正社員と非正規社員の違いって?給料や保険などの待遇の差は

出生数が減少し、一段と少子化が進んでいます。さらに労働人口の減少は、経済活動を低下させてしまいます。そこで日本の経済再生に向けて、多様な働き方ができる社会になるために掲げたのが「働き方改革」です。終身雇用が崩れてしまった現在では、非正規社員の働き方も増えています。総務省の調査 によれば、非正規社員が働く人の約4割を占めています。働き方が多様化しているとはいえ、非正規社員の雇用形態をよく理解していない方が多いのではないでしょうか。

正社員と非正規社員の違いを、お金と雇用形態の側面からアプローチしていきます。


正規雇用と非正規雇用とは?

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が叫ばれる現在では、時間に縛られない働き方として非正規を選ぶ人も増えてきました。正規雇用は、原則として雇用期間の定めがなく、所定の労働時間がフルタイム勤務で、直接雇用の形態のことをいいます。「フルタイム正社員」や「短時間正社員」がこれに当てはまります。

一方、非正規雇用は、法律用語ではなく、正社員以外の働き方をすべて指します。パート・アルバイト、派遣社員、契約社員、臨時社員、嘱託社員などがあります。

パート・アルバイト

直接雇用で、期間の定めがあり、正社員よりも短時間(少ない日数)の働き方です。パートは主婦、アルバイトは学生のイメージが強いのですが、法律上はパートとアルバイトは同じです。時給であることが多く、「パートタイム・有期雇用労働法」が適用されます。給与以外に健康保険や厚生年金保険などを会社が負担するケースもあります。

派遣社員

派遣元の会社と雇用契約を結び、会社に派遣された先のに指示に従って働きます。派遣元の会社は、派遣を依頼してきた企業から受け取る額の2~3割を手元に残すのが一般的です。そのため、派遣元の会社に支払う時間給相当額は、直接雇用のパートやアルバイトの従業員とくらべて高めになりますが、募集の時間がいりません。「労働者派遣法」が適用されます。

契約社員

あらかじめ雇用期間が定められており、更新をしない限り期間が終われば労働契約が自動的に終了します。60歳以上などの一定の場合を除き、有期雇用契約の上限は最長3年です。

臨時社員

雇用期間、労働時間、給与などの条件を企業と個別に契約して、比較的短い期間で働く社員のことです。

嘱託社員

待遇や条件は各社によってさまざまで、臨時の意味合いが強く、期間が定められている雇用契約です。準社員、定年退職後に再雇用する場合が多いようです。

業務委託(フリーランス)

個人と会社が直接、業務委託契約を結ぶ働き方です。委託された業務や成果物を決められた期限内に行うことで、報酬を会社から受け取ることができます。報酬は仕事によって異なり、成果報酬、出来高制、年俸制などさまざまです。高度な技術や技能を社員に身につけさせる時間と費用が不要なため、高度な専門職の場合は、手取りが多く提示される場合があります。

企業が非正規社員を雇う理由

会社側にも正社員を雇わずに非正規社員を雇うには、さまざまな理由があります。まず一時的に忙しい繁忙期や事業拡大などの人出が不足するときの解決策としてもあげられます。次に、人件費を抑えることができます。非正規社員には、ボーナスや退職金などがないことが多く、短期的に求める人材を雇いたいときに有用です。事業が厳しくなったときに、解雇しやすいという点もあります。いったん正社員として雇えば、簡単に解雇することはできません。このほかにも人手不足で正社員を確保できないといった理由も見受けられます。

働き方には、正社員と非正規社員という分類のほかにも、直接雇用と間接雇用という分け方があります。直接雇用は、勤務している会社と雇用契約を結び、その会社から給与をもらう働き方です。また間接雇用は、勤務している会社と給与をもらう会社が違う場合です。派遣社員は、これに当たります。ですから同じ会社で働いても、派遣元の会社が違えば給与は異なります。

このように企業側の背景を知り、働き方を考えるにあたっては、雇用形態ごとの特性や内容をきちんと確認することが重要です。

雇用形態と待遇の違い

正社員と非正規社員の雇用形態は、雇用期間が定められているかという点が大きく左右されます。雇用期間に制限がなければ、安定した収入の確保が望めます。そこで2018年4月1日以降、同じ使用者との間で更新された有期労働契約が通年5年を超えた場合に、本人の希望により、使用者は無期労働契約への転換が義務づけられています。これを無期転換ルール(5年ルール)といいます。

給与体系では、月給・年俸、日給、時給などその会社で異なります。パート・アルバイトと派遣社員では、時間給が多くなっています。同じ時間給でも直接雇用の場合には、交通費が別途実費支給の場合が多く、派遣の場合には時間給に組みこまれている場合が一般的です。

ボーナスや退職金については、会社の業績や就業規則によりますが、非正規社員でもパート・アルバイト、派遣社員ではボーナスは支給するとしても少額で、退職金は支給しないことが多いようです。

社会保険の加入条件は、勤務時間や収入で決まり、条件を満たしていれば非正規社員でも適用されます。

労働災害保険は、雇用されていればすべての人に適用があります。雇用保険は、週20時間以上勤務する場合は、雇用主は正社員・非正規社員を問わず加入させる義務があります。

健康保険や厚生年金への加入には条件があります。加入条件を満たしていれば、強制加入になります。中には扶養の範囲内で働くという方もいらっしゃいますが、年金保険料の負担は、「将来の年金増」につながります。目先の負担だけではなく、将来にも目を向けておきましょう。

また、業務委託では個人事業主なので、税金や保険関係はすべて自分で行う必要があります。仕事も自分で獲得する必要があるので、収入が安定しない可能性があります。

もし働き方の違いで毎月の手取りは変わらなかったとしても、雇用保険に加入していなければ、退職後の保障がありません。さらに健康保険や厚生年金に加入できれば、労使折半なので保険料の負担が抑えられます。それから年金を受け取る場合には、国民年金の受給以外に厚生年金の上乗せができます。

給与形態と社会保険の関係

雇用形態別にみた賃金

正社員にも非正規社員にもそれぞれメリットとデメリットがあります。非正規社員を選ぶ理由として、「自分の都合のよい時間に働きたいから」という理由が男女ともに1位ですが、男性では「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由が2位になっています。

厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」 によれば、雇用形態によって賃金の大きな格差が生じています。男女計では、正社員・正職員は324万2,000円、正社員・正職員以外では214万8,000円となっています。これを男女別にみると、男性では、正社員・正職員は350万7,000円に対し、正社員・正職員以外は240万2,000円です。

また女性では、正社員・正職員は269万2,000円であるのに対し、正社員・正職員以外は193万3,000円になっています。男女計の平均だけを見ても、その差は109万4,000円になります。

さらに男性の年齢階級別賃金は、正社員・正職員では50代後半で435万3,000円に対して、正社員・正職員以外では60代前半に266万7,000円にピークを迎え、その差は168万6,000円。生涯にわたって200万円台を超えることはありません。

女性の年齢階級別賃金のピークは、正社員・正職員では50代後半に303万6,000円、正社員・正職員以外では30代後半に200万6,000円です。全年齢を見ても180万円~200万円前後の賃金です。

雇用形態間の賃金格差は、正社員・正職員を100とすれば、男女計で64.9になっています。もし正社員・正職員と同じ待遇にしようと思えば、非正規社員などでは1.5倍近く稼ぐ必要があることになります。


働き方改革には、非正規社員の待遇を改善する内容も盛り込まれています。これからは正規・非正規の不合理な処遇差は改善されていくでしょう。働き方は自分が何を重視するかで選べる時代に変化しています。イメージだけにとらわれず、まずは働き方の形態を知り、どう働くのか将来をデザインしてみましょう。

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