景気回復。設備投資、コロナ支援融資を背景に前倒し。製造業で7割超えの企業が計画

 日本のマクロ経済は回復傾向で推移している。コロナ禍で個人向け消費が低迷する中、中国経済の反動的回復に支えられた製造業やアフターコロナをにらんだDX関連IT投資を中心にマクロ経済は持ち直し傾向が持続している。景気循環の中で最も景況を感じさせてくれるのは約10年のサイクルで起こる設備投資循環だ。2000年代の小泉政権時代での好景気、10年代の安倍政権時代での長期拡張が設備投資循環に支えられたものであったが、18秋の景気後退局面入り後の現在、コロナ支援を契機に2020年代の設備投資循環が前倒しで始まりそうな兆しが見える。

 5月19日、帝国データバンクが「2021年度の設備投資に関する企業の意識調査」の結果レポートを発表。これによれば、21年度に設備投資を行う計画が「ある」と回答した企業の割合は約6割にあたる58.0%、前年20年4月の調査時の52.8%から5.2ポイントの増加となった。規模別に見ると、大企業(69.7%)、・中小企業(55.6%)を問わず全ての規模で前年比増加となっており、特に大企業での伸び幅の大きさが目立つ。業界別に見ると、やはり中国等の外需に支えられた「製造業」が70.1%と7割超で突出しており、前年の増加幅は9.2ポイントの増加と最も高くなっている。また、EC堅調を背景に「運輸・倉庫」も69.1%と堅調だが伸びは大きくない。

 設備投資の内容を見ると、「設備の代替」が41.0%で最多。次いで「既存設備の維持・補修」33.2%、「IT化関連」30.3%、「省力化・合理化」27.8%と続いており、更新投資が主流で、やはり設備投資循環の兆しと見てよいだろう。主な資金調達方法は、「自己資金」が43.2%で最も高く、金融機関からの借入れは長・短期を合わせて3割超で、自己資金と金融機関からの借入れが資金調達の大部分を占めている。設備投資予定額は平均1億2572万円となった。

 新型コロナ支援策としての特別融資によって積極的に設備投資を行うという企業も少なからず見られる。しかしこれは一方で。今後の返済を見越して設備投資を躊躇させている要因にもなっている。設備投資を行わない理由としては「先行きが見通せない」55.0%が最も多くなっているものの、前年からは9.4ポイントと大きく減少した。レポートでは、今後の動向として「企業では手元資金を厚くする動きもみられるなか、資金の使い道が設備投資に向けられるかが注目される」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)

帝国データバンクが21年度の設備投資に関する企業の意識調査。21年度に設備投資計画ある企業は58.0%で前年比5.2ポイント増

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