邪悪な家の秘密に戦慄!荒野の屋敷を舞台にした傑作サスペンス小説

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今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『原野(ムーア)の館』

雨の降る一日、おうち読書に一気読み必至のサスペンスをいかがでしょう。『レベッカ』「鳥」などの作品で知られるダフネ・デュ・モーリアが、イギリスのコンウォールを舞台に描いた小説です。冒頭から一気に引きこまれます。原野の風景と不気味な館の物語に浸ってください。

原野の館
著者:ダフネ・デュ・モーリア/訳:務台夏子
出版社:東京創元社

ヒロインのメアリーがたったひとり向かう先は、コーンウォールの原野に立つ家「ジャマイカ館」。母を亡くし慣れ親しんだ自分の農場を離れ、叔母が暮らす屋敷に身を寄せることになったのです。

「わたしの叔父はジャマイカ館の主人なんです」。メアリーが乗合馬車の御者にそう伝えると、あそこはおかしな噂がある、真っ当な人間はあそこにはいかないと言われてしまいます。みんなが館を避ける理由は「怖いからさ」。この一言がすべてを象徴しているようで、恐ろしい想像がふくれあがります。

御者の言葉どおり、屋敷は荒れ果て邪悪な気配に満ちていました。荒くれ者で野卑、オオカミの相貌を思わせる叔父はいかにも怪しげです。叔父に怯える叔母はメアリーに警告します。「ジャマイカ館ではいろんなことが起こるんだよ、メアリー。口にするのも憚られるような、悪いこと、恐ろしいことがね」と。ムーアの住人たちに囁かれる「おかしな噂」どころではない秘密とはいったい……。

館をめぐる人物たちの個性が際立ちます。なんといってもヒロインのメアリーが素晴らしく魅力的に描かれています。恐ろしい出来事にも怯まず、勇気を奮い立たせ、待ち受ける運命を切り拓こうとする女性に心を奪われました。著者の作品『レベッカ』「鳥」は、監督アルフレッド・ヒッチコックの原作として有名ですが、本作もヒッチコック監督が映画化(邦題『巌窟の野獣』)しています。

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

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