県民、理解と懸念交錯 東京五輪まで1カ月

東京五輪の事前合宿で選手がけがをした際などの対応を医師と協議する宮崎市職員(右)=22日午後、宮崎市田野町

 東京五輪の開幕まで23日で1カ月。大会組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)などは21日の5者協議で、最大1万人の観客を入れて五輪を開催する方針を決定し、準備を加速させている。県民には理解を示す声や感染再拡大を懸念する意見が交錯。チケットを持つ人からは「(観戦を)迷っている」「ほぼ諦めている」との声も。海外選手の事前合宿を受け入れる県内自治体は、新型コロナウイルス対策など準備を急いでいる。
 宮崎市老松1丁目の会社員秋丸泰良さん(65)は「コロナ禍の今こそ五輪で日本全体が一つにまとまってほしい。せっかくの自国開催でもあり、アスリートの努力が報われる場にしたい」と願うが、有観客か無観客かは「どちらとも言いかねる」。
 チケットを持つ県民は、複雑な心境で本番を待つ。行くかやめるか「気持ちは半々」と話すのは、サッカーのチケットが当選した同市の60代自営業男性。「一生に一度の機会で思い出になるだろうが、人流が増えると感染リスクが高まる」と悩む。
 サッカーのチケットを購入した小林市の40代自営業女性は、ほぼ諦めている。「市内に県外との行き来に敏感な住民は多い。仕事への影響を考えると、とても行けない。『無観客』の方が諦めがつくのに」
 一方、2カ月後に開催を控えるパラリンピック。高鍋町上江の看護師、原美穂さん(53)は次男で重症心身障害児の和輝さん(14)と観戦しようと陸上のチケットを確保した。「障害への理解やバリアフリーを促すパラの意義を感じ取りたい」との思いからだ。だが次男が感染した場合の重症化のリスクを考え、「ぎりぎりまで感染状況を見極める」と慎重な姿勢を示す。
 本県の事前合宿には9カ国6競技の約350人が参加予定で、第1陣が7月上旬に本県入りする。宮崎市は練習会場の設営など準備に余念がなく、22日は選手がけがをした際の対応を医療機関と協議。選手らに毎日PCR検査を行うなど感染対策にも万全を期す。益田清司スポーツランド推進課長は「来る選手と迎える市民の双方にとって安心安全な環境を整えたい」と話す。

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