巨人新戦力〝最後の生き残り〟 戦列復帰の梶谷にかかる悲壮な期待とは

ベンチで坂本(右)と談笑する梶谷に球団は…

反撃ののろしとなるか――。巨人は22日のDeNA戦(金沢)に6―1で快勝し、3連勝を飾った。3ラン2発の快勝劇となったチームには、左脚負傷から約1か月ぶりに梶谷隆幸外野手(32)も加わった。「6番・右翼」で先発出場し、左前打。今後は打線強化へフル回転が求められるが、昨オフの補強組の一人として球団の威信にかかわる別の期待もかけられている。

危なげない試合運びだった。2回に1点を先制されたものの、3回に丸の6号3ランであっさり逆転。4回にはプロ4年目で初の地元凱旋となった北村に今季1号3ランが飛び出して一気に試合を決めた。

そんな快勝劇の中で、もう一人の〝主役〟が5月23日の中日戦(バンテリン)の守備中に「左太もも裏の違和感」で離脱し、この日から一軍復帰した梶谷だ。結果は4打数1安打ながら右翼守備もそつなくこなし、原辰徳監督(62)は「いいスタートを切ったと思います」と安堵の表情を浮かべ「今日は走力に関しては『70%くらいでやってくれ』とあえて言わせてもらった」と明かした。

梶谷が全快モードとなれば、打線の厚みはさらに増す。その今後の活躍ぶりには球団側も別の視点から注視している。梶谷が昨オフの補強で獲得した新戦力で、唯一と言っていい〝生き残り〟だからだ。

2021年シーズンに向けて、巨人が新たに迎え入れたのはFAの梶谷と井納翔一投手(35)、新外国人のジャスティン・スモーク内野手(34)とエリック・テームズ外野手(34)の4選手。ところがテームズは4月のデビュー戦でいきなり右アキレス腱断裂の重傷を負い、今季中の復帰は絶望的。スモークは新型コロナ禍の影響から家族の来日がかなわない状況で契約解除を直訴し、そのまま電撃退団となった。原監督がベストオーダーを組めたのは、両助っ人がそろい踏みした4月27日のヤクルト戦(神宮)の試合開始後1時間足らずだった。

井納は先発でも中継ぎでも結果を残せず、長らく二軍調整が続いている。4選手が〝壊滅状態〟となった理由や背景はさまざまだが、故障離脱に見舞われた梶谷は現状で唯一戦力として見込める男だ。それだけに球団内からは「梶谷にはそういう意味でも頑張ってもらわないと立つ瀬がない」との声も漏れている。裏を返せば、想定を大幅に下回る戦力で2位につけられているのは大健闘とも言えるが…。

ひとまず復帰初戦を終えた梶谷は「1本は出したいなとは思っていたので。まずひと安心かな。体の方も」と胸をなで下ろした。一方で、梶谷と入れ替わるように東京五輪の侍ジャパンメンバーに内定しているリリーフエース・中川が「左背部の痛み」で出場選手登録抹消となった。梶谷は再び暗雲が垂れ込め始めた投手陣を攻守で助け、球団の汚名をもすすげるか――。

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