半世紀目前、足利の名物屋台カフェが移転へ 市民会館解体で余波

オイルランプがともる屋台に集うファン。左奥は市民会館

 足利市有楽町の市民会館と足利女子高間の間にある旧市道脇の歩道で半世紀近く営んできた屋台カフェ「アラジン」が、6月末での移転を余儀なくされている。同会館の解体工事に伴い7月1日以降、旧市道が通行止めとなり、工事用フェンスが屋台設置場所に掛かるため。今後も営業を続けたい意向だが、移転先は決まっていない。当分なじみのコーヒーを味わえなくなる可能性もあり、屋台には連日ファンが訪れている。

 屋台は近くに住む阿部次郎(あべじろう)さん(72)と兄哲夫(てつお)さん(77)が営む。毎日、午後3時以降にリヤカーを引いて現れ、日が落ちるとオイルランプをともす。香り高い1杯のコーヒーと2人の人柄に引かれたファンが通っている。

 1971年創業。外国を航海する船でコックだった父の故弥四郎(やしろう)さんが、中東で目にした屋台に憧れて始めた。9月16日に50年の節目を控えており、次郎さんは「せめて半世紀、ここでやりたかった」と移転を残念がる。

 同会館は2022年に共学化する新足利高の敷地とするため解体される。屋台のある旧市道も敷地に含まれ、15日には、7月1日からの通行止めを知らせる看板が立った。

 「いよいよ現在地での営業は6月末(まで)になりそうです」。22日、次郎さんがツイッターでつぶやくと移転を惜しむファンが日暮れを待たず続々訪れた。

 店に置かれたノートには、ファンによる「アラジンは足利の文化」「ずっと香りを届けて」などの言葉が並ぶ。17歳から40年通っているという桐生市、配置販売業男性(57)は「人生の苦楽を見守ってくれた場所。何とかランプの灯を絶やさないでほしい」と話す。

 移転が目前に迫り、兄弟は代替地探しを続けている。ただリヤカーや客用テーブル、椅子などを保管でき、近隣にトイレや水道もある好条件の場所は見つかっていない。

 次郎さんは「近隣の皆さんの厚意で現在の環境が築かれてきた」と感謝しつつ、「この場所であと少し営業を続けるための市との交渉も含め、存続の方法を探りたい」と話している。

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