「早くできた」と喜ぶ声も 長崎県内の大学・職場接種 課題多く

県内大学のワクチン接種実施・検討状況

 長崎県内の大学・企業での新型コロナウイルスワクチン接種が始まった21日、会場では「早く接種できた」と喜ぶ声が聞かれた。多くの大学や企業が実施に向け検討や準備を進めているが、医療従事者らのマンパワーや会場、費用、千人の接種規模の確保など越えるべきハードルは高いようだ。
 長崎国際大(佐世保市)では初日、180人が3グループに分かれ、時間をずらして受けた。九州文化学園高衛生看護専攻科2年の中島遥香さん(19)は「感染者が多いと病院で実習ができなくなる。早めに打てて良かった」。別の女子学生(20)は「思っていたよりも痛くなかった」と笑みを浮かべた。
 同学園グループ以外にも、市立看護専門学校や他大学の留学希望者らに接種予定。今後も学生から相談があれば、可能な限り対応するという。安東由喜雄学長は「行動半径の広い若者の接種が進めば感染拡大を抑え込める」と強調した。
 同市日宇町のジャパネットホールディングス(HD)本社1階ロビーでは、地域の医師1人と看護師3人が協力。当初1時間に50人の予約枠を用意したが混雑はなく、午後から75人に拡大した。永溪幸子執行役員は「大きなトラブルなくできた。接種率向上に貢献し、安全な生活に戻れたら」。接種を終えた取引先の建設関連会社の男性社長(47)は「仕事柄いろいろな場所に出向き、多くの人と会うので助かる」と話した。
 他の県内大学もほとんどが7月中の開始を見込む。長崎大(長崎市)の接種対象者は約2万人。学内だけでなく、長崎外国語大(同市)や鎮西学院大(諫早市)、企業の希望者も含む。県立大(佐世保市、西彼長与町)は県内高校の教職員も含め約1万3千人が対象。長崎総合科学大(長崎市)は近隣の小中学教職員にも拡大する方針だ。
 企業も動きだした。三菱重工業は長崎造船所でも「準備ができ次第、迅速に」実施する。三菱電機長崎製作所(西彼時津町)は7月中旬から関係会社を含めた千数百人規模で始める方向で検討中。ハウステンボス(佐世保市)も申請に向け調整している。
 クリアすべき課題は多い。県立大は地元医師会に人材面の協力を要請。十八親和銀行(長崎市)は「打ち手の確保や場所などを検討」した上でジャパネットHDの職場接種に合流を決めた。関連会社を含め約3500人が希望している。長崎バスグループ(同市)もジャパネットHDの接種に参加を検討中だ。
 長崎市内の長崎旅館ホテル組合は従業員計約2千人を対象に申請。28日の週から開始し、各事業者の産業医らが打ち手を担う。一方、居酒屋などが加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合は、離島を含む県内5支部がまとまって実施するのは物理的に「難しい」。同市内だけでも千人規模を満たせるか不明。医療従事者を確保できず、自治体の集団接種などを頼る。ひぐちグループ(同市)は約1600人の従業員がいるが、飲食やパチンコなど店舗が分散しており職場接種をするかは「未定」という。

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