩かない派だ。現実問題「マイルドハイブリッドを含め2030年までに100%電動化」は確実だし、EV比率25%も超現実的。ってか少なすぎるくらいの印象もある。

一部の欧州マーケットでは一時的に25%はすぐ超えるだろうし、とはいえグローバルだとそれくらいが妥当と見たのだろう。かつて「5%程度」って言っていたのに対して正常すぎる進化。時代なりという感じだ。EV推進論者からすると「マツダはまだまだ甘い」って見方になるのだと思う。

新開発の大型電動モデルは4年後から投入! それまでは既存の車種をベースに開発

2022年以降に投入する大型モデルは横置きから縦置きエンジンに変更され、電動化も図られる見込み。対してMAZDA3などの小型モデルは引き続き横置きエンジンとなるのだ

一方、筆者小沢とっては面白かったのは今まで培ってきたスモール商品群用の横置きパワーユニットに加え、ラージ商品群用の縦置きパワーユニットに対応した「SKYACTIV マルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」を展開するということ。そして2025年以降に独自のEV専用プラットフォーム「SKYACTIV EV専用スケーラブルアーキテクチャー」を新しく導入するという発表だ。

ぶっちゃけボルボが直4&直3エンジンに注力する中でもやっぱりマツダは直6&縦置きで攻めるのね! という事実への再確認と遂にEV専用アーキテクチャーを作るのはいいけど、それは4年後からか、という点。

2021年に投入されたMX-30 EVモデルと同様のプラットフォームを使ったEVモデルを当面は投入する見込み。

つまり25年までに導入予定の「EV3車種」は既存プラットフォームの延長で行くわけで、そこからのEV全力投球で大丈夫なのか? という心配は多少ある。会社の規模的に早期のEVガッツリ投資も厳しいのだとは思うけど。

なにより例え販売の25%でもEVは電池が安く入手できなければビジネスとして旨みがない。その点、国家的戦略が必要になると思う多少踏み込んだ回答があるとより完璧だった。

ドライバーアシスト機能など目新しい機能を搭載予定! その一方でコネクテッド機能に懸念事項も

新型レヴォーグなどで話題のハンズオフ機能は備えずに、ドライバーが意識を失った際などにクルマ自らが運転してくれるコ・パイロット機能などを2022年登場のモデルから採用する予定だ

それから人間中心の自動運転コンセプト「Mazda Co-Pilot Concept(マツダ・コ・パイロット・コンセプト)はユニークでいいが、次世代のクルマのスマホ化戦略が気になった。

次世代車載通信機をトヨタ、スズキ、スバル、ダイハツと5社で共通化するのはいい。ただし、クルマのスマホ化に繋がる、次世代電気電子アーキテクチャーに関しては「開発を推進します」とあるだけ。既にトヨタは新時代の自動車OSたる「アリーン」の開発を進め、部分的に導入している。

このほかOTA技術を含め、マツダはこの手を独自開発するのか。結局はトヨタのアリーンを使った方が早かったりするのではないか。ここ5年でEV化であり、クルマのスマホ化はさらに見えてくるだろう。

特に電動化ではなく、バッテリーEV化は物凄く将来的であり、見方に差がある。そこまで巨大バクチが打てない100万台メーカー。この戦略が上手くいってくれることを祈りたい。

【筆者:小沢 コージ】

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