東京五輪世代FW原大智がスペイン1部アラベスへ移籍する背景。大出世する歴代J3得点王!

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原大智 写真提供:Gettyimages

2021年2月からクロアチアリーグのNKイストラ1961に加入していた東京五輪世代のFW原大智が、8月開幕予定の新シーズン(2021/22)からスペイン1部のデポルティーボ・アラベスへ移籍することが内定した。

東京都日野市出身の原は現在22歳。191cm84kgの大型ストライカーで、高さと強さだけでなくスピードも兼ね備えており、ウイングとしてもプレーできる。Jリーグ在籍時から球際の強さが印象的なタフなFW選手だ。


デポルティーボ・アラベス(左)NKイストラ1961(右)

アラベスとイストラの関係:世界で唯一のバスケチームが運営するフットボールクラブ

原の移籍先となるアラベスは、元日本代表MF乾貴士も2019年1月から半年間在籍したクラブ。スペイン北部バスク自治州の州都ビトーリアに本拠を構え、来季は6年連続でスペイン1部(ラ・リーガ)で戦う。

そんなアラベスは、世界初のプロバスケットボールクラブをオーナーに持つフットボールクラブでもある。スペインは、日本が5戦全敗に終わった2019年のFIBAバスケットボール・ワールドカップで優勝した強豪国。そのスペインバスケの国内リーグ「リーガACB」の強豪サスキ・バスコニアが、2011年にアラベスを買収した形だ。当時3部相当のセグンダBに降格し、財政危機に瀕していたアラベスをは、以降、サスキ・バスコニアをヨーロッパのトップクラブに育て上げた大株主ホセアン・ケレヘタ氏率いる「バスコニア=アラベス・グループ」が経営している。

そしてバスコニア=アラベス・グループは2018年6月、「クロアチアは世界で最もタレントの発掘率が高い国」との考えから、原が所属することになるNKイストラ1961を買収した。原はイストラで公式戦18試合の出場で8ゴールを挙げたが、リーグでは14試合2ゴールのみ。つまり、この路線があるからこそ、アラベスが獲得した選手である。

ちなみにアラベスは鹿児島ユナイテッド(J3)とも提携しており、日本市場も開拓しつつある。今後も日本のサッカーファンが注視していくべき“やり手クラブ”だ。


スピード兼備の大型FW原の無限大のポテンシャル

そんなアラベスへ加入する原は、中学校入学のタイミングからFC東京U-15むさしへ入団し、高校年代はFC東京U-18へ昇格。高校3年時にはFC東京U-23の一員として明治安田生命J3リーグでJリーグデビューし、18試合出場5ゴールという結果を残す。高校卒業のタイミングである2018年からFC東京のトップチームへ昇格したものの、明治安田生命J1リーグでのデビューの機会はプロ3年目の昨年まで訪れなかった。

プロ入り後に苦戦した理由としては筋力トレーニングの徹底により体が重くなってしまったと自己分析し、以降は力まずに自由自在に体を使えるようにする「ゆるトレ」を導入して成功。2019年にはJ3リーグで31試合に出場して19ゴールを挙げ、見事にJ3リーグの得点王に輝いた。

昨年デビューしたJ1リーグでは26試合に出場したものの、先発出場は4試合のみ。プレータイムは629分間に終わり、3ゴールという結果も実績を残したとは言えない。それでも7試合分にしか満たない時間で、26本のシュートを記録していることが凄まじい。それもトップチームでの出場はほぼ右ウイングか試合終盤のパワープレイ要員に限られる中での記録である。1試合平均約4本のシュートを放ち、スピードも兼備する191cmの大型ストライカーはポテンシャル抜群である。

香川真司(左)とフッキ(右)写真提供:Gettyimages

大出世組はJ2得点王からJ3得点王へ傾向変化?

それにしても、近年はJ3得点王の出世が目立つ。かつては元日本代表MF香川真司(現PAOKテッサロニキ)や元ブラジル代表FWフッキ(現フルミネンセ)らを筆頭とした若手がJ2得点王の肩書を引っ提げて、いきなり海外のビッグクラブやJ1で大活躍するケースが目立った。

関連記事:J2得点王は出世コース?香川&フッキ輩出時代からの傾向変化とは

しかし、上記の記事内でも言及したように、2014年にJ3が創設されたことから、J2には2012シーズンから降格制度が設けられ、若手よりも代表経験が豊富なベテラン選手の活躍が目立つリーグになって来た。もちろん、未だに海外クラブから青田買いされる若手もいるのだが、ことJ2得点王に限れば、1999年に創設されたJ2では2013年に初めてケンペス(2016年にシャコペエンセの飛行機墜落事故で他界)が30代でJ2得点王に輝いて以降、大きな変化があった。2012年までのJ2得点王の平均年齢は25.36歳だったものが、2013年以降は31.13歳と一気に6歳も繰り上がっているのだ。

現在はかつての“若きJ2得点王時代”の役周りをJ3得点王が担っているのかもしれない。下記に2014年に創設されて以降のJ3得点王を列記した。現在創設8年目のJ3だが、すでに過去7シーズンのJ3得点王のうちの2人は海外移籍を果たし、4人がJ1を経験している。

歴代J3得点王

年度/選手名(当時所属チーム)/出場試合/得点数/当時年齢

  • 2014年:鈴木孝司(FC町田ゼルビア)/33試合/19ゴール/当時25歳
  • 2015年:岸田和人(レノファ山口FC)/34試合/32ゴール/当時25歳
  • 2016年:藤本憲明(鹿児島ユナイテッドFC)/27試合/15ゴール/当時27歳
  • 2017年:藤本憲明(鹿児島ユナイテッドFC)/30試合/24ゴール/当時28歳
  • 2018年:レオナルド(ガイナーレ鳥取)/31試合/24ゴール当時21歳
  • 2019年:原大智(FC東京U-23)/31試合/19ゴール/当時20歳
  • 2020年:谷口海斗(ロアッソ熊本)/34試合/18ゴール/当時25歳

J3得点王の出世は“ワンクッション”が必要だが、成功率が高い!

しかし、さすがに国内3部リーグから直接大舞台に羽搏けるほどに世間は甘くもなく、全員がその間に“ワンクッション”となるJ2などでステップを踏んでもいることが共通しているので、順番に見て行きたい。

J3創設1年目の得点王である鈴木孝司(現アルビレックス新潟)と2年目の岸田和人はJFL時代から在籍するクラブでJ3得点王に輝き、以降も同じクラブに在籍してクラブのレジェンドとしてプレー。鈴木に限っては、2019年のFC琉球(J2)でのブレイクから2020年のセレッソ大阪(J1)へのステップアップ移籍を勝ち取っている。ちなみに鈴木と岸田は2013年と2014年は町田ゼルビアのチームメイトとしてポジションを争うライバルでもあった。

現在J1のヴィッセル神戸でプレーする藤本憲明は、近畿大学を卒業後にアマチュア契約選手として当時のJFLに所属していた佐川印刷SCに加入。2016年から鹿児島ユナイテッドで2年連続のJ3得点王に輝き、J2大分トリニータでのJ1昇格と、J1昇格初年度での大躍進から、現在神戸での好条件の待遇を勝ち取った。

レオナルド(現山東泰山)は2018年に加入したガイナーレ鳥取でJ3得点王を獲得し、翌年は新潟でJ2でも得点王を獲得。2020年には浦和レッズにステップアップし、J1で11得点。現在は中国で高額な年棒を手にしてプレーしている。また、昨年ロアッソ熊本でJ3得点王に輝いた谷口海斗は、現在J2で首位を争うアルビレックス新潟の右ウイングとしてレギュラーを張り、ここまで18試合出場6得点。来季J1昇格を目指して順調にステップアップしている。

一方、2019年のJ3得点王である原は、当時J3に籍を置いていたFC東京U-23でプレーしていたため、彼等とは少し違ったステップを辿った。J1でのレギュラー経験はないが、2018年の末から鹿児島と提携していたアラベスが情報を持っていて、アラベス主導により配下のイストラが“ワンクッション”の場となり、スペイン1部アラベス移籍を勝ち取ったのだろう。

J3得点王の大出世は多い。確かに“ワンクッション”を挟むが、最初のステップ先でも成功を収める確率が非常に高い。J3は月給5万円Jリーガーやアマチュア契約選手も多い環境を問題視されることが多々あるが、世界へと進出できる可能性も持ち合わせている証明だろう。原のスペイン1部への移籍は、J3リーガーたちの夢や想いも乗せている。

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