クイーンのブライアン・メイ、92年の初のソロ作がリマスター&2CDで発売決定

ブライアン・メイが1992年に発売した初のソロ・アルバム『Back To The Light(邦題:バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~)』が2CD、1CD、LP、2CD+1LPのコレクターズ・エディションなどで2021年8月6日に発売されることが発表となった。国内盤は2CDと1CDでの発売で、また日本盤2CDのみ1993年のブライアンのソロ来日公演時のパンフレットのミニチュア[全20ページ]の封入も決定)。

1CDの本編はブライアン本人監修のもと、ボブ・ラドウィックがオリジナルのマスターテープから新たにリマスタリングした12曲が収録され、CDは6面デジパック仕様で、貴重な写真やアルバム解説を含む24ページのブックレット付き。『Rarities (Out of The Light)』と名付けられたCD2、オリジナルの別ヴァージョン、B面曲、ライヴ・トラックなど全11曲が収録となる。本アルバムではブライアンが殆どの楽器を演奏している一方、コージー・パウエル、ディープ・パープルのドン・エイリー、クイーンのジョン・ディーコンらがゲストとして参加。

<告知映像:Brian May – Back to the Light>
 

「好奇心をそそるオマケが盛り沢山の、ブライアン・メイ再発シリーズはいかがかな?」

クイーンの伝説的ギタリスト、ブライアン・メイが、自身のインスタグラムでそう問いかけたのは2020年のことだ。「今、計画を立てているところなんだ!!!」と。そして今回、ブライアンの傑作ソロ・デビュー・アルバム『Back to the Light』が待望の復刻を果たし、その計画の第一段階が実現することとなった。発表から約30年が経つ『Back to the Light』は、同世代のギタリスト/ソングライターの中でも最重要な一人であるブライアンの才能と、彼の不屈の精神の証として存在する、個人的かつ多角的な作品だ。

1992年9月の発売当時、『Back to the Light』は文句なしの大ヒット作であった。全英アルバム・チャートで6位を記録した同アルバムは、不朽の名シングルを次々と輩出。「Driven by You」(*1991年11月発売)が全英シングル・チャート6位にランクインした後、1992年4月にウェンブリー・スタジアムで開催された〈フレディ・マーキュリー追悼コンサート〉でクイーン・ファンに披露され、感動的なパフォーマンスが話題を呼んだ「Too Much Love Will Kill You」は、全英5位を記録した。さらに壮大なタイトル・トラック「Back to the Light」と、陽気な「Resurrection」も全英シングル・チャート入り。また、インストゥルメンタル曲「Last Horizon」は、ブライアン・メイ・バンドのソロ・コンサートのみならず、後にクイーンとして復帰を果たしたブライアンのライヴ定番曲となっている。

ある時はロック調、またある時は思索的なこれらのシングルが伝えているのは、アルバム本体が持つ深みと広がりだ。冒頭を飾る「The Dark」は、クイーンの「We Will Rock You」を内省的に再構成。その後、次第に音量を増し、シンフォニックなクライマックスへと到達していく。それに続く力強いアルバム表題曲「Back to the Light」では、多重録音したヴォーカル、幸福感に溢れたコーラス、そしてザクザクと鳴り響くギターが整えた舞台の上で、メイの本領が存分に発揮されている。

次の「Love Token」は、別れの物語をブルース・ロックに乗せて描いた、ブライアンによる“ママとパパの歌”[*家族を題材に両親の夫婦仲を歌った曲]の一つだ。「Resurrection」は、ドラマーのコージー・パウエルとの共作曲で、キーボードには敬愛するロック・ミュージシャン、ドン・エイリーを起用。煌びやかでハイエナジーなこのロック・ナンバーには、恐らく「Bohemian Rhapsody」と同じくらい多重的なオペラ調のオーバーダブが施されている。離れ業と言うべきメイのギターと、華々しくも凄まじいパウエルのドラムがフィーチャーされたこの曲を、本アルバムで最も傑出した曲だと評する人は数多い。歌詞の内容は個人的な体験に基づいており、そこに描かれているのは、心に悩みを抱えながらも、“未来の約束”に希望を見出そうという決意である。

自身の人生でレコーディングした曲のうち最も重要なものだとブライアンが語る「Too Much Love Will Kill You」は痛切な告白の歌だ。同曲は、優れた作曲家に与えられるアイヴァー・ノヴェロ賞(最優秀作詞作曲・楽曲部門)を受賞。後にクイーンの曲として別ヴァージョンが発表された。

「Driven By You」は、聴き手を鼓舞するコーラスが印象的な耳に快いロックで、車のテレビ・コマーシャル用の曲をフォード社から依頼され、ブライアンが引き受けた結果出来上がった曲だ。この曲でのブライアンのヴォーカルを賞賛したのは、ほかでもないフレディであった。

胸が張り裂けるような思いをさせる「Nothin’ but Blue」は、コージー・パウエルとの共作名義で、彼のアルバム『The Drums Are Back』に収録されている「Somewhere In Time」の姉妹曲。この曲をブライアンが書いたのは、フレディ・マーキュリーが亡くなる前夜のこと。ゲストとしてクイーンのジョン・ディーコンがベースに特別参加している。

浮かれ騒いだ雰囲気の「I’m Scared」では恐怖心を吐露している一方、「Last Horizon」では表情豊かなギター・ワークで安らぎを得ようとしているブライアン。また、スキッフル界のスター、ロニー・ドネガンのために書いた「Let Your Heart Rule Your Head」では、朗らかなメロディを容易く操れる様を彼流に証明している。「Just One Life」は、今は亡き愛する人への哀悼の意を表した胸を打つ曲だが、ブライアンが実際には一度も会ったことのない相手――追悼番組や記事等でその生涯が称えられた際に初めて知った人物――について書いた曲という点で非常に珍しい。

最後を締め括るのは、本アルバム唯一のカヴァー曲であるスモール・フェイセスの「Rollin’ Over」だ。喜びに満ちたこの曲では、ブライアンの初期のロック・ルーツが再現されている。

アルバム『Back To The Light』の全体を通じて展開されている味わいは実に多彩であり、ブライアンの曲作りがクイーンにとっていかに重要であったかを再認識せずにはいられない。クイーンでブライアンが作曲した楽曲の中でも、すぐに彼だと分かる聴き間違えようのないギター・ワークに加え、「Save Me」のようなバラードや、「The Prophet’s Song」での複数の楽章から成る叙事詩から、「Flash」の映画のテーマ曲、「Sleeping on the Sidewalk」でのブルージーなワーク・アウト、そしてもちろん、足で踏み鳴らす強烈なリズムが特徴的なライヴの支柱「We Will Rock You」をはじめとする、数々のパワー全開なロック・ナンバーに至るまで、ブライアンのソングライティングは多岐に亘っている。

ソロ・アルバム『Back To The Light』の収録曲は、ブライアンが個人的な激動の渦中にあった1988年から1992年にかけて書かれたもので、カタルシスに満ちた率直さと芸術性を伴ったこのアルバムにより、ブライアンにスポットライトが当たることとなった。本作が発表されたのは、ブライアンが自身の父親とフレディ・マーキュリーを亡くし、バンドの活動を一時的に休止していた時のこと。また、それに続いて最初の妻と1988年に別居し、女優アニタ・ドブソンと交際を始めたことにより、タブロイド紙の注目を否応なく浴びるという状況にもあった。こうした人生の変化に伴う苦悩についてインタビューで語ったブライアンは、本アルバムを一種のセラピーだったと表現している。

このアルバムの制作にあたり、彼は友人や名高いコラボレーター達の協力を仰いだ。ジョン・ディーコン、コージー・パウエル、ドン・エイリーに加え、ベースにはニール・マーレイとゲイリー・ティブス(アダム&ジ・アンツ、ロキシー・ミュージック)が、ドラムにはジェフ・ダグモア(「Let Your Heart Rule Your Head」「Rollin’ Over」)が参加しており、また、マイク・モランが3曲でピアノ/キーボードを提供。ヴォーカルには、イギリスの著名歌手クリス・トンプソンが「Rollin’ Over」でアシストに加わっている他、ミリアム・ストックリー、マギー・ライダー、スージー・オリスト、ジル・オドノヴァンが、随所でバッキング・ヴォーカルを披露している。

コージー・パウエルとブライアン・メイ © Duck Productions Ltd

CD盤、アナログ盤レコード、デジタル配信のいずれでも、本作は長らく入手不可能な状態にあった。今回の待望のリイシュー版で音響監督の任に就いたのは、ジャスティン・シャーリー=スミスとクリス・フレドリクソンだ。オリジナル盤のライナーノーツでブライアンは、シャーリー=スミスについて、「僕の気まぐれなレコーディング習慣に付き合ってくれた」共同プロデューサー兼エンジニアとして紹介。1984年からクイーンと仕事をしているシャーリー=スミスは、「ブライアンは完璧主義者で、自分の満足がいくまで、何事も決して途中で放り出したりしないんです」と、語っている。

サウンド・エンジニアのフレドリクソンは、そういった完璧主義を今回のリイシューに反映させたいと考えた。「しばらく入手不可能だったものを今回リイシューするのであれば、世界最高のマスタリング・エンジニアにリマスターしてもらってはどうだ?と、僕らは考えたんです」と、彼は述べている。そこで登場したのが、グラミー賞受賞者のボブ・ラドウィックだ。彼はオリジナルのマスターテープからフラットなミックスを復元、それを基に今回の『Back To The Light』のニュー・エディションに取り組み、これまで以上に素晴らしいサウンドになるよう仕上げた。

一方、フレドリクソンは、CD2枚目の『Out of the Light』 に収録するボーナス・トラックを手に入れるため、広く網を張り巡らせた。心に響く「Nothin’ But Blue」「Too Much Love Will Kill You」「Just One Life」のインスト・ヴァージョンでは、ブライアンのレッド・スペシャルの音色が雄弁に心情を物語っている。

さらに「Driven By You」のインストの「Driven By You Two」と、フォードCMヴァージョンの「Driven By You」、そして「Driven By You – Cozy and Neil Version ’93」という別ヴァージョン3つを、その他の様々な曲のライヴ音源と共に収録。

ライヴ・ヴァージョンの「’39 / Let Your Heart Rule Your Head」「Last Horizon」「We Will Rock You」は、ブライアン・メイ・バンドとして1993年6月15日に行われ、大成功を収めた英ロンドン・ブリクストン・アカデミー公演で収録されたもので、そのライヴの模様はアルバム『Live at the Brixton Academy』やビデオでもリリース。ブライアン・メイ・バンドには、パウエル、スパイク・エドニー、ジェイミー・モーゼス、ニール・マーレイ、そしてバッキング・ヴォーカルにキャサリン・ポーターとシェリー・プレストンが参加していた。

また、「Too Much Love Will Kill You」のライヴ・ヴァージョンは、1993年4月6日にロサンゼルスのパレス・シアターで録音されたものだ。その前夜、ブライアンとスペシャル・ゲストであるガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュは、米NBCの人気番組『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ』に出演し、クイーンのライヴ人気曲「Tie Your Mother Down」で共演。曲の途中でブライアンは、「ようこそ、Mr.スラッシュ」と、彼を紹介し、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリストであるスラッシュは、メイが何世代にもわたって影響を与えて続けている存在であることを改めて世に知らしめた。

今回のリイシューを記念して、2CD+1LPの『Back To The Light』のコレクターズ・エディション・ボックス・セットが併せて発売される。この豪華セットには、ボックス・セット限定のカラー盤(白)LPレコード1枚と、2枚組CDに加え、32ページの別冊本、12インチのアートプリント、ダウンロード・カード、エナメル・バッジが付属。この全てが蓋付きの箱に収納されている。海外のQueen Online Storeでは、このボックス・セットにサイン入り12インチ・アートプリントが付いた限定版(1,000枚)も購入可能だ。

また、同アルバムは、高音質180g重量盤のLPレコード(1枚)、CD1枚の通常盤、CD2枚組のデラックス盤、カセット・テープ、デジタル・フォーマットでも発売され、『Out Of The Light』はボックス・セット、CD2枚組、及びデジタル・フォーマットで入手可能となっている。なお、Queen Online Store限定で、ピクチャー・ディスク(LPレコード1枚)の限定盤も発売予定だ。

『Back To The Light』は、あらゆる面において、熱意と立ち直る力、高揚感と感受性を備えたアルバムとして、堂々と屹立している作品だ。「僕の心の中で、このアルバムはずっと『光にむかって(Back to the Light)』という名で呼ばれていた」と、ブライアンはオリジナル盤の解説の中で記していた。「制作当初は、光を見つけることが出来るのかどうか、全く希望が持てそうにないと感じていた。だが、今は、鏡に囲まれた広間の中で、常に途切れ途切れではあるものの、薄ぼんやりとした光が、こちらを励ますかのように微かにちらついている」。

発表から約30年を経た現在、ブライアンが書き下ろした新たなライナーノーツには、偉大なる故コージー・パウエルへの感謝と共に、このアルバムに記録されている探究についての考察が綴られている。

「2021年、誇りと懐かしさを込めて、新たな聴き手のみなさんにこの作品をご紹介しよう。オリジナル盤のライナーノーツを注意深く読み返した上で伝えられるのは、この一連の曲の中で投げかけていた殆どの問いに対する答えを探そうと、僕が今もなお、探求の旅を続けているということだ。今日に至るまで、その“光”はまだ、焦ったいほどに、いつもほんの少し手の届かない所で、暗く微かにちらついている。僕らが乗り切ることが出来るのは、音楽のおかげなのだ」

率直な感情と、壮大な曲調、ロックン・ロールの活力、そしてワールドクラスのギター・ワークで彩られた『‘Back To The Light』は、これからも輝き続けていく。

Written by uDiscover Team

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Photography by Richard Gray

ブライアン・メイ コメント

このアルバムは、一連のシリーズの一部。つまり、“ブライアン・メイ・ゴールド・シリーズ”の一部だ。各作品に、小さな金印が押されることになる。そしてきっとその一つ一つが、これまで僕が旅してきた道程を再発見する機会を与えてくれるだろう。このことが僕にとって本当に魅力的だと思えたんだ。 僕の中のどんな記憶が掘り返されるのだろうか?と思いながら、最初は少し緊張した。けれども、そこに立ち返ることを心から楽しんだんだ。これまでこの作品を聴いたことのなかった人達に届けばいいと、ひたすら願っているよ。僕はクイーンのギタリストとして知られている。天文学者として、僕を知っている人もいる。動物の権利を主張する活動家として知る人もいる。僕は、ヴィクトリア時代における立体鏡学の熱烈な唱導者のような存在だ。でも、僕のソロ作品を聴いたことがある人はほとんどいなかった。だから、これを出したらどうなるか、成り行きがとても楽しみだ。このアルバムを作った当時に立ち返り、ある特定の題材について、なぜ自分がそれを書いたのか、その理由を再発見することに僕は非常に興味をそそられた。それが僕にとってどんな意味を持っていたのか。僕らがそれをどんな風にレコーディングしたかのか。中には、あまりに圧倒的なレコーディング作となっていて、自分達がやり遂げたとは思えないほどのものもある――何曲かは、本当に壮大だ。そこを気に入っているよ。また、同時に、とてもシンプルで、すごく控えめで、感情が露わになった、小ぢんまりとした曲もある。このアルバムの中で訴えていることの多くは、僕が今も感じていることだと気づいたんだ。僕は今もそういった、危険や、恐怖、希望、夢を感じている

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ブライアン・メイ『Back To The Light』
2021年8月6日発売

© ユニバーサル ミュージック合同会社