今野敏さん著「宗棍」刊行 琉球新報連載小説が単行本に

 吉川英治文庫賞受賞作家の今野敏さんの著作「宗棍」が4日、集英社から単行本として刊行された。幕末から「琉球処分」(琉球併合)にかけての琉球王国の動乱期に、国王の武術指南役を務め、沖縄空手の基礎を築き、首里手の創始者とされる松村宗棍の生涯を描いた小説。初出は琉球新報文化面で昨年1月から10月にかけて書き下ろしで全213回連載された。

 小説の主人公、松村は空手の才を見いだされ首里王府の役人となる。強さが評判を呼んで、国王の前での“御前試合”に出場する。同じ空手家で同志でもある妻・チルーとの出会いや、弟子への指導などを通して、宗棍の人間性を生き生きと描いた。

 連載終了を前に今野敏さんは昨年10月、琉球新報の取材に「宗棍は空手界で最も知られている人物。伝説は多いが史実として残る記録が少ない。それをどう物語にしていくのか書く前も、書きながらもずっと悩んでいた。史実と物語のバランスの取り方に苦労した」と話した。

 今野さん自身、空手有段者で都内で道場「空手道今野塾」を運営している。これまで空手家の生き様を描いた空手シリーズとしてこれまで、集英社から「義珍の拳」「武士猿(ブサーザールー)」「チャンミーグヮー」「武士マチムラ」を刊行しており、「宗棍」は5冊目。このうち新聞小説として本紙に掲載された作品は、本部朝基をテーマにした「武士猿」(2008年)、喜屋武朝徳を取り上げた「チャンミーグヮー」(13年)、松茂良興作を主人公にした「武士マチムラ」(16年~17年)がある。

 「宗棍」はジュンク堂書店那覇店、球陽堂書房那覇メインプレイス店、リブロリウボウブックセンター店などで販売している。

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