「メリーアン」ライブでのA.Gt演奏に革命を起こしたアルフィーの金字塔

アリス「チャンピオン」秘話は編集後記で

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シンガーソングライターの松崎真人が、'70~'90年代の日本の曲・日本語の曲を中心に"厳選かけ流し"(イントロからアウトロまでノーカット)でお届けするSTVラジオ『MUSIC☆J』。今週は19時台で、アコースティック・ギター(アコギ)がロック・サウンドの中でどう活かされているか、という視点でセレクトした名曲を特集しました。

松崎:曲目は先に言っちゃいますが、超有名曲、アルフィーの「メリーアン」をかけますが、間奏で坂崎さん(坂崎幸之助)がアコースティックギターのソロを4小節とるんですが、それに続いて高見沢さん(高見沢俊彦)のエレキソロなんですが、1983年当時は非常に革命的な音でした。内容については、聴いてから説明します。

M12「メリーアン/アルフィー」

松崎:アルフィーを今の「THE ALFEE」に押し上げた金字塔ですよね。当時『ザ・ベストテン』でも中盤の坂崎さんが先に♪ジャ~ン・ジャジャジャ・ジャ~ン・ジャジャ~ンと弾いてからドラムが入って、高見沢さんのソロに行くという場面があるんです。ステージからの中継が『ザ・ベストテン』でありましたけど、あの大きなPA(舞台音響装置)で、あの音圧を出してて、途中でギターだけ、あんなにソロのボリュームを上げたら、従来のアコースティックギターならハウリングというものが起きて「ブウォ~」という音が起きて、放送上、使い物にならなくなかったはずなんです。

松崎:それが当時、「高峰」(岐阜にある日本を代表するギター製作会社)というメーカーが、「パラスティック」というピックアップシステム、つまりピエゾという原理(編注:楽器の振動を、本体から圧力として感知する圧電素子を使って電気信号に変えること)を利用して、アコースティックギターの弦の音をブリッジ、手でかき鳴らしてる方の真下で拾う方式のピックアップで、しかも生音の再現度のかなり高いものを開発しまして、されを坂崎さんはプロトタイプ(試作品)で持ってたんですね。

松崎:しかも、普通ギターって「単板」で出来ているモノがいいと言われているんですが、この時の「高峰」は、わざと「合板」で作ってあって、それもハウリング防止のためでした。つまり、ギターの「胴」がわざと鳴らないようにして、ハウリングを防いでいるというワケですね。なので、なんでこんな音がステージ上で再現できるのか不思議だったんですけど、自分で坂崎さんと同じ種類のアコギを買ってみて弾いてみたら「ホントだ!ハウらない」と、あの時の感動は忘れられないですね。いまの若い子は、当たり前にこういうモノを5万円、6万円で手に入れられるので、いい時代になったと思うんですが。

松崎:その3年後(1986年)ですが、次もアコギの使い方がスゴく僕は好きな曲なので、聴いて下さい。

M13「BAN BAN BAN/KUWATA BAND」

松崎:Cメロに行く前の、大サビに行く前のアコースティックギター、たった1小節ですが、すごい効果的だなって思って聴いていました。これがスタジオ録音なので多分、普通のギブソン系のギターで弾いているんだと思いますが。

松崎:次は、アコギがまた別の使い方をされています。PSY・Sです。きょうは超メジャー曲をかけます。

M14「Lemonの勇気/PSY・S」

松崎:けっこう印象的に鳴らしているスチール弦のアコースティックギターと、それを縫うようにポロポロっと弾いているガットのギターがあるんですけど、これは当時は分からなかったんですけど、どうやら全部、サンプリングです。フェアライトという、今のパソコンミュージックのご先祖様みたいな、数百万円する、数百万じゃきかないか、その機械に演奏したアコギのコードなりを取り込んで、それをベンドと言うのを使って音程をズラしているので「ビヨ~ン」って上がる感じの、まるでアーミングしているかのようなアコギの音が出るわけなんです。

松崎:のちにPSY・Sのビデオを見てたら、ほぼライブのバンドの中にはアコースティックギターの演奏者はいませんでしたので、バックで、同期で走らせているレコーディングと同じ音ってことで。生で人間が弾いているものではなくて、一回、それを機械に取り込んで、サンプリングですが、加工して使っているということでした。ちょっと易しめに説明してみました。

ライブやレコーディングを支える、音楽業界におけるテクノロジーの進化の一端を"松崎節"で解説しました。理系のココロのある方にはとても興味深い話ですが、まるで文系の方にはお経か呪文のようにチンプンカンプンだったかも知れません。

そして、先日亡くなられた小林亜星さんを偲んで、アニソンを中心に亜星さんの作品を数曲、お掛けしました。いつもは、かつての土曜の夜にゆかりのある曲が多いMJですが、きょうばかりは日曜の夜を思い出した方は、立派なアラフィフです。それにしても、ガッチャマンを語った時の松崎のテンションの高かったこと…。ドヤ顔だったんでしょうねぇ。

M32「The Very Thought Of You/シリア・ポール・大瀧詠一」(LIVE)も、特にアラフィフには必聴です!

【6月19日のプレイリスト】(すごいぞ!全35曲!!)
M01「まっ赤な女の子/小泉今日子」
M02「ギザギザハートの子守唄/チェッカーズ」
M03「LOVE IS CASH/レベッカ」
M04「VIRGIN BEAT/氷室京介」
M05「Sunny Day Sunday/センチメンタル・バス」
M06「Don’t Stop Passengers/PINK」
M07「DIVE TO BLUE/L'Arc-en-Ciel」
M08「さよならと言われて/松本典子」
M09「テディーボーイ・ブルース/石野陽子」
M10「サクセス/ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」
M11「イミテイション・ゴールド/山口百恵」

M12「メリーアン/アルフィー」
M13「BAN BAN BAN/KUWATA BAND」
M14「Lemonの勇気/PSY・S」
M15「Free World/LOVE PSYCHEDELICO」
M16「チャンピオン/アリス」
M17「銀河のロマンス/ザ・タイガース」
M18「それはキッスで始まった/ジャッキー吉川とブルーコメッツ」
M19「雨にキッスの花束を/今井美樹」
M20「寺内貫太郎一家のテーマ/井上尭之バンド」
M21「すきすきソング/水森亜土」
M22「ターンAターン/西城秀樹」
M23「ガッチャマンの歌/子門真人」

M24「スターダスト・キッズ/佐野元春」
M25「So Young/山下久美子」
M26「Lion Heart/岡村靖幸」
M27「好きになって、よかった/加藤いづみ」
M28「HAPPY HAPPY BIRTHDAY/DREAMS COME TRUE」
M29「Breakout/Swing Out Sister」
M30「雨のち晴れ/Mr.Children」
M31「赤いハイヒール/太田裕美」
M32「The Very Thought Of You/シリア・ポール・大瀧詠一」(LIVE)
M33「FUN×4/植木等」
M34「マスカレード/安全地帯」
M35「DOWN TOWN ラプソディー/EPO」

<松崎真人の編集後記>
「チャンピオン/アリス」この曲の誕生譚については、リスナーの「グリーンマスター」さんに教えていただくまで知らなかった。中学生だった僕は、アリスとして苦難の末にトップ・スターにまで上り詰めた谷村新司が、勝利の美酒に酔いしれる一方で、ある種の虚脱感も感じており、より若く新しい音楽にトップの座を譲る日を予感して書いた詞なのでは?と解釈していた。全くのはずれだったわけだ。この週末は沢木耕太郎「一瞬の夏」を読み返してみよう。
松崎真人

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MUSIC☆J

放送局:STVラジオ

放送日時:毎週土曜 18時00分~21時00分

出演者:松崎真人(まつざき・まこと):シンガーソングライター(北海道出身)

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70年代~90年代の日本のポップス・日本語のポップスを中心に"厳選かけ流し"でお届け。パーソナリティは、北海道出身のシンガーソングライター・松崎真人。音楽への深い造詣と知識に裏打ちされた含蓄あるトーク、選曲の幅広さでリスナーの支持を全国に広げている。松崎の"微妙な滑舌"も病みつきになるかも。(ナイターオフ期は、火~金19:00からで、広島・RCCラジオでも同時ネット)。

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